習熟人財雇用組織について理解する
現在は、労働関連法制が急速に変化し、社員の期待もこれまで以上に高まっています。こうした背景から、ビジネスの成長を加速させて重要な業務に注力するために、習熟人財雇用組織 (PEO) を活用する企業が増えています。
PEO とは、給与計算、福利厚生、コンプライアンスなどに関する業務を、依頼元の企業と提携して処理する人事アウトソーシング企業のことを指します。依頼元の企業とは、共同雇用主の関係になります。このガイドでは、PEO の仕組み、PEO の活用が適しているケース、PEO を活用する場合の考慮事項について説明します。
習熟人財雇用組織: 戦略的な人事パートナー
現在の人事部門は、コンプライアンスの遵守、優秀な人財の獲得、増大する福利厚生費の管理、リモートワークへの柔軟な対応など、さまざまな課題への対応を求められています。そのため、十分なリソースを持つ企業であっても、作業負荷が高くなる場合があります。十分な予算や人員を確保できない中小企業が、大企業と同様の福利厚生サービスを社員に提供しようとすると、さらに困難な状況に直面することになります。たとえば、社員数が 50 ~ 100 人規模のテック系スタートアップ企業が、フォーチュン 500 企業と同水準の医療保険制度や有給休暇制度を整備しようとしても、そもそも条件が対等ではありません。
PEO は、給与計算、福利厚生、労災保険、法令遵守に関する業務など、重要な人事業務を担当することにより、多くのバックオフィス業務を抱える企業を支援します。日々の業務に追われる企業は、PEO を活用することにより、その場しのぎの状態から脱却し、持続的な成長の基盤を構築できるようになります。この記事では、PEO の仕組み、PEO の活用が適しているケース、PEO を活用する場合の考慮事項について説明します。
重要なポイント:
PEO とは、雇用主としての責任を依頼元の企業と分担し、重要な人事業務を担当するサードパーティ パートナーのことを指します。
多くの企業が、給与計算業務の簡素化、競争力のある福利厚生サービスの提供、法的リスクの軽減、コンプライアンス対応に要する時間の削減を目的として、PEO を活用しています。
PEO を活用する場合は、共同雇用の仕組みを正しく理解し、PEO が提供するサービス レベルはそれぞれ異なっていることを知っておく必要があります。
PEO を効果的に活用するには、各リーダーの認識を統一して「何を期待するのか」を明確に定義し、それを社員にわかりやすく伝える必要があります。
- 先進的な PEO は、高度な人事プラットフォームと給与計算プラットフォームを活用して、リアルタイムのインサイトと柔軟なサポートを提供しています。
「Workday ヒューマン キャピタル マネジメントなどのツールにより、業務効率が 50% 向上しました。Workday のおかげで戦略的目標を的確に達成できます」
—Coveo 社、財務会計システム担当シニア マネージャ、Stephanie Maxwell 氏
習熟人財雇用組織とは
習熟人財雇用組織とは、中小企業に対して人事業務のアウトソーシング サービスを提供する企業のことを指します。PEO は、事務手続き上は雇用主になりますが、日常業務の運営と法人としての主体性について管理権限を保持するのは、依頼元の企業になります。
この仕組みにより、依頼元の企業は、業務別に専任チームを編成することなく、給与計算、福利厚生、リスク管理、人事コンプライアンスなどに関する業務について、PEO が提供するサービスを利用することができます。
PEO は通常、以下の 3 つに分類されます。
フルサービス型 PEO: 人事業務全般を包括的に支援します。
事務サービス組織 (ASO): コンプライアンスや福利厚生に関するサービスを提供します。
専門型 PEO: 人財派遣や製造業など、特定の業界に特化した人事サービスを提供します。
習熟人財雇用組織の起源
PEO は、労働関連法規が複雑化し、中小企業がその対応に苦労するようになった 1970 年代から 1980 年代にかけて広く普及しました。当時の多くの中小企業には、コンプライアンス、給与計算、福利厚生に関する業務を処理するための社内リソースが不足していました。初期の PEO は、こうした課題を解決するため、給与計算業務と福利厚生業務の管理サービスを提供するところから事業を開始しました。その後、PEO が提供するサービスは拡大し、現在では、オンボーディング、国際的なコンプライアンス管理、リスク管理など、高度な人事業務を担当するようになっています。
習熟人財雇用組織 (PEO) と雇用主代行業者 (EOR) の違い
PEO と EOR は、企業にとってそれぞれ異なる役割を果たします。PEO は、依頼元の企業の人事業務を代行しますが、法的な雇用主としての地位を維持するのは依頼元の企業です。EOR は、依頼元の企業に代わって法的な雇用主になるため、依頼元の企業は現地法人を設立することなく、新しい拠点で社員を雇用することができます。
総合的なワークフォース管理戦略に適したモデルを選択するには、この違いを理解することが重要です。主な違いを以下に示します。
法的な雇用主
習熟人財雇用組織
依頼元の企業が、正式な雇用主として納税者番号を保持します。
雇用主代行業者
EOR が、税務、コンプライアンス、給与計算に関する業務の法的な雇用主になります。
ユース ケース
習熟人財雇用組織
すでに州内で事業登録が完了していて、人事、給与計算、コンプライアンスに関する業務のサポートを必要としている企業に適しています。
雇用主代行業者
現地法人を設立することなく、別の州や国で人財を採用したいと考えている企業に適しています。
採用と解雇に関する権限
習熟人財雇用組織
採用と解雇に関する意思決定は、依頼元の企業が直接行います。
雇用主代行業者
雇用と解雇に関する意思決定は、依頼元の企業に代わって EOR が行います。
提供する人事サービス
習熟人財雇用組織
給与計算、福利厚生、労災保険、コンプライアンスに関するサービスを提供します。
雇用主代行業者
PEO と同様のサービスを提供するだけでなく、法的な雇用主としての責任もすべて負います。
法人設立の要件
習熟人財雇用組織
社員が勤務する地域に、すでに法人が設立されている必要があります。
雇用主代行業者
法人を設立する必要はありません。
エンプロイー エクスペリエンス
習熟人財雇用組織
社員は、依頼元企業の組織体制や企業文化に従って業務を行います。
雇用主代行業者
社員は、第三者である EOR に雇用される形で業務を行います。
拡張性
習熟人財雇用組織
ビジネスを展開している地域において、ビジネスの成長に合わせて組織の規模を拡大することができます。
雇用主代行業者
海外展開やリモート人財の採用を行う場合に、組織の規模を迅速に拡大することができます。
ご存知でしたか?
全米 PEO 協会 (NAPEO) の調査では、PEO を利用している企業は、利用していない企業と比較して、事業を継続できなくなる可能性が 50% 低いという結果になっています。
習熟人財雇用組織を利用するメリット
成長企業は、習熟人財雇用組織を利用することにより、多額の間接コストを負担することなく、大企業と同様の人事インフラを活用できるようになります。PEO は、複雑なコンプライアンス要件への対応や、充実した福利厚生制度の提供など、人事業務に関する支援を必要とする企業にとって、さまざまなメリットがあります。
複数の法域にわたるコンプライアンス対応の強化
企業が新しい地域へ事業を拡大すると、現地の労働法、税務要件、雇用形態規則への対応が複雑になります。このような場合に PEO を活用して、各種の手続き、法規制変更の監視、多額のコストを伴うミスや監査リスクの低減を依頼することにより、コンプライアンス対応の負担を軽減することができます。
福利厚生管理業務の最適化によるコスト削減
PEO は、スケールメリットを活かした交渉力により、質の高い福利厚生制度を低コストで中小企業に提供します。健康保険制度、退職金制度、ウェルネス プログラムなどにより、社員の満足度と定着率が向上します。
PEO は複数の保険会社と交渉するため、企業が単独で交渉するよりも、費用対効果の高い保険プランが見つかる可能性があります。NAPEO の調査では、PEO を利用している企業の推定 ROI は 27% という結果になっています。
社内チームの事務作業負荷の軽減
給与計算、福利厚生管理、税務申告などの人事業務を PEO に委託して社内チームの事務作業の負荷を軽減することにより、戦略的な取り組みや重要な業務に注力できるようになります。PEO と Workday AI プラットフォームを組み合わせることにより、複数のシステム間のデータ連携を効率化し、パフォーマンス管理、休暇申請、キャリア形成を 1 か所で実行できるようになります。これにより、組織の規模が拡大しても、人事部門はアジリティを維持することができます。
リスク管理の強化と責任分担
MetLife 社と米国商工会議所が作成した 2024 年第 1 四半期版『Small Business Index』では、中小企業の 4 社に 1 社が、「1 回の危機的状況で事業継続が困難になる」と回答しています。PEO は、雇用のリスク管理に関する専門知識 (労災保険や職場の安全管理に関する知識など) を提供し、ビジネスに大きな損害をもたらす状況を未然に防ぐように支援します。また、安全プログラムの策定と導入、クレーム対応をサポートすることにより、企業の法的責任やリスクの軽減を支援します。
成長を支える拡張性の高い人事インフラ
ビジネスが成長すると、多くの場合、人事業務が複雑になっていきます。PEO が提供する拡張性の高いソリューションを使用すれば、常に変化するニーズに柔軟に対応しながら、ビジネスの成長基盤となる人事インフラを構築することができます。
たとえば、新しい地域でビジネスを展開する小売企業の場合、PEO を活用すれば、各拠点で人事担当者を採用することなく、コンプライアンス、福利厚生、給与計算などに関する業務を複数の地域にわたって管理することができます。社員数が 25 人から 200 人へと急速に増大しているテック系スタートアップ企業の場合、PEO を活用して、体系的なオンボーディングの仕組みや競争力のある福利厚生制度を整備することができます。
PEO に関する課題への対処
PEO を活用する初期段階で、複雑な課題に直面することがよくあります。役割分担や業務の引継ぎで問題が発生したり、期待していたサービス内容と実際の内容が異なっていたりする場合があります。こうした課題は、PEO の活用を断念するほど重大なものであはりませんが、どのような問題が発生するかを事前に予想し、適切な対応策を準備しておくことが重要です。
特定の人事業務に対する管理権限が制限される
PEO を活用する場合、給与計算、福利厚生、コンプライアンスに関する業務については、PEO と責任を分担することになります。これによって業務の負荷を軽減できますが、これまで社内で直接処理していた業務については、管理権限が制限されたと感じる場合もあります。
解決策: 人事業務の内容別に社内の担当窓口を指定し、PEO と定期的な打ち合わせを実施して、チーム間で最新情報を共有してください。
共同雇用の仕組みがわかりにくい
共同雇用の仕組みは、社員や新規採用者に説明するのが難しい場合があります。特に、雇用や福利厚生に関する書類を外部の会社から受け取った場合、「自分を雇用しているのは誰なのか」と疑問を抱くことがあります。
解決策: 共同雇用の仕組みと共同雇用を行う理由を、早い段階で社員に説明してください。その際、充実した福利厚生制度や高度な給与計算サポートなど、社員にとってのメリットを強調することが重要です。
画一的なサービス モデル
一部の PEO は、業界特有のニーズや社内のワークフローに適していない、標準化されたサービス パッケージを提供しています。こうしたパッケージを利用すると、不要なサービスに対して過剰なコストが発生したり、期待していた機能やサービスを利用できなかったりする可能性があります。
解決策: 柔軟なサービスプランを提供している PEO と契約し、初期段階でサービス内容について詳しく確認してください。PEO に対する期待や今後の成長計画を明確に伝えれば、多くの PEO は、それに合わせてサービス内容をカスタマイズします。
PEO の導入を成功させる方法
PEO を導入すると、人事業務を処理するための新しいワークフローが導入されます。導入を成功させるには、すべてのメンバーが前向きに導入に取り組み、可能な限り円滑に作業を進める必要があります。そのためには、社内のチームと PEO の両方が共通の目標に向かって連携するための強固な基盤が必要になります。
以下に手順を示します。
1.早い段階で社内の意思統一を行う
PEO の活用を検討する段階から、財務部門、人事部門、法務部門の責任者を関与させ、PEO との提携範囲と責任分担についてすべての関係者に周知します。PEO の活用によって変わることと変わらないことについて、社員からの質問に回答できるように準備しておく必要があります。変わるのはバックオフィス業務だけで、社員の業務内容、マネージャの業務内容、企業文化については変わらないということを伝え、社員に安心感を持たせることが重要です。この段階で社内の認識が一致していないと、導入作業の遅れにつながるだけでなく、特に給与計算や福利厚生について、後になって社員の信頼を損なう可能性があります。
2.自社の組織体制に適した PEO を選ぶ
自社の業界に精通し、ビジネスの成長に合わせて柔軟に対応できる PEO を絞り込みます。PEO を比較する場合は、地域ごとのコンプライアンス対応をどのように行っているのか、サービスをどの程度カスタマイズできるのかについて、詳しく確認する必要があります。また、既存のシステムに対応できるのか、データの円滑な同期は可能なのかについても確認する必要があります。
3.データとプロセスを整理する
PEO のシステムにデータを移行する際に、PEO が指定する準備を行わなければならない場合があります。データの形式や移行方法について、PEO に確認してください。通常は、データを整理する作業が必要になります。また、現在のプロセスの運用方法を文書化して PEO と共有するのも効果的な方法です。
4.社内に連絡窓口を設ける
社内に、PEO との連絡窓口になる担当チームを設置します。このチームには、業務に詳しい財務担当者と人事担当者を配置し、PEO の担当者と円滑にコミュニケーションを取りながら、社内プロセスに関する最新情報を共有し、プロジェクトを円滑に進めていきます。
5.段階的に導入する
可能であれば、PEO を段階的に導入します。最初は、給与計算やコンプライアンスに関する業務から開始し、その後、福利厚生やオンボーディングに関する業務に広げていきます。これにより、新しいワークフローに適応するための時間的な余裕が生まれるだけでなく、PEO も、ビジネスの細部まで理解できるようになります。
6定期的にパフォーマンス レビューを実施する
導入後は、PEO を信頼できるビジネス パートナーとして位置付ける必要があります。その他のパートナー企業やベンダーと同様に、PEO のパフォーマンスが継続的に自社のニーズや期待を満たしているかどうかを確認する必要があります。PEO に対して四半期ごとの目標を設定し、給与計算や福利厚生制度の加入手続きなどが正しく行われているかどうかを確認してください。
「Workday が優れているのは、システムを柔軟に設定できることと、グローバルに拡張できることです。ある国で [人事] 機能の開発を開始したことで、各国に短期間で AI 機能をデプロイすることができました」
—Philips 社、HRIS グローバル ディレクター、Efthymios Zindros 氏
Workday HCM ソフトウェアのメリット
Workday 自体は PEO ではありませんが、PEO サービス プロバイダと協力し、日常的な人事業務の外部委託を通じてワークフォース データの高度な可視化に取り組む企業を支援しています。Workday ヒューマン キャピタル マネジメント (HCM) を使用すれば、PEO がバックグラウンドで、給与計算、福利厚生、コンプライアンスに関する業務を処理している場合でも、ワークフォース データを一元管理し、データの正確性とアクセス性を維持することができます。
Workday HCM は、以下の機能を通じて PEO との連携をサポートします。
人事データ、財務データ、給与計算データの統合的な管理機能
傾向や成果を追跡するためのリアルタイムのワークフォース分析機能
PEO プラットフォームとのシームレスな連携による業務の簡素化機能
設定可能なパフォーマンス監視ダッシュボード
複数の地域にわたるコンプライアンス状況の追跡機能
各社員向けにパーソナライズされた AI ベースのウェルネス ソリューション
オンボーディング、パフォーマンス管理、キャリア開発のための各種ツール
社員とマネージャを支援するモバイル セルフサービス
組織の成長に合わせて拡張できるプラットフォーム
エンプロイー エクスペリエンスに対する影響
Workday HCM を導入すれば、社員は自分の業務について明確に把握し、主体的に管理できるようになります。たとえば、給与、休暇、福利厚生などに関する情報を 1 か所で確認することができます。透明性の向上と人事システムの統合により、迅速でシンプルでストレスの少ないエンプロイー エクスペリエンスが実現します。
PEO の活用
人事業務の負担が大きくなってきたら、PEO の活用を検討することをお勧めします。自社のニーズに適した PEO を活用すれば、コンプライアンスを遵守しながら効率的にビジネスを拡大し、優れたエンプロイー エクスペリエンスを実現することができます。戦略的な人事パートナーである PEO を活用し、企業にとって最も重要な資産であるワークフォースへの投資を進めましょう。