従業員エンゲージメントとは?日本企業成功のための14の要因
従業員エンゲージメントとは、従業員が企業や仕事に対してどれだけ主体的に関わり、貢献しようとする意欲や愛着心を示す指標です。日本の人財部門では従業員エンゲージメントへの関心が高まっていますが、実際にはどのような意味を持つのでしょうか。この記事では、従業員エンゲージメントと従業員エクスペリエンスの関係性を含め、日本企業における基本的な考え方をご紹介します。
日常生活において、エンゲージメントとは、二者間の前向きなコミットメントを指します。人々は自分の情熱や趣味、そして何よりも家族や仲間とのつながりを大切にしています。最も生産的なケースでは、そのエンゲージメントは双方向的です。従業員エンゲージメントも同様です。
幸いにも、従業員は職場においてエンゲージメントを感じたいと望んでいます。しかし、従業員が真にエンゲージを持つためには、会社のビジョンや経営方針を理解し、同時に自分の役割がその目標達成にどう貢献するかを明確に認識する必要があります。従業員は、自身が職場で評価されていると感じ、自分が会社に提供している価値を理解したときに、最も高いパフォーマンスを発揮します。
変化する働き方の中で、従業員エンゲージメントの向上はますます重要になっています。最近のWorkdayのレポートでは、従業員の27%が離職のリスクがあると示すエンゲージメントスコアを持っていました。優秀な人財の獲得と定着のためには、従業員エンゲージメントの重要性を理解することが不可欠です。
従業員エンゲージメントとは?
従業員エンゲージメントとは、従業員が自分の仕事、同僚、そして組織全体にどの程度のつながりを感じているかの度合いを指します。エンゲージメントは従業員の職業生活の一つの側面だけで決まるものではありません。採用の方法から、活用しているソリューション、さらにはオフィスのスナックに至るまで、組織の全体像が見えてきます。
エンゲージメントの高い従業員は、職務に全力で取り組み、求められる業務以上の成果を上げることが多いです。つまり、自発的にスキルアップに取り組み、職場環境に誇りを持ち、自社の価値を積極的に発信します。自主的な努力は、会社により多く貢献したいという純粋な気持ちからなのです。
一方、エンゲージメントの低い従業員は、求められている最低限の業務を超えて成果を上げることはほとんどなく、むしろ基準を下回ることも少なくありません。自分の担当業務を超えて、組織全体や企業文化の向上に積極的に貢献することはありません。将来のキャリアビジョンが描けないため、現状維持に満足している状態です。
従業員エンゲージメントと従業員エクスペリエンスの違いとは?
企業の従業員エンゲージメントについて議論するとき、通常は従業員エクスペリエンスの枠組みの中で議論されます。従業員エンゲージメントと従業員エクスペリエンスは一部重複する部分があるため、同じ意味で使用されることがありますが、実際には異なる概念です。
従業員エクスペリエンスは、入社から退職までの各従業員がたどる一連の過程であるとすれば、従業員エンゲージメントはその過程の質を表しています。さらに、従業員エンゲージメントは全体的な従業員エクスペリエンスの質を左右する、重要な要因でもあります。良好な従業員エクスペリエンスは重要な目標ですが、エンゲージメントには独自の戦略や取り組みが必要です。
従業員エンゲージメントと従業員満足度の違いとは?
従業員エンゲージメントと従業員満足度は、しばしば混同されがちですが、実際には明確な違いがあります。従業員満足度は、職場環境、給与、福利厚生などの条件に対する従業員の満足の程度を測る指標です。一方、従業員エンゲージメントは、従業員が積極的に組織の目標達成に貢献しようとする意欲と行動を表します。
満足している従業員が必ずしもエンゲージしているとは限りません。例えば、良好な職場環境と適正な処遇に満足していても、組織の成功に向けて積極的に行動しない従業員もいます。反対に、エンゲージした従業員は、たとえ一時的な困難があっても、組織の使命に共感し、自発的に貢献し続けます。
従業員満足度は「現状に対する受動的な評価」であるのに対し、従業員エンゲージメントは「未来に向けた能動的な行動」といえるでしょう。日本企業が真の競争力を獲得するためには、満足度向上にとどまらず、従業員が主体的に組織の価値創造に参画するエンゲージメントの向上が不可欠です。
従業員エンゲージメントのメリットとは?
エンゲージした従業員は、生産性の向上、離職率の低下、顧客満足度の向上、そして組織全体の業績向上をもたらします。従業員エンゲージメントは、もはや人財部門だけの課題ではありません。組織が持続的な成長を実現するためには、すべての管理職が従業員エンゲージメントの重要性を理解し、実践する必要があります。経営陣は組織全体でのエンゲージメント向上の価値を積極的に推進すべきです。
データは一貫して、従業員エンゲージメントの高い企業が競合他社を上回る成果を上げていることを示しています。Harvard Business Reviewの研究によると、従業員が帰属意識を感じたときには、次のような効果が期待できます:
生産性が56%向上
離職率が50%減少
病欠日数が75%減少
1万人規模の企業にとって、これは年間約70億円の経費削減効果につながります。言うまでもなく、帰属意識は従業員エンゲージメントの重要な要素です。職場に対する帰属意識の高い従業員は、職場の推奨度をあらわす指標(eNPS:エンゲージメントの指標のひとつ)が167%向上しています。
高いエンゲージメントには多くのメリットがあるように、エンゲージメントの低下にもデメリットが存在します。従業員エンゲージメントの上位企業と下位企業を比較したGallupの最近の調査では、以下の結果が示されました:
従業員の欠勤率において81%の差
離職率の高い組織では離職率に18%の差
離職率の低い組織では離職率に43%の差
人手不足が深刻化する日本において、これらの数値は看過できない経営課題といえるでしょう。最近の Workday のレポートによると、従業員の 27% が離職のリスクを示唆するエンゲージメントスコアを持っていることが明らかになりました。
従業員エンゲージメントの測定方法
従業員エンゲージメントは複雑な概念であるため、従業員エンゲージメントの測定手法にもさまざまなアプローチがあります。Workdayでは、インテリジェントリスニング調査プラットフォームであるWorkday Peakon Employee Voiceを使用して、複数の観点から従業員の意識を測定しています。測定項目には、自律性、成長、報酬、職場環境などが含まれ、加えてエンゲージメントの度合いも重要な成果指標として評価しています。
質問は0から10のスケールで回答されます。これにより、企業はエンゲージメントを10点満点の平均スコア(小数点第一位まで)で測定するか、あるいはeNPSのスコアリングシステムを活用して評価できます。10点満点のスコアは異なる文化圏でも理解されやすく、より効果的なベンチマーキングを可能にします。
あらゆるビジネス成果と同様に、従業員エンゲージメントはパルスサーベイによって測定することで、最も的確に把握することができます。年次の従業員調査では、年ごとの意識の変化を把握することは可能ですが、従業員エンゲージメントはそれ以上に速く変化する傾向があります。 そのため、テクノロジーも同様に迅速かつ柔軟に対応できる必要があります。
従業員エンゲージメントを高める主な要因とは?
調査結果を正しく読み解くには、その背景にある要因を的確に把握する必要があります。従業員エンゲージメント調査から実践的な示唆を得るには、関連する因果要因の分析が不可欠です。これらを従業員エンゲージメントの14の要因として呼んでいます。
長年にわたる学術研究の検証に基づき、これら14の要因が45の調査質問からなる中核的な質問セットを構成しています。従業員エンゲージメントを測定するいかなる手法においても、これらの要因が調査の基盤となるべきです。
達成感:各従業員が着実に成果を上げていることの実感
自律性:基本的な人間の欲求としての自主性の尊重
職場環境:対面・リモート・ハイブリッドを問わない快適な職場づくり
意見表明の自由:心理的安全性が確保された職場文化の醸成
目標設定:明確で自主的な目標によるモチベーション維持
成長機会:継続的な学習と能力開発を支援する文化
上司のサポート:共感と理解に基づく管理職との信頼関係
働きがい:仕事の意義、やりがい、尊敬が感じられる職務内容
組織との適合性:組織内で共有される目標や理想の重要性の認識
同僚関係:強いチームワークと組織への帰属意識
承認:時々の「ありがとう」だけではない承認の意味を理解
報酬:成果に見合った適正な報酬の重要性を認識
戦略:包括的で決断力のあるコミュニケーションで従業員を鼓舞
業務負荷:適正な業務量と燃え尽き症候群の防止
全質問を一度に実施する調査もありますが、最新の研究では的を絞ったアプローチが推奨されています。異なる質問を定期的に異なる従業員に送信することで、組織全体の従業員意識をリアルタイムで把握できます。これにより、より個別化された対応が可能となり、調査疲れを防ぎ、優秀な人材の定着にもつながります。
2022年の調査では、米国の従業員エンゲージメントが10年ぶりに低下傾向を示したことが明らかになりました。
従業員エンゲージメントを向上させるには?
2022年の調査では、過去10年間で初めて従業員エンゲージメントが低下したことが報告されています。全世界で積極的にエンゲージする従業員の割合は23%から21%に減少しました。これに対して、ベストプラクティスを実践する企業では約70%の高いエンゲージメント率を維持しています。この結果は、従業員が企業に対してより高い価値提供を期待していることを示す重要な警鐘となっています。
従業員エンゲージメントの向上は複雑なプロセスですが、基本的な考え方は明確です。従業員の声に真摯に耳を傾けることで、実行可能で最新の洞察を得られます。その洞察を組織全体での具体的な行動につなげることで、効果的なフィードバックループを構築できます。従業員エンゲージメント戦略を策定する際に検討すべき5つのアイデアをご紹介します。
1. 従業員フィードバックシステムの日常業務への組み込み。継続的な参画は長期的成功の必須条件です。定期的な調査を「日常業務の一部」とすることで、従業員は会社が自分たちの意見を重視し、積極的に受け入れていることを実感します。そのために、調査は従業員の自然な業務フローに組み込む必要があります。したがって、どのHRサービスデリバリーの方法が最も効果的かを検討してください。
2. 従業員の率直な意見表明を促進する環境。建設的で誠実な職場コミュニケーションの推進は、従業員エンゲージメント向上に欠かせません。調査結果やスコア、記述式回答はすべて機密情報として取り扱い、心理的安全性を確保することで、より正直で有益なフィードバックを得ることができます。
3. 従業員を積極的にサポートする仕組みの構築。問題解決において最も効果的な方法は、事前に積極的に対応することです。Workday Journeysのようなソリューションは、個人的・職業的な重要な局面において、一人ひとりに合わせた的確なサポートを提供できます。エンゲージメント向上は、入社時のオンボーディングからキャリアの成長に至るまで、従業員を継続的かつシームレスに支援できる企業の力にかかっています。
4. 意義ある行動を実行できる管理職の支援。管理職はエンゲージメントデータの可視化と、課題への具体的な対応策の提案が必要です。データの解釈方法と対応状況の追跡を可能にすることで、管理職が現場レベルで細かく従業員エンゲージメントを推進できるよう支援します。
5. スコアとアクションの透明性確保。従業員が会社の方針に強く賛同している点のみを強調するのは適切ではありません。複数のチームで低いスコアが確認された場合は、会社全体で共有し、真摯に対応すべき事項として認識しましょう。問題点について話し合う機会を設け、改善に向けた取り組みの状況も定期的に報告することが重要です。
成果や効率のみを評価してしまうと、最も重要な要素を見落とすことになります。それは従業員の職場に対する感情的なつながりです。従業員の職務満足度、職場環境、企業理念への共感のいずれを見るにしても、効果的な従業員エンゲージメントプログラムは、企業と従業員の関係性を理解するための基盤となります。
燃え尽き症候群の防止とエンゲージメント
日本企業においても、過重労働による燃え尽き症候群は深刻な課題です。適正な業務負荷の管理は、従業員エンゲージメント向上の重要な要素の一つです。労働基準法に基づく適切な労働時間管理と併せて、従業員の心身の健康を守ることが、持続可能なエンゲージメント向上につながります。
日本企業の皆様へ
人手不足と働き方改革が進む日本において、従業員エンゲージメントの向上は企業の持続的成長に欠かせない要素です。Workdayのソリューションは、日本の労働基準法(LSA)や社会保険制度(社会保険)に対応しながら、従業員の声を的確に把握し、組織力強化を実現します。ぜひ貴社の人財戦略にお役立てください。
FAQ
従業員エンゲージメントとは、従業員が企業や仕事に対してどれだけ主体的に関わり、貢献しようとする意欲や愛着心を示す指標です。単なる職務の遂行を超えて、組織の目標達成に向けて自発的に努力し、企業の価値観を体現する従業員の状態を表します。エンゲージした従業員は、期待される業務を超えた貢献をし、組織全体の成功に積極的に関与します。
従業員満足度は職場環境や処遇などの条件に対する受動的な評価である一方、従業員エンゲージメントは組織の目標達成に向けた能動的な行動を表します。満足している従業員が必ずしもエンゲージしているとは限りません。エンゲージした従業員は、一時的な困難があっても組織の使命に共感し、自発的に貢献し続ける特徴があります。つまり、満足度は「現状への評価」、エンゲージメントは「未来への行動」といえます。
従業員エンゲージメントの測定には、定期的なパルス調査が効果的です。Workday Peakon Employee Voiceのようなプラットフォームでは、0から10のスケールで複数の観点から従業員意識を測定します。測定項目には達成感、自律性、成長機会、職場環境などの14の要因が含まれます。年次調査だけでなく、リアルタイムに近い測定システムを導入することで、エンゲージメントの変動を的確に把握できます。
多くの日本企業がWorkdayのソリューションを活用して従業員エンゲージメント向上を実現しています。例えば、Tokyo Electronは全社的なHRシステムの統一により組織全体の一貫性を確保し、従業員エンゲージメントの向上を達成しました。また、CHT(中華電信)では、Workdayの導入により新しいHR基準を確立し、従業員体験の大幅な改善を実現しています。