雇用主代行業者とは
雇用主代行業者 (EOR) とは、クライアント企業に代わって合法的に従業員を雇用する第三者企業のことを指します。雇用契約、給与の支払い、福利厚生の管理は EOR が担当し、従業員の日常業務の管理はクライアント企業が行います。この仕組みにより、クライアント企業は現地法人を設立することなくグローバルに人財を雇用できるため、コンプライアンス業務を効率化しながら業務上のリスクを軽減することができます。
EOR は、グローバルなワークフォース プランニングにおいて、アジリティの向上、コストの最適化、コンプライアンスの確保を実現するための重要な手段です。EOR ソリューションを、人財管理 (HCM) システム、ワークフォース プランニング システム、ERP システムと統合することにより、システム間で給与データを交換し、統一された社員データと分析データを維持することができます。
雇用主代行業者の定義と目的
EOR は、法令遵守の観点から法的な雇用主としての役割を担い、現地の法令に準拠した雇用契約の締結、給与支払い、福利厚生の管理を行います。業務目標の設定、企業文化の醸成、社員のパフォーマンス管理については、クライアント企業が担当します。EOR が必要に応じて法的な雇用主になることにより、クライアント企業は、コンプライアンス リスクを低減し、グローバルな人財採用活動を迅速化に進めることができます。地域によっては、海外雇用代行 (GEO) という用語が EOR と同じ意味で使用されることがありますが、いずれの場合も、GEO/EOR が法的な雇用主となり、社員の日常業務の管理はクライアント企業が行うという点は共通しています。
雇用主代行の仕組み
EOR は、法的な雇用主代行業者としての責任を負います。具体的には、法令に準拠した雇用契約の作成、給与計算と納税手続きの実施、各種法令遵守への対応を行います。従業員の日常業務の管理、報酬戦略の策定、パフォーマンス管理については、クライアント企業が行います。
EOR は通常、Workday などの HCM システムから、報酬、勤務時間、配属などに関するデータを受け取り、グローバルな給与システムとの連携機能やサードパーティ製の給与計算ツールなどを使用して、クライアント企業に給与の計算結果を返します。クライアント企業はこの計算結果を使用して、照合作業やレポート作成を行います。
共同雇用と EOR の違い: 共同雇用 (習熟人財雇用組織 (PEO) における一般的な雇用形態) の場合、PEO とクライアント企業が雇用主としての責任を分担します。一方、EOR は唯一の法的な雇用主になります。この違いは、グローバルなコンプライアンス対応において特に重要な要素になります。
EOR プロセスの概要を以下に示します。
採用計画
EOR の役割 (法的な雇用主)
採用活動の実現可能性と現地のコンプライアンス要件を確認する。
クライアント企業の役割 (日常業務の管理)
候補者を選定し、職務内容、給与、入社日を決定する。
オンボーディングと雇用契約
EOR の役割 (法的な雇用主)
現地の法令に準拠した雇用契約を締結し、就労資格の証明書類を収集する。
クライアント企業の役割 (日常業務の管理)
職務内容、社内規程、業務に必要な機器について社員に説明し、オリエンテーションを実施する。
給与計算と福利厚生
EOR の役割 (法的な雇用主)
グローバルな給与計算、源泉徴収、納税、法定福利厚生と社会保障への加入手続きを行う。
クライアント企業の役割 (日常業務の管理)
給与計算に必要なデータ (勤務時間や賞与に関するデータなど) の承認と報酬制度の管理を行う。
勤怠・パフォーマンス管理
EOR の役割 (法的な雇用主)
労働法に基づいて社員レコードを適切に管理し、休暇の管理をサポートする。
クライアント企業の役割 (日常業務の管理)
目標の設定、レビューの実施、スケジュールの管理、有給休暇申請の管理を行う。
継続的なコンプライアンス対応
EOR の役割 (法的な雇用主)
労働法の改正状況を把握し、必要に応じて契約書や各種ポリシーを更新する。
クライアント企業の役割 (日常業務の管理)
組織変更に関する情報を EOR に伝え、職務内容と予算の調整を行う。
退職/解雇
EOR の役割 (法的な雇用主)
法令に準拠した退職手続き、解雇通知、最終給与の支払いを行う。
クライアント企業の役割 (日常業務の管理)
雇用終了に関する意思決定と、業務引継ぎの管理を行う。
雇用主代行業者が提供する主要なサービス
HCM システムや給与システムの観点から見た場合、EOR が提供するサービスは、採用、職務/報酬の変更、勤務時間、給与計算に関する標準化されたデータ連携がベースになっています。各種の管理機能と監査証跡機能は、クライアント企業のコア システム上で管理されます。
グローバルな給与計算と源泉徴収: EOR は現地の基準に従って、給与計算、源泉徴収、納税を行い、現地の通貨で給与明細書を発行します。
法定福利厚生と社会保険の管理: 現地で義務付けられている福利厚生制度 (年金や健康保険など) への加入手続きと、その後の継続的な管理を行います。
法令に準拠した現地での雇用契約: 現地の労働法や労働協約に準拠した雇用契約書の作成、管理、更新を行います。
労働法の遵守と人事業務の運営: 現地の規制に従い、入社手続き、就労資格の確認、休暇管理、報告管理、退職手続きなどを行います。
- 雇用ライフサイクル管理: 入社から退職にいたるまでの雇用ライフサイクル全体を管理し、すべての段階でコンプライアンスを確保します。
EOR を活用するメリット
グローバルな採用活動の迅速化:現地法人の設立手続きを省略できるため、採用活動を数日から数週間で開始することができます。数か月も待つ必要はありません。
初期費用の削減: 現地法人の設立や維持にかかる費用 (1 万~ 5 万ドル以上になることもあります) を回避できます。EOR の一般的な利用料金は、従業員 1 人あたり月額約 199 ~ 1,500 ドルです。
コンプライアンス リスクの低減: 65% の企業が、主に海外における法的リスクを軽減する目的で EOR を利用しています。この数字から、現地の規制への準拠が企業にとって大きなプレッシャーになっていることがわかります。
分散型チームへの対応: 71% の企業が、何らかの形で恒常的なリモート ワークを認めていますが、EOR を活用すれば、グローバルなリモート ワーカーのコンプライアンス対応や給与計算を標準化することができます。
市場環境への高い適応性: 長期的な取り組みを行うことなく、小規模な現地チームを立ち上げたり、パイロット プログラムを実施したりできます。その後は、需要に合わせて規模を拡大することができます。
EOR を HCM システムと組み合わせることにより、さまざまな雇用形態にわたる人財管理、コスト管理、コンプライアンス対応でこれらのメリットを活用できるようになります。
EOR を利用する場合の主な考慮事項とリスク
リスクの残存: 法的な雇用主は EOR ですが、クライアント企業は、引き続き企業の評価に関するリスクを負うことになります。また、日常業務に関する法令遵守の責任も負う必要があります。
規制上の精査: 国境を越えた雇用形態では、恒久的施設や雇用区分に関する複雑な問題が発生する場合があります。規制に関する不確実性は、市場の 27% に影響するという調査結果があります。
データのプライバシーとセキュリティ: 31% のプロバイダが、データ プライバシーを最大の懸念事項として挙げています。データの保存場所、アクセス制御、監査証跡について正しく理解することが重要です。
サービス品質のばらつき: 第三者に業務を委託するアグリゲーター型の EOR では、一貫性のないエクスペリエンスが発生する場合があります。現地法人の所有者と SLA の適用方法を確認する必要があります。
恒久的施設とシャドー ペイロール: EOR を利用して従業員を雇用している場合であっても、国や地域によっては、シャドー ペイロールの実施が必要になることがあります。また、現地従業員の業務内容や権限に応じて、恒久的施設に関する検討が必要になる場合もあります。
Workday を導入すれば、ロールベースのセキュリティ プロセス、データ保存プロセス、連携照合プロセスを、EOR の運用モデルに合わせて調整することができます。
リスクを軽減するには、以下の事項を EOR に確認する必要があります。
現地法人を自社で運営しているのか。どの国で運営しているのか。
データのプライバシー保護、セキュリティ認証の取得、監査への対応はどのように行っているのか。
雇用契約の終了、知的財産の保護、発明の権利譲渡は、どのような内容になっているのか。
労働法の改正や雇用契約の変更にどのように対応しているのか。
給与計算の正確性と適時性を確保するために、どのような SLA やエスカレーション体制を整備しているのか。
EOR のプラットフォームは、自社の HRIS システム、給与システム、財務システムと連携できるのか。
EOR と現地法人設立のどちらを選択すべきか
採用活動を開始するまでの期間
雇用主代行業者
数日~数週間
現地法人の設立
数か月 (法人登記、銀行口座の開設、給与システムの開発などが必要)
初期費用
雇用主代行業者
社員 1 人あたりの月額料金 (例: 300 ~ 800 ドル)
現地法人の設立
初期費用として 1 万~ 5 万ドル以上 (そのほかに、継続的な管理費用が必要)
コンプライアンス対応に関する責任の所在
雇用主代行業者
法的な雇用主である EOR が主要な責任を負う
現地法人の設立
クライアント企業が全面的に責任を負う (現地の法令に関する専門知識が必要)
社員数
雇用主代行業者
小規模なチームに適している
現地法人の設立
社員数が 15 ~ 20 名以上になると、費用対効果が高くなる
柔軟性
雇用主代行業者
パイロット プロジェクト、短期的な事業展開、不透明な市場環境に適している
現地法人の設立
長期的な事業拡大やブランド認知度の向上に取り組む場合に適している
EOR は、新しい市場への参入、現地における採用活動のアウトソーシング、迅速な人財採用、短期的なプロジェクトに適しています。また、業務量と収益性が安定してから現地法人を設立するまでの間の橋渡し役としても効果的です。
EOR 市場における新たな動向
給与計算とコンプライアンスにおける AI と自動化機能の活用: 現在、EORプラットフォームの 38% で AI が使用されており、AI を活用したオンボーディングの増加率は 32% になっています。こうした AI の活用により、業務の精度が向上してサイクル タイムが短縮されます。
ハイブリッドな雇用モデル: コスト、リスク、柔軟性を最適化するため、特定の職種や地域については EOR を活用し、それ以外の職種や地域については、現地で直接雇用を行うというハイブリッドな雇用モデルが普及しています。
クラウドファーストの人事システム連携: 61% の EOR が、人事システムと人財管理システムから構成されるクラウド環境で運用されています。これにより、優れたレポートの処理と管理が可能になります。
規制の強化: 2026 年は、国境を越えたリモート ワーク、課税上の拠点、従業員の区分に関する規制やガイドラインがさらに強化されることが予想されます。
データと分析の一元化に対する期待の高まり: HCM システムの分析機能を通じて、人員、コスト、コンプライアンスに関するデータを一元的に管理するダッシュボードを必要とする企業が増えています。
すべての雇用形態おける一貫したエンプロイー エクスペリエンスと、監査に対応可能なレポートを必要とする企業が増えているため、EOR は、標準化された透明性の高いデータを提供する必要があります。
EOR を活用したグローバル ワークフォース戦略の策定
グローバルな採用活動の目標を設定する: 対象となる市場、職種、雇用期間 (短期、長期)、採用人数を明確に定義します。
コンプライアンスとシステム連携のニーズを評価する: 労働法に関するリスクとデータ プライバシーに関する要件を整理し、EOR のデータを、自社の HRIS システム、給与システム、財務システムとどのように連携させるかを検討します。
総所有コストを比較する: EOR の利用料金と、現地法人の設立と運営にかかるコストを比較し、アジリティ、価値実現までの期間、規制リスクなどを含めて総合的に評価します。
EOR を慎重に評価する: サービスの内容、現地の法令に関する専門知識、セキュリティ体制、SLA を中心として重視して EOR を評価し、パイロット運用を実施します。
段階的なビジネスの拡大を計画する: 初期段階では EOR を活用し、その後は、業務量やビジネス環境に応じて、現地法人の設立を検討します。
統合型の HCM プラットフォームと財務プラットフォームを EOR と組み合わせることにより、可視性、シナリオ プランニング、管理体制を改善することができます。Workday の HCM 基盤とグローバルな給与管理エコシステムを導入すれば、ワークフォース データを一元化し、さまざまな雇用形態にまたがるプロセスを調整することができます。給与計算業務と分析機能の連携方法については、Workday 給与計算の概要ページを参照してください。グローバル給与計算クラウド (GPC) の各種コネクタ、サードパーティ製給与計算ツール、Prism Analytics により、データの照合、監査証跡の作成、ダッシュボードの表示を行うことができます。
Employer of Record (EOR) に関するよくある質問
雇用主代行業者とは
雇用主代行業者 (EOR) とは、クライアント企業に代わって従業員を合法的に雇用する第三者企業のことを指します。具体的には、給与計算、雇用契約、福利厚生、コンプライアンス対応などの業務を担当します。日常業務の管理については、クライアント企業が行います。Workday を導入すれば、EOR 経由で雇用した従業員のデータを一元的に管理しながら、EOR から受け取った給与データや福利厚生データを統合することができます。
雇用主代行業者はどのようなサービスを提供するのですか?
一般的なサービスとしては、グローバルな給与計算と税務申告、法令に準拠した雇用契約書の作成と管理、法定福利厚生制度の管理、労働法令の遵守、入社手続きから退職手続きまでの一連の人事業務の処理などがあります。これらのサービスは通常、グローバル給与システムやサードパーティ製給与計算コネクタを使用して Workday に統合されます。これにより、法令に準拠したプロセスとレポート処理が可能になります。
雇用主代行は、従来の雇用モデルとどのように異なっているのですか?
雇用主代行サービスを利用する場合、コンプライアンス上の法的な雇用主は EOR プロバイダになりますが、従来の雇用形態では、雇用元の企業が法的な雇用主になります。システム上では、EOR プロバイダが法的な雇用主として表示されますが、管理組織、目標、パフォーマンスに関するデータについては、引き続き HCM システムに保存されます。
どのような場合に雇用主代行業者を利用するのが最適ですか?
EOR が適しているのは、現地法人を設立することなく海外で人財を採用したい場合、新しい市場へ迅速に参入したい場合、世界中の優秀な人財を確保したい場合、少人数のチームやパイロット プロジェクトに関するコンプライアンス リスクを軽減したい場合などです。Workday を導入している多くの企業は、市場参入の初期段階で EOR を活用し、その後は、定義済みの手順に基づいて、現地法人の設立へと移行しています。
雇用主代行業者を利用する主なメリットは何ですか?
EOR には、自社で現地法人を設立する場合と比べて、新しい市場への迅速な参入、コンプライアンス対応業務の簡素化、初期コストの削減、柔軟な事業拡大などのメリットがあります。また、EOR の運用を Workday と組み合わせることにより、あらゆる雇用形態にわたるデータの表示と管理を一元的に行うことができます。