ATS と CRM の比較: 採用プロセスと関係管理プロセスに最適なシステムを選択する方法
採用管理システム (ATS) は、採用プロセスを管理するためのシステムで、顧客関係管理 (CRM) プラットフォームは、ビジネス上の関係を管理するためのプラットフォームです。ただし、採用チームも、候補者へのアプローチや関係構築のために CRM の機能を使用する場合があります。このガイドでは、ビジネスリーダーはどのような場合に ATS や CRM を使用するのか、ATS や CRM を人財戦略でどのように活用するのかについて説明します。
ATS と CRM の比較: ビジネスリーダーが理解しておくべきこと
たとえば、営業部長が、現在募集中のエンジニア職につ適した優秀な人財を紹介してくれたとします。営業チームは、3 年間にわたる関係データを CRM で管理しています。採用チームは、紹介された人財を ATS で候補者として管理したいと考えています。この場合、同じ人財との関係を 2 つのシステムで管理することになるため、両方のシステムで機会を逃してしまう可能性があります。
成長企業の場合、こうした状況は頻繁に発生します。それぞれ異なるツールを各チームが使用している場合、ビジネスニーズが重複すると、チーム間で不一致が発生します。ATS と CRM をどのように使い分けるべきかを理解するには、単にソフトウェアの機能を比較するだけでなく、社内の関係性の構造に合わせて、テクノロジー スタックを整備する必要があります。
このガイドでは、採用プロセスと関係管理プロセスを処理するためのテクノロジーについて、ビジネスリーダーがさまざまな情報に基づいて適切な意思決定を行うための重要事項について説明します。
重要なポイント:
ATS の定義と役割: 採用管理システムは、求人掲載から入社手続きまでの採用ワークフローをどのように効率化するのか
CRM の定義と役割: 顧客関係管理プラットフォームは、長期的なビジネス関係の構築とパイプラインの開発をどのように促進するのか
システムの重複領域: 現在の人財獲得戦略において、どのような ATS 機能と CRM 機能が重複するのか
選定基準: スタンドアロン型システムと統合型プラットフォームを検討する際に、どのような基準で評価すべきか
- 戦略的なタイミング: この比較が、人財プロセスの改善に取り組むスタートアップ企業、成長企業、大企業にとってなぜ重要なのか
ATS と CRM とは
採用管理システム (ATS) は、求人掲載、応募受付、面接、内定に至るまでの採用プロセス全体を管理するための仕組みで、顧客関係管理 (CRM) プラットフォームは、顧客/見込み客/候補者との関係を数か月から数年にわたって継続的に構築していくための仕組みです。両者の最も大きな違いは、その目的にあります。ATS は、採用プロセスにおいて人財を支援することに重点を置いているのに対し、CRM は、長期的な関係構築とパイプラインの育成に重点を置いています。
ATS と CRM の進化
ATS プラットフォームは、1990 年代に基本的な履歴書データベースとして始まり、その後は包括的な採用ワークフロー システムへと進化しました。CRM ソフトウェアは、営業チーム向けの連絡先管理ツールとして始まり、その後は、さまざまな業種で使用される包括的な関係管理自動化プラットフォームへと進化しました。
現在では、採用活動において ATS と CRM の両方が使用されるケースが増えています。先進的な企業は CRM 機能を活用して、候補者との関係構築や人財パイプラインの開発に取り組んでいます。ATS プラットフォームには、従来の採用管理機能を超える関係構築機能が組み込まれています。
ATS と CRM の比較
AI と ML の機能を理解することにより、どちらが自社のビジネスニーズに適しているかを適切に判断できるようになります。ATS と CRM には共通する機能もありますが、主要な機能については、ビジネスの目的やユーザーのワークフローに合わせて設計されています。
ワークフローとパイプラインの管理
ATS では、「応募 > 選考 > 面接 > 内定 > 採用」という直線的なプロセスとして採用業務が管理されます。プロセスの各段階で、明確なアクションと成果が定義されています。CRM では、時間の経過とともにエンゲージメント レベルが変化していく周期的な関係性が管理されます。営業チームは、「認知」「検討」「決定」という段階を通じて見込み客との関係を構築していきますが、このプロセスは複数の機会にわたって繰り返されることがあります。
コミュニケーションとエンゲージメントの追跡
ATS では、構造化された候補者管理システム内で、採用に関する意思決定を中心にコミュニケーションが行われます (面接日程の調整、フィードバックの収集、内定交渉など)。CRM の場合、広範囲にわたる関係履歴が追跡されます、たておば、数か月から数年にわたり、会議、電話、メールなどによるやり取りが追跡されます。CRM は、長期的な営業サイクルや継続的なビジネス関係において、その背景情報を維持することに優れています。
データと分析機能
ATS の分析機能では、採用までの期間、採用コスト、採用の効果、候補者エクスペリエンスに関する指標など、採用プロセスの効率化に重点が置かれています。CRM の分析機能では、商談の進捗状況、顧客との接触頻度、収益への貢献度、顧客の生涯価値など、関係性に基づく成果に重点が置かれています。どちらのシステムにもレポート機能が用意されていますが、レポート機能で対処できるビジネス上の課題はそれぞれ異なっています。
自動化機能と連携機能
ATS プラットフォームを介して採用プロセスを自動化すると、応募確認、面接に関するリマインダー、紹介情報の確認など、採用に関する反復的な作業が効率化されます。CRM の自動化機能を使用すると、一連のメール配信、フォローアップのリマインダー、エンゲージメント スコアリングなどを通じて、強固な関係を構築することができます。連携機能については、ATS と CRM では大きく異なりますが、大規模なプラットフォームには、さまざまな連携オプションが用意されています。
人財調達と関係構築
従来の ATS プラットフォームでは、応募情報や候補者との基本的なやり取りを管理します。CRM システムは、積極的なアプローチ、関係性の可視化、長期的なエンゲージメント戦略において優れています。最近は、CRM の機能を活用して、候補者パイプラインの構築や候補者との関係管理を行う採用チームが増えています。これにより、募集中の役職を超えた採用活動が可能になります。
ご存知でしたか?
多くのビジネスリーダーが、AI への投資拡大を通じて、業務効率化のニーズに応えようとしています。調査対象となったエグゼクティブの 92% が、「今後 3 年間で AI への投資を増やす予定である」と回答し、そのうちの 55% が、「現在の水準から 10% 以上の投資増を見込んでいる」と回答しています。
ATS と CRM のどちらを選ぶべきか、あるいは両方を選ぶべきか
適切な選択を行うには、単に機能を比較するだけではなく、ビジネスの現状に合わせてシステムの機能を検討する必要があります。自社の採用規模、チームの体制、ビジネスの成長計画を考慮した上で、どちらのプラットフォームを導入するかを判断してください。
人財獲得チームの場合
専任の採用チームが、明確な段階や期限が設定されている体系的な採用プロセスを管理する場合、ATS のような人財獲得に特化したツールを導入するのが最適です。ATS を使用すれば、求人情報の掲載、応募書類の選考、面接プロセスへの移行などのワークフローが効率化されます。
採用プロセスの効率化を最優先する場合は、ATS を選択することをお勧めします。10 〜 50 件程度の欠員補充を担当する小規模な採用チームの場合、基本的な ATS 機能で十分に対応できます。数百件規模の欠員補充を担当する大規模な人財獲得部門の場合、候補者の一括処理機能、高度な分析機能、採用マネージャとのコラボレーション機能など、エンタープライズ向け ATS 機能が必要になります。
ただし、長期的な人財パイプラインの構築や、自発的な転職活動を行っていない候補者との関係構築を採用戦略に組み込んでいる場合、ATS だけでは不十分です。従来の ATS では、長期的な関係構築や先を見据えた人財調達活動に対応することはできません。
営業活動やビジネス上の関係構築を重視する場合
営業活動が中心となる部門の場合は、CRM の機能を使用して、見込み客の関係管理と収益予測を行います。最近は多くの企業が、CRM の機能を活用して、自発的な転職活動をしていない候補者へのアプローチや人財コミュニティの構築を行っています。
採用活動と営業活動の手法が似ている場合は、ATS よりも CRM の方が適しています。この場合、候補者 (見込み客) を特定し、長期にわたって関係を構築するというアプローチになります。このアプローチは、専門性の高い職種や経営幹部レベルの役職での採用活動や、関係構築が成功の鍵となる競争の激しい人財市場において、特に効果的です。
成長企業が両方を必要とする場合
成長を続ける企業の場合、最終的に ATS と CRM の両方の機能を持つ統合型プラットフォームが必要になることがよくあります。多くの場合、「関係構築の段階から正式な応募プロセスに移行するまでの間に候補者を逃がしている」と気づいたときに、採用業務で CRM を活用すべきか、それとも ATS に移行すべきかを検討することになります。
CRM での候補者発掘から ATS での選考プロセスにシームレスに移行できる場合は、CRM と ATS を併用するのが最適な方法です。ネイティブな連携機能や統一されたソリューションが組み込まれているプラットフォームを導入すれば、データのサイロ化を防ぐことができます。
成長企業は、将来的な採用規模の拡大を考慮してシステムを評価する必要があります。たとえば、今後 2 年以内にチームの規模を 2 倍に拡大することを計画している場合は、それに合わせて拡張可能なシステムを導入する必要があります。
ATS と CRM の比較: 実際のコスト
採用業務や人事業務に関するテクノロジーの予算を計画する場合は、月額のサブスクリプション料金だけでなく、それ以外の要素も考慮する必要があります。総所有コストを評価する場合は、導入にかかる時間、トレーニング費用、継続的なサポート費用も考慮する必要があります。
サブスクリプション料金体系
多くの ATS では、1 ユーザーあたりの月額料金制が採用されており、機能の複雑さや企業規模に応じて料金プランが異なります。基本プランの場合、主要な採用管理機能に重点が置かれていますが、エンタープライズ プランの場合、高度な分析機能やワークフローの自動化機能なども使用することができます。
CRM の場合も、ATS と同様にユーザー単位の料金体系が採用されていますが、顧客関係管理機能に重点が置かれている点が異なっています。エントリーレベルのプランでは、基本的な連絡先管理機能やコミュニケーション ツールを使用でき、プレミアム プランでは、自動化機能や高度なレポート機能を使用することができます。
多くの場合、ATS と CRM が統合されたプラットフォームは単体のシステムよりもコストが高くなりますが、ライセンス料金の支払いが重複することはなく、システム統合の費用も必要ないため、両方の機能が必要な企業にとっては、結果的に費用対効果が高くなることがよくあります。
導入とサポートのコスト
導入時の初期費用は、システムの複雑さやカスタマイズの要件によって異なります。簡単な導入の場合は、最小限の初期費用で済みますが、独自のワークフローを使用する大規模な導入の場合は専門的なサービスが必要になるため、コストが大幅に増えます。
トレーニングは重要な要素ですが、その費用を低く見積もってしまうことがよくあります。ユーザーのオンボーディング、ワークフローのカスタマイズ、継続的な学習にかかる時間も考慮する必要があります。多くのベンダーが基本的なトレーニングを提供していますが、包括的なチェンジ マネジメントを行うには、追加の投資が必要になります。
継続的なサポート費用としては、システムのメンテナンス費用、アップデート費用、ユーザー サポート費用などがあります。多くのベンダーが、サブスクリプション料金に基本的なサポートを含めていますが、優先的な対応や専任のアカウント管理が必要な場合は、通常、追加の投資が必要になります。
中小企業がコストについて考慮すべきこと
中小企業が採用ソフトウェアを評価する場合は、機能の豊富さではなく、本当に必要な機能が揃っているかどうかを重視する必要があります。高度なエンタープライズ向け機能が用意されていても、使用しなければ意味がありません。求人情報掲載機能、候補者追跡機能、基本的なレポート機能など、重要な機能を優先することが重要です。
予算だけでなく、導入に必要な社内リソースも考慮する必要があります。IT リソースが限られている企業の場合、大規模なカスタマイズが必要になる包括的なシステムよりも、設定作業と導入作業が最小限で済むプラットフォームの方が適しています。
また、最も安い月額料金だけで判断するのではなく、数年単位での総所有コストを考慮することが重要です。プラットフォームを切り替える場合、データ移行、トレーニング、生産性低下などのコストが発生しますが、これらのコストの合計額が、安価なサブスクリプション料金による節約額を上回る可能性があります。
ATS と CRM プラットフォームは連携できるか?
ビジネスが成長すると、ほとんどの組織は ATS と CRM の両方が必要になります。ここで重要なのは、「これらのシステムを連携させるべきかどうか」ではなく、「データのサイロ化やワークフロー上のボトルネックを発生させることなく、どのようにこれらのシステムを効果的に連携させるか」ということです。
以下に、3 つの主要な連携アプローチを示します。
ネイティブな統合型プラットフォームを使用する: この方法の場合、単一のアーキテクチャ内で機能が統合され、データ同期の問題が解決します。
- API ベースの接続機能を使用する: この方法の場合、個別の専用システムを連携させることができますが、技術的なメンテナンスを継続する必要があります。
- ミドルウェアを使用する: この方法の場合、複雑なレガシー システム間でデータ交換を行うことができます。
すべてのアプローチに共通する課題は、複数のプラットフォーム間でデータの整合性を維持するのが難しいということです。プラットフォーム間の連携が不十分な場合、データの重複が発生したり、プラットフォーム間の通信でミスが発生したり、関係に関する情報を正しく把握できなかったりすることがあります。
統合型プラットフォームの Workday を導入すれば、人財獲得プロセスを広範な人材管理エコシステムに統合することができます。これにより、共通のデータ モデルとセキュリティ フレームワークを共有する単一の統合プラットフォーム上で、候補者との関係構築、採用ワークフロー、社員の育成を管理できるようになります。個別のツールを連携させる必要はありません。データを一元管理するこのプラットフォームには、専用ツールに接続される 600 以上の連携機能が組み込まれています。
プラットフォーム選定の初期段階で、プラットフォーム間の連携を検討することが重要です。後からシステムを追加する場合、連携を前提として設計されたシステムを選ぶ場合と比べて、コストが大幅に高くなります。今後 3 〜 5 年間における採用規模の拡大見込みや必要な技術要件を考慮して、評価を行うことが重要です。
Workday による採用プロセスの統合
独立した CRM とは異なる Workday を導入すれば、採用プロセス、関係管理、ワークフォース プランニングがひとつのシステムに統合されます。
この統合アプローチにより、接続されていないシステム間で候補者との関係を管理することが難しいという課題が解決します。Workday を使用すれば、個別のプラットフォームを切り替えることなく、人財獲得プロセスを広範な人財戦略と社員ライフサイクル管理プロセスに関連付けることができます。
Workday のプラットフォームは、従来の応募者の追跡だけでなく、人財コミュニティの構築、自発的な候補者へのアプローチ、長期的な関係管理にも対応しています。採用プロセスが、スキル データ、社内異動データ、後継者育成計画に結び付けられるため、同じような役割について、社外の候補者と社内の人財の両方を検討することができます。
AI により、採用テクノロジーが大きく変化しています。Workday の HiredScore AI for Recruiting は、AI による人財調達戦略の変革、長期的なスキル要件、ダイバーシティに関する目標を考慮しながら、人財エコシステム全体にわたって候補者マッチング処理を自動化します。人財のライフサイクル全体にわたって分析機能を使用できるため、採用活動への投資やワークフォース プランニングに関する戦略的な意思決定を行うことができます。
ATS と CRM をそれぞれ個別のソリューションとして導入することを検討している企業は、Workday の統合的なアプローチを使用して、人財獲得を広範な人財戦略に組み込むことができます。この統合的なアプローチについては、Workday タレント マネジメントの仕組みを参照してください。
ATS と CRM の比較: ニーズに合わせて選ぶ
ATS、CRM、統合型プラットフォームのどれを選択するかは、採用活動の規模と戦略的な目標によって異なります。小規模なチームの場合、通常は、基本的な ATS 機能で十分に対応できます。候補者との長期的な関係構築を重視する場合は、CRM の機能が高い価値を発揮します。
成長企業の多くが、最終的に ATS と CRM の両方の機能が必要になります。統合型プラットフォームを導入すれば、データのサイロ化を解消して人財パイプラインを包括的に可視化し、採用プロセスを広範なワークフォース戦略に関連付けることができます。統合型システムを導入している企業では、採用期間の短縮、候補者エクスペリエンスの改善、社内人財の流動性の向上などの成果が確認されています。
採用テクノロジーは、単独で機能するものではありません。このテクノロジーは、人財戦略の構成要素です。現在の課題に対処するだけでなく、今後 3 年から 5 年にわたって規模を拡大できる採用テクノロジーを導入する必要があります。