AI と機械学習: FP&A の変革
AI と機械学習は財務を変革し、プランニング、レポーティング、収益予測にかかる時間を大幅に短縮し、財務チームがより多くの時間をスプレッドシートのやり取りではなくインサイトの共有に割けられるよう支援します。
AI は業務の世界に革命を起こしています。財務チームも例外ではありません。ドイツに拠点を置き、急成長を遂げているオンライン スポーツ小売企業の Bergzeit 社を例に考えてみましょう。
Bergzeit 社はかつて、スプレッドシート ベースの予算編成/プランニング プロセスに大きく依存していました。財務チームは年間計画の策定時に、スプレッドシートを整理し、データをひとつのバージョンにまとめることに膨大な時間を費やしていました。作業が終わる頃には、その情報が古くなっていたり、不正確になっていたりすることも少なくありませんでした。
AI で強化されたクラウドベースの予算編成/予測ツールに移行した後、チームは「財務の全体像を 1 か所で把握できるようになり、より適切な意思決定に必要なインサイトを得られるようになった」と管理チーム リーダーの Thorsten Fritz 氏は語っています。
Bergzeit 社の財務チームは、年に複数回予測を行うだけでなく、より迅速かつ正確に予測を行っています。
AI と機械学習 (ML) により、世界中の財務チームのプロセスと手法が最適化され、より効率的かつ効果的になっています。FP&AにおけるAI は、反復的な業務を自動化し、プロセス フローを標準化し、質問に対してより迅速に回答します。
特に注目すべきメリットは、財務チームの貴重な時間を、手作業による反復的なプロセスではなく、価値の高いタスクや戦略的な意思決定に費やせるようになったことです。
AI の変革力に対する財務リーダーの認識も高まっています。金融サービス企業の幹部のうち、86% がビジネスの競争力を維持するためには AI と ML が必要だと回答し、3 分の 2 がこれらのテクノロジーの使用によって生産性と業務効率が向上したと回答しています。
テクノロジーが財務部門にもたらす変革的効果は、過去 50 年間よりも今後 10 年間のほうがより大きくなることが予想されます。
これには、会計、プランニングと分析、予算編成、決算処理など、財務のあらゆる業務が含まれます。PwC 社は、AI による経済への貢献は、2020 年代後半までに最大 15 兆ドルに達する可能性があると見積もっています。
この記事では、財務チームが金融機械学習の大きな進歩を活用できるように、FP&AにおけるAI の活用例、財務予測における AI 駆動型ソフトウェアの役割、将来の財務アナリストにとっての AI の意味について解説します。
財務計画と分析における AI の役割
財務チームは、使用する情報が古いという悩ましい問題に直面しています。財務チームは従来、前週、前月、前四半期のデータ分析に基づいて意思決定を行うため、リーダーはデータをリアルタイムに把握できず、状況の変化への対応が困難になることが少なくありませんでした。
FP&A 向け AI は、リアルタイム監視からコンプライアンス強化に至るまで、広範かつ強力に活用できるため、多くのメリットをもたらします。このほかに AI が財務チームにもたらすメリットには以下が含まれます。
大量のトランザクション処理: AI は膨大なデータをものともしません。このテクノロジーは、大規模なデータセットをすばやく分析・学習できます。
パターン検出: AI はデータ内のパターンを認識し、キャッシュフローを監視し、基準値から外れたデータが見つかった場合は異常を通知します。また、AI はフィードバックでさらにスマートになり、精度が向上し続けます。
要約: 生成 AI は特に資産概要分析やセンチメント分析に活用できます。たとえば、AI テキスト分析ツールは、詳細かつ長い金融記事を処理し、重要なポイントをまとめたスニペットを生成できます。
人間が判断するための時間の創出: AI を活用して出張・経費管理といった手間のかかる手作業を効率化することで、財務チームはより多くの時間を意思決定や戦略的サポートに割くことができます。たとえば、決算期間中に情報の収集や照合に長時間を費やす代わりに、AI で情報を取得し、例外を管理できます。
機械が最も得意とする金融分野を担うことで、人間は独自の強みを発揮することに専念できます。
「AI が最高財務責任者 (CFO) に取って代わることはありません。しかし、AI を活用しない CFO は、AI を活用する CFO に取って代わられるでしょう」
—Erik Brynjolfsson 氏、スタンフォード大学デジタル経済研究所教授および Workhelix, Inc. 共同創業者
収益予測における AI の強み
今日の FP&A チームは継続的に計画を策定・見直す必要があります。財務チームは将来を完全に予測することは求められていません。しかし今日のビジネスリーダーは、さまざまな未来に対応できる組織体制を財務チームが整備することを期待しています。
AI が予測分析の主要ツールとして使用されるようになり、財務の予測手法は変化しています。財務チームは、年初に作成した固定的な計画に基づいて業務を進めるのではなく、先を見据えた先進的・継続的な計画プロセスへと移行しています。
AI を活用した財務予測により、変化し続ける複数のシナリオを想定した計画を策定できます。たとえば、現時点でその兆候がない M&A の機会が突然現れた場合でも、組織はその機会を捉えるための計画を立てることができます。
AI ツールを使ったプランニングにより、FP&A チームは見積もりや仮定に基づいて財務上の意思決定を行うのではなく、これらの What-if シナリオを可視化して検討できるようになります。また、自動化が進むにつれてプランニング サイクルは短縮され、プランニング、分析、実行を継続的かつ同時に行えるようになります。
組織が将来のシナリオをより正確に把握し、それに対処するためのより的確な計画を考案できれば、利益、成長、従業員エンゲージメントを高めることができます。
プランニングと分析をつなぐ機械学習
財務分析では現在の状況を明らかにし、将来を予測します。両者をつなぐ架け橋となるのがプランニングです。FP&AにおけるAI は、企業の現状分析と将来の目標を結び付ける役割を果たします。
なぜなら AI は、財務チームが企業のパフォーマンスに影響を与えるあらゆる可能性を考慮し、どのように調整すべきかを判断できるよう支援するからです。たとえば、エクスポージャ分析ツールは、特定の市場の影響を受けやすい資産のリストを生成します。このツールは Brexit などの大規模イベントがさまざまな資産クラスにどのような影響を与えるかを明らかにします。そのため財務チームは、このような規模のイベントがポートフォリオに与えるリスクを把握できます。
Brexit のようなイベントが発生した場合、FP&A チームはサプライ チェーンの混乱、インフレの上昇、労働力不足といった事態に対応するために必要な、実用的で実行可能なロードマップを作成できます。これらのシナリオ モデルにより、リーダーは破壊的なイベントを乗り越える方法や、そのようなイベントを活用する方法について、十分な情報に基づいて意思決定を行うことができます。
AI による財務レポーティングの効率化
今日の組織はデータが不足しているわけではありません。むしろその逆です。強力なデータがあっても、情報過多になると意思決定が遅れ、機会損失につながる可能性があります。
財務チームにデータを評価する時間や余力がなければ、データに基づいて正確で理解しやすいレポートをタイムリーに作成することなどできないため、データを活かすことはできません。ステークホルダーのニーズを効果的に満たしていると感じている会計・レポーティング チームが半数以下である理由は、ここにあるのかもしれません。
AI は大量のデータをものともしません。
AI は自然言語生成 (NLG) を使用することで、多数のソースからのデータを迅速に処理し、有用なインサイトを提供するとともに、情報を取りまとめてわかりやすく可視化し、より簡潔で効果的なレポートを作成できます。AI を活用する財務チームは、資産概要の生成、テキスト概要の作成、レポートの翻訳、センチメント分析を通じてインサイトを得ることができます。
AI は複数のソースからのデータ収集も自動的に行います。たとえば、AI ツールはニュース記事を的確に要約し、インサイトを提示することで、FP&A チームがさまざまなソースの財務予測を比較できるようにします。
AI によってデータの質が向上し、レポーティングに要する人的負担が軽減されるため、ビジネスリーダーは財務チームがデータを照合してレポートをまとめるのを待つ必要なくアクションを起こすことができます。セルフサービス ダッシュボードやレポート、アクションにつながる情報にも自らアクセスできます。
データの深さと幅が広がることで、財務チームはより高度で有意義なインサイトを導き出し、適切なデータを意思決定者に提供できます。
自動化: AI が形成する FP&A の未来
FP&A の未来は、自動化によって効率性が向上し、コストが低減します。たとえば、ロボティックス プロセス オートメーション (RPA) ボットは、人間の介入を必要とすることなく、ルールベースの定期的なタスクを自動的に実行できます。たとえば、顧客からの苦情を共通のカテゴリにすばやく分類したり、タイムシートから情報を抽出して給与計算処理を高速化したりします。
Gartner 社によると、1 つのボットは常勤従業員 30 人分の作業量をこなすことができます。Gartner 社は、RP&A テクノロジーのコストは通常、海外で働く従業員の 3 分の 1 程度、国内で働く従業員の 5 分の 1 程度に相当すると報告しています。これらの指標は、財務リーダーの 80% が RPA をすでに導入済みであるか、導入を計画している理由を示唆しています。
RPA は、ひとつのシステムから情報を取得して別のシステムに入力するなど、構造化された予測可能な財務業務を得意とします。財務チームは、複数のスプレッドシートとスプレッドシート内の膨大な数のセルを管理するのではなく、財務予測などの付加価値の高い業務に時間を費やすことができます。
FP&A の未来を見据えて AI の力を今すぐ活用する
財務リーダーは、FP&AにおけるAI の未来に大きな期待を寄せており、71% が今後 10 年以内に AI が大規模に導入されると予想しています。しかしその水準に達するまでには、かなりの道のりがあります。財務チームのおよそ 4 分の 3 は AI と ML を使用した経験がありません。
リーダーが期待する導入水準を実現するためには、財務チームが今から AI の力を活用し始める必要があります。この現実を理解している賢明なリーダーは、AI を活用するために必要な人材の採用を始めています。新たな人材を採用する際、CFO の 57% が AI および ML テクノロジーを活用できる人材を優先しています。
財務チームが FP&A に AI を導入する時期が早いほど、適切かつ迅速な意思決定、正確な財務予測、ROI の向上など、そのメリットを享受できる時期も早まります。