財務管理システム (FMS) とは

従来の財務管理システムの仕組み

財務管理システムは、会計業務を容易にし、定期的な財務レポートの作成を支援するために開発されました。かつては、トランザクションの記録から開始し、総勘定元帳の更新で終了するという、厳格でわかりやすいプロセスでした。トランザクションの会計処理が終了すると、一部の詳細を抽出し、仕訳入力の要約を使用して残高を更新していました。このようなシステムは、最初に設定された会計領域の処理方法に基づいて、財務レポートの作成を支援するだけのものです。

より詳細なビジネス インサイトや財務管理レポートを活用できるようにするには、データ ウェアハウス、ビジネス インテリジェンス ソリューション、レポート ツールなどを FMS に追加する必要があります。こうした追加型のアプローチでは、統合部分の作成と保守が必要になりコストがかさむとともに、データの照合に多くの労力がかかり、不要なミスが発生する危険性も高まります。また、このソリューションでは結果的にデータが分断してサイロ化し、財務諸表が不正確になることも少なくありません。

会計、連結、照合、購買、収益、コンプライアンスなどの機能のためのシステムが統合されていないと、企業の FMS 環境はさらに複雑なものとなります。企業のリーダーにとって、システムの分断化は、リアルタイムのインサイト、成長、適応性を妨げる要因でしかありません。ビジネスに合わせてこれらのシステムを拡張したり修正したりするのは、時間と費用がかかり、ときにはほとんど不可能であることも少なくありません。

クラウドベースの財務管理システムのメリット

クラウドベースの財務管理システムは、財務レポートを作成するために、トランザクションを統合するという厳格なプロセスを排除します。

Workday ファイナンシャル マネジメント (財務管理) のようなシステムでは、すべてのトランザクションがビジネス情報の詳細を保持したまま、財務、管理、業務の各レポートに即座に反映されます。また、自動化、インテリジェントな予測、プライバシーの保護を実現する組み込み式の AI 機能も活用できます。

クラウドベースのひとつのシステムでトランザクションをすべて取り込み、コアとなる基本的な処理をサポートするため、財務部門は承認されたビジネス情報にリアルタイムでアクセスできるようになります。業務データに関する唯一の正しい情報源があることで、企業は計画、実行、分析をひとつのシステムで行うことができます。

クラウドベースの財務管理ステムが重要である理由

企業の成長を支えるのは財務業務であることから、財務部門は意思決定を主導することをますます求められています。クラウドベースの FMS により、財務部門はより的確な意思決定を行い、マーケティング、営業、製品、オペレーションに至るまで、企業全体のステークホルダーとインサイト、戦略、新たなビジネス プロセスが収益に与える影響について、情報を共有できるようになります。

これを適切に実行するためには 2 つのことが必要だと Workday では考えています。それは、現在の財務データと従業員データに簡単にアクセスできること、そしてさまざまなデータソースを 1 か所に集約して多次元のレポートや分析を利用できることです。 

財務以外のデータ、特に業務システムの情報からは、数値に対する背景情報が得られ、何が業績を左右しているのかについて理解を深められます。在庫管理であれ、キャッシュフローであれ、データに対する背景情報を理解することは、効果的な意思決定を行うために欠かせません。

テクノロジーが財務プロセスに与える影響

将来を見据えた財務システムには、トランザクション、レポート、分析などの主要機能を 1 か所で実行できる高度なバックエンド テクノロジーが必要です。これにより、財務部門は同じシステム上で、データに関する計画、トランザクション、分析、レポートを実行できます。クラウドベースの財務管理システムは、これらすべてを可能にするものです。

トランザクションと分析をひとつのシステムに統合することで、FMS に保存されている財務データを即座に処理して、連結し、レポートを作成することが可能になります。このシステムは、トランザクションと分析を同時に処理して、財務データをリアルタイムで表示します。トランザクションが処理されると、同じシステムですぐにレポーティングと分析を利用できます。

財務部門は、複数の法人や通貨に対応した統合レポートを毎日作成できるため、売掛金の計算や決算処理にかかる時間を削減できます。ワークフローの自動化より、企業は業界の変化や規制に合わせて、簡単にプロセスの作成や変更を行うことができます。

つまり、FMS では次のことが可能になります。

• ビジネスの全体像を完全な形で正確に、リアルタイムに提示する

• リーダーに的確で背景情報を備えたビジネス インサイトを届ける

• 業務を滞らせることなく、CFO とそのチームが組織、プロセス、レポートの変更に対応できるようにする

財務チームが複雑化する問題に対応する際にクラウドベースの FMS が役立つ理由

近年、CFO の役割は、会計や財務の主導者から、価値の創出を担うビジネス上の戦略的パートナーに変わりつつあります。リスクを管理し、新たな機会を見極め、経済ショックや経済不安を乗り切ることができるように、最高経営責任者 (CEO) が財務部門に求めているのは、示唆に富んだ、将来を見据えたインサイトです。現在および将来にわたる企業の価値は、質の高いインサイトと切り離せないものになっています。

財務部門は、ますますダイナミックになるビジネス環境において、より多くの社員にインサイトを共有することが求められています。そのため、財務部門はテクノロジーを導入して、組織の中でより戦略的な役割を果たさなければなりません。

これを実現するには、財務部門は、レガシー システムが生成していた総勘定元帳情報の一歩先を行くインサイトを提供する必要があります。

しかし、財務部門の多くはこれらの対応に苦慮しています。従来のトランザクション業務に追われて多くの時間をデータ収集に費やしており、データを分析したり、組織が真に必要としている戦略的パートナーの役目を果たしたりすることができていません。また、ばらばらで統合されていない旧式の財務システムでは、必要なデータを欲しいときに入手することが、不可能ではないにしても困難です。

多くの組織では、貴重なデータがレガシー システムや、ときにはスプレッドシートに保存され、サイロ化した組織内に散在して閉じ込められています。そのため組織では、そのようなデータにアクセスしたり、外部のデータソースと組み合わせてデータ モデルを構築したり、組織の未来に向けて必要な予測を立てたりすることが容易にはできないのが現状です。

今日の企業のさまざまなデータ ストリームをエンタープライズ リソース プランニング (ERP) システムに統合することで、財務データと財務以外のデータの両方の記録、分析、レポート作成を行い、ステークホルダーの価値を創出することが可能になります。(ERP システムとは業務の運営に必要な一連のソフトウェア アプリケーションを管理する単一のシステムを意味します。ここでいう業務には、財務、人財管理、サプライチェーン、顧客関係管理、在庫管理などが含まれます)

財務管理でリアルタイムのデータが重要な理由

組織の内部では毎日、膨大なデータが流れています。企業がそのデータを活用して効果的に分析することができれば、より的確な意思決定をより迅速に行うことができます。

たとえば、分析を活用すると、どの顧客が最も収益性の高い顧客であるかをリアルタイムで把握できます。このようなインサイトを得ようとすると、通常ならば財務管理システムとは別の分析ソリューションが必要となるのです。

マーケティングなどの部門であれば、データを使ってカスタマー エクスペリエンスの変革やパーソナライゼーションの向上などに活用できます。ビジネスリーダーであれは、データドリブンなサービスを製品に追加して提供することで、新たな収益源を生み出せます。しかし、ここで重要となる差別化要因は、クラウドベースの自動財務管理システムを活用して、リーダーがインサイトを引き出し、価値を創造できるようになるまでの速さです。

高度なデータ分析を活用することで、より正確性の高い収益予測を行うことが可能になります。財務データとそれ以外の情報 (消費者データや他の業務システムのデータなど) を組み合わせることで、新たなインサイトを引き出すことができるのです。さらに、新しい、より有用な KPI の作成にもつながります。

クラウドに保存された有用なビジネス データは、モバイル機器からアクセスできる財務スコアカードやダッシュボードを介して入手することもできます。エグゼクティブは、企業の財務状況レポートをリアルタイムで入手できるため、最も重要な指標をその場で追跡できます。今後は市場の変化に驚くことも、対応に遅れることもありません。

クラウドベースの財務管理システムの主要機能

最新の財務管理システムは、CFO とそのチームの役割を、単なる財務管理とトランザクション管理から、ビジネスを変革し価値を創出する真のインサイトを提供することに移行させるでしょう。

Workday は、すべての財務プロセスをクラウドベースのひとつのシステムで提供することにより、財務管理のアプローチを再設計しました。このクラウドベースのシステムは、企業において次のことを可能にします。

真のインサイトでビジネスを主導: インメモリのオブジェクト データ モデルを使用するネイティブなクラウドベース システムが、リアルタイムでトランザクションを取り込み、コアとなる基本的な処理をサポートし、財務部門がより迅速にビジネスの意思決定を行えるようにします。

確実な連結処理と決算: Workday のクラウドベース アーキテクチャでは、複雑で時間のかかる直線的な処理が不要になったため、より高速、よりアジャイル、より正確なアプローチをもたらします。ビジネスの連結ビューにアクセスするために各月末、四半期末、年度末まで待つ必要はなく、企業はゼロデイ クローズを目指し、情報にいつでもアクセスすることができます。

将来を見据えた計画と準備: Workday は、財務と人事のトランザクションをレポートとプランニングの機能に結びつけます。データの移動と照合の処理をなくして、実際のトランザクション データを使用した、効率が高くサイクルを回しやすいプランニング プロセスを作成します。

プロアクティブかつ効果的にリスクを管理: Workday は、単にトランザクションを監視するだけでなく、常時稼働の監査証跡機能ですべての変更を追跡します。企業は承認期限の管理、監督、設定を行えるほか、閾値を設定したり、職務分掌を定義したりすることもできます。それらによって、不正行為とリスクの削減に Workday を役立てることができます。

変化への対応: ビジネス環境は常に変化しますが、それに応じてWorkday 内の変更と設定はいつでも行うことができます。一度変更が設定されると、財務、人事、プランニングの全域にわたり、その関連組織、トランザクション、レポートに即座に適用されます。

適切なクラウドベースの FMS があれば、企業は単に財務部門のトランザクションを追跡するだけでなく、組織のアジリティを向上させ、プランニングと収益予測のプロセスをスピードアップし、変化し続ける世界において今後の課題に備えることができます。