法務業務とは
優秀なビジネス エクゼクティブは、データドリブン型の戦略的なアプローチに基づいて組織を運営します。同じアプローチにより、法務部門の業務効率も改善することができます。
法務業務とは、ビジネス慣行、プロセス、戦略を組み合わせたものです。法務部門は、効率的な方法で法務業務を遂行し、社内の他部門をサポートします。ここでは、法務業務とは何か、法務業務を通じて戦略的優位性を確立するにはどうすればよいのかについてご説明します。
法務業務の概要
法務業務とは、法務部門の効率性と費用対効果を高めるためのすべてのビジネスプロセスと標準を対象とした包括的な用語です。一般に、法務業務には以下が含まれます。
- 戦略的プランニング
- ファイナンシャル マネジメント
- プロジェクト マネジメント
- データとテクノロジー
これまで法務部門は、社内の他部門とは別の存在として考えられることが多くありました。多くの法務部門は、他部門と同様のサポートや監視を受けることなく、独自のルールに従って業務を運営してきました。時間の経過とともに、ビジネスリーダーは新規採用や新しいテクノロジーに対する予算を最小限に抑え、法務部門に大きな作業負荷を任せようとする傾向が強くなっています。目標や主要業績評価指標に関するガイダンスの提供についても、法務部門が担当する場合があります。
しかし、優秀なビジネスリーダーは、ビジネスで成功を収めるためには、法務部門を会社にとって重要な役割として認識し、明確な目標を設定して適切なサポートを行うことが不可欠であると考えています。それが本来の法務業務のあり方です。
プロジェクト管理に関するベストプラクティスとテクノロジーを活用してワークフローとプロセスを効率化することにより、法務部門は可能な限り効率的かつ効果的に業務を進めることができるようになります。
法務部門のリーダーにとっての法務業務の重要性
社内の法務部門は、大きなプレッシャーを受けています。EY Law と Harvard Law による 2021 年の調査では、さまざまな企業の法務担当者が今後 3 年間で業務量が 25% 増加すると予想し、88% が今後 3 年間における予算削減を予想しているという結果になりました。
しかし、希望はあります。苦境に立たされた法務部門は、法務業務に解決策を見出しています。社内の法務業務を合理化してすべての予算を適切に使用すれば、削減された予算を最大限に活用できるようになります。法務部門の各メンバーが効率的に業務を行い、チーム全体ですべてのリソースを最大限に活用することが重要です。
法務業務を効率化するだけでなく、法務業務を通じて法務部門と他部門を連携させることもできます。多くの場合、法務部門以外の部門は、採用、解雇、買収などの主要なプロセスを遅らせるボトルネックになっているのは法務部門であると考えています。
しかし、優れた法務部門が存在する場合、部門間のコミュニケーションとコラボレーションが劇的に改善されます。法務部門の運営がスムーズで迅速なものになるだけでなく、法務部門も他部門と同じ言葉で会話をするようになります。
法務業務に投資すべきタイミング
多くの企業が、法務部門に対するサポート体制は現在のままで十分だと考えています。それは、管理者が法務部門の請求やベンダーに関する業務を管理し、IT 担当者が法務部門のテクノロジーを管理するという体制です。しかし、こうした部門間の協力関係は必要ではあるものの、十分ではありません。
多くの企業は、プロジェクト管理の専門家など、さまざまなマネージャや従業員を活用して組織を円滑に運営しています。通常の法律事務所においても、パラリーガル、スタッフ、契約弁護士などがパートナー弁護士の業務をサポートしています。
企業の法務部門は、こうしたサポート体制を論理的に拡張したものです。法務部門以外の部門が専任の業務担当者やマネジメントの専門家に頼ったり、社内の弁護士チームがパラリーガルなどのスタッフにサポートを求めたりするのと同様に、法務部門も法務業務の戦略的サポートからメリットを得ることができます。
企業が法務業務に対して本格的な投資を行う適切なタイミングは、その企業のニーズとリソースによって異なります。ただし、多くの場合は、社内に法務部門が存在するすべての企業にとって、法務業務はメリットをもたらします。
法務部門が何らかのレベルのサポートを必要とするほどの規模になれば、法務業務にとっても十分な規模であるということです。
法務業務の役割への移行
法務業務の役割で成功を収めるには、特定のスキル セットが必要になります。
法務業務の責任者には法律の知識が求められます。法律に関する学位は、必要な場合もあれば必要ない場合もありますが、実際の法務業務がどのように処理されるのかを常に明確に理解する必要があります。優秀な法務担当マネージャになるには、法律に関する実用的な見解と、法律がビジネスにどのように適用されるかについて強い関心を持つ必要があります。
法務担当リーダーは、さまざまな人たちと協力しながら部門間のギャップを埋めていく必要があります。法務担当マネージャは、法務部門だけでなく、財務部門、人事部門、営業部門などの他部門についても理解し、効果的にコミュニケーションをとる必要があります。
しかし、最も重要なことは、優れた法務担当マネージャになるには、ビジネス インテリジェンスと戦略的思考に精通している必要があるということです。
小規模な法務部門を持つ企業の場合、法務業務だけを管理するために法務担当マネージャを雇用するケースがあります。また、法務部門全体を雇用する企業もあります。法務担当マネージャは、直属の部下である法務担当スペシャリストと緊密に連携し、効率性を高めるための戦略を策定して実施します。
現在の法務担当スペシャリストは、テクノロジーに精通している必要があります。また、ビジネスの目標に関連付けられた指標に対する法務部門の進捗状況を追跡する必要があるため、数字の扱いにも慣れている必要があります。価値を評価する方法と、特定の部門内で成果が出ていることと成果が出ていないことを測定する方法を理解する必要があります。
法務業務の役割に関するトレンド
Gartner® 社の調査によると、ほとんどの社内法務部門は、新しいテクノロジーの導入において、本来あるべき状態から大きく後れをとっています。こうした法務部門は、生産性の向上と、知識管理業務の効率化と拡大を迅速に実現しなければならないというプレッシャーに直面しています。
そのための主要な解決策は、業務に役立つ法務テクニカル プラットフォームを導入するという方法です。近い将来、法務部門の運営において、データに裏付けられたテクノロジー主導型アプローチの導入を担当する法務業務専門家の採用が大幅に増加する可能性があります。
また、 新型コロナウイルスのパンデミックによってリモート業務への関心が高まっていますが、柔軟性の低い勤務形態の法律事務所を退職したいという弁護士の意欲も高まっています。そのため、多くの企業が今後もリモート業務を選択肢として残しておくことが予想されます。法務部門は、分散した人財が効果的に業務を行い、適切なコミュニケーション、意欲、生産性を確保するためのテクノロジーを選択して導入するためのサポートを行うことができます。
法務担当マネージャの収入
法務業務は比較的新しい分野であるため、給与は変動する傾向があります。
Salary.com によると、ニューヨークなどの大都市では、法務担当マネージャの平均年収は 10 万ドル以上となっています。法務担当マネージャの年収は 12 万ドルを超える場合もありますが、下限は 9 万ドル程度になる場合もあります。
優秀な法務担当者には、その収入に見合うだけの価値があります。しかし、企業がその投資に対する価値を得るためには、法務担当者が具体的な付加価値を提供する必要があります。
法務業務における付加価値
販売先の顧客が企業か個人かに関係なく、企業は常に、リスクを軽減しながら、顧客満足度、採算性、運用効率を最大化することを重視します。
法務部門は、スムーズなオンボーディングから顧客サービスの向上まで、業務部門が顧客に対して高い成果を迅速に提供できるように支援することができます。そのための方法としては、契約プロセスを簡素化して取引を迅速に締結できるようにする、より多くの顧客に製品やサービスを迅速に提供できるようにする、などがあります。また、テクノロジーを活用して個人データを効果的に保護し、緊急時における義務を適切に理解できるようにする、という方法もあります。
社内の法務業務を通じて、法務部門が関係するほぼすべてのプロセスを改善できます。法務部門は、他部門からの質問に対して待たせることなく迅速に回答を得られるように支援することができます。契約管理を最適化することにより、契約書が実際に署名されているかどうか、リニューアル期限が事前に通知されているかどうかなど、重要な情報に関するミスを防ぐことができます。
これにより、法務部門とやり取りするすべての部門が、優れた法務業務がもたらす付加価値を実感することになります。これらの付加価値が顧客やビジネス パートナーにも波及するのが理想です。
法務担当リーダーの主な特性
法務担当リーダーにはさまざまな人がいますが、優秀なマネージャにはいくつかの共通する特性があります。法務業務の専門家が運営する Corporate Legal Operations Consortium (CLOC) という組織によると、法務分野のリーダーには、協調性がある、プロセス指向である、データドリブン型である、などの特性があります。
協調性
優秀な法務担当マネージャになるには、優れた対人スキルと、法務部門や調達部門と幅広く協力する能力が必要です。また、部門をまたがるコミュニケーションを促進するために、法務部門と連携するすべての部門について、その部門で使用されている「言葉」を理解し、その言葉で会話を行う必要があります。
プロセス指向
優秀な法務担当リーダーは、効率性を重視します。こうしたリーダーは、効果を上げていることと効果を上げていないことを積極的に特定しようとします。すべてのプロセスでボトルネックを探し出し、それを解消しようと懸命に努力します。彼らは、自分たちを単なる法務部門の一員として考えているわけではなく、会社全体としての成功を考えて、全社的な改善を実現することを目標としています。
データドリブン
直感にはメリットもありますが、法務担当リーダーは決して直感だけに頼るべきではありません。業務内容とその情報をデジタル化することにより、さまざまな方法でデータを分析できるようになります。
優秀な法務担当マネージャは、指標を重視します。契約プロセスやソフトウェア プラットフォームの効果など、さまざまなものを測定して調べることができます。
そのため、社内の法務部門は、他部門と同様に各種の指標に関心を持つ必要があります。優秀な法務担当リーダーは、次の事項に関する数字を分析して最高法務責任者を支援できます。
- 契約サイクル タイム
- ワークフロー
- ベンダー契約 (リニューアル期限を含む)
- カバー率 (標準的な条件、非標準的な条件、リスクのある条件が記載された契約)
- カスタマー契約の数と状況
- 社外弁護士に対する支出
- ダイバーシティ、公平性、インクルージョン プログラム
- 環境、社会、ガバナンス (ESG) に関する要因
契約ワークフロー、承認、各種プロセスの最適化方法
ほとんどの企業では、契約のワークフローと承認は非常に時間がかかるプロセスになっています。これらのプロセスは、数週間、数か月、あるいは数年にわたって続く場合があるため、取引が中止されたり、ビジネスにおける関係が悪化したりする可能性があります。
優秀な法務部門であれば、現状から脱却して大きな変化をもたらすことができます。しかし、法務部門の人財を増やすだけでは十分ではありません。法務業務の補完、整理、最適化を行うための効果的なテクノロジーが必要になります。
契約業務のデジタル化による法務業務の効率化
法務業務の効率化で必要になるのが、デジタル契約管理システム (CMS) です。社内のすべての契約書と関連文書に 1 か所でアクセスできるため、部門間や支社間で簡単に契約データを追跡したり、最適な用語を使用して簡単に新しい契約書を作成したりすることができます。
契約ライフサイクル管理システムでは、契約の交渉中に、統合された修正機能と簡単にアクセスできるドラフト履歴機能を使用して、必要に応じて任意の交渉レコードの保管とレビューを行うことができます。CMS で、契約交渉に関わるすべての関係者に自動アップデートを送信することにより、承認プロセスを効率化することもできます。すべての関係者が契約条件に同意すると、電子署名プロバイダとの統合により、契約をすばやく簡単に履行できるようになります。
最高レベルの契約管理ソフトウェアでは、契約に含まれる重要なデータが視覚的に表示されます。アクショナブルな情報に関する詳細なレポートにより、継続的な契約を簡単に管理し、契約に関わるすべての関係者が、契約上の権利と義務を把握できるようになります。
新しい契約管理ソフトウェアのビジネス ケースを構築する方法
契約管理システムを導入しても、法務業務の必要性がなくなるわけではありません。契約管理システムの役割は、強力な法務部門を自然な形で補完することです。適切なソフトウェアを導入すれば、ビジネスを変革し、限られた予算内でビジネスを成功に導くことができます。しかし、すべてのテクノロジーが同じように設計されているわけではありません。
過剰な期待を持たせておきながら、その期待に応えられないベンダーは数多く存在します。本当に重要なのは、テクノロジー プラットフォームによって法務業務の効率と効果が上がるかどうかということです。
デジタル化はそのための方法のひとつですが、E メールの受信トレイやデスクトップなどよりも優れたインターフェイスを持つソフトウェアを探すことだけが法務業務のデジタル化というわけではありません。ドキュメントを新しいプラットフォームにアップロードしても、すべてのドキュメントを手動で検索してタグ付けする必要がある場合は、新しいプラットフォームの導入前と比べてあまり進歩していないことになります。
優れた法務テクノロジーを導入すれば、スマートな方法で業務を処理できるようになります。
最先端の法務テクノロジー ソリューションは、単純な作業を自動化してデータを統合し、そのデータを使用してアクショナブルなインサイトを生成します。この自動化により、法務部門が機械的なレビュー作業や定型文の作成作業に費やす時間が短縮されるだけでなく、データの分析性が高くなるため、常に事後対応に追われる代わりに、事前に義務や期限に対処できるようになります。
そこで、契約管理システムが社内の法務部門の業務拡大にどれだけ役立つかということがビジネス ケースとなります。優れた法務テクノロジー プラットフォームは、多くの場合、わずかなコストで、社員1 人分 (またはそれ以上) に当たる生産性を高めることができます。
個々の作業に関する生産性だけでなく、自動化されたデータ分析によって価値の高いインサイトを取得できるため、大きな成果につながる可能性があります。たとえば、更新するつもりのないベンダー契約が自動的に更新され、定期的に多額の費用が支出されてしまう場合があります。更新期限が迫っていることを事前に通知するシステムがあれば、こうした不要な更新をなくすことができます。この方法で節約した金額はすべて、節約を可能にした法務テクノロジーへの投資に対する利益として返ってきます。
メリットはそれだけではありません。優れた法務テクノロジーにより、法務部門はより多くの業務を適切な方法で迅速に処理できるようになるため、販売サイクルの短縮による利益の増加や、規制に対するコンプライアンス向上など、さまざまなメリットにつながります。そのためには、適切なパートナーを選択する必要があります。
Workday による法務業務の強化
Workday プラットフォームにより、ドラフトの作成、契約交渉、契約の履行、契約の継続的な追跡など、契約プロセスのあらゆるステップを合理化することができます。これを実現するには、市場を定義する AI と直感的なワークフロー ツールを、一元化された契約リポジトリに組み合わせます。
弊社の次世代型 AI である Workday Illuminate™ は、すでに数百万件におよぶ実際の契約書と条項に基づいてトレーニングされているため、そのままの状態ですぐに使用することができます。主要なクラウド ストレージとドキュメント管理ソリューションとのシームレスな統合により、ファイルをまったく移行することなく、契約データをシステムに迅速に取り込むことができます。
プラットフォームにドキュメントを取り込むと、そのドキュメント内の情報が AI によって分類され、契約に関する貴重なインサイトを取得できるようになります。このプラットフォームは、時間の経過とともにさらに使いやすいプラットフォームへと進化を続けていきます。その理由は、Workday の強力な機械学習アルゴリズムです。このアルゴリズムは、わずかな数の例に基づいて、その会社のビジネスや業界に固有の用語や条件を学習していきます。Workday を使用すれば、分析が必要なドキュメントが何年分蓄積されているかに関係なく、契約ポートフォリオ全体にわたってあらゆる種類の条項を遡及的に追跡することができます。
契約インテリジェンス
Workday の契約インテリジェンス機能により、必要に応じてアクショナブルなデータにすばやく簡単にアクセスできるため、契約の期限、権利、義務などに関する重要な条件を簡単に追跡できるようになります。
単純な反復作業を削減して節約した時間と、Workday 契約インテリジェンス プラットフォームによって得られる貴重な情報を活用することにより、法務部門を企業における戦略的優位性の推進要因に変革できます。