クラウド コンピューティング ERP について理解する
ERP をクラウドに移行すると、物理サーバーを維持・管理する必要がなくなるだけでなく、常に最新のデータにアクセスできます。各チームはオンプレミス サーバーを使用することなく、意思決定を迅速に行い、プロセスを拡張できます。このガイドでは、クラウド ERP のメリット、導入に伴う共通の課題、主な導入ステップ、Workday ERP が個々のステップを支援する方法をご紹介します。
クラウド ERP: エンタープライズ システムの新時代
リモートワークや市場の急激な変化が日常化する中、断片化されたシステムは時代の流れに取り残されています。次世代プラットフォームを検討しているリーダーは、クラウド ERP を導入することで、現代の企業が求めるアジリティとアクセス性を確保できます。
重要なポイント:
- クラウド ERP は主要な計画業務やオペレーションを拡張性の高いオンライン環境に移行することにより、チームがオンサイト サーバーに依存する必要性をなくします。
- チームはワークフローの統合、定型業務の自動化、シームレスなリモート コラボレーションを実現し、変化にすばやく対応できるようになります。
- 従来のオンプレミス システムは、データのサイロ化、ビジネスにおけるセキュリティ リスク、高額なメンテナンス コストなどの課題を内包しています。
- クラウド ERP システムは、アップデートを自動的に実行し、グローバル企業のニーズに合わせて柔軟に拡張できます。
- Workday クラウド ERP は、財務と人事をひとつのデータ モデルに統合し、一貫性の高いリアルタイムな可視性を全社規模で実現します。
Workday クラウド ERP プラットフォームに移行したコロラド州デンバー市郡は、23 台のサーバーを統合クラウド環境に集約し、紙ベースの処理を 75% 以上削減するとともに、給与計算の処理時間を 25% 短縮しています。
クラウド ERP がこれまで以上に重要になっている理由
従来の ERP システムでは、オンプレミス サーバーの稼働を維持するため、サーバー、ストレージ、IT チームに多額の資金を投じる必要があります。このような環境は柔軟性に欠けるため、組織がビジネス環境やニーズの変化にすばやく適応することを困難にします。
クラウド ERP ソフトウェアは従来の ERP システムと大きく異なります。セキュリティや機能を改善・強化するアップデートが継続的かつ自動的に提供されるだけでなく、導入当初から組織のニーズに基づいて ERP システムを柔軟に設定できます。適応性の高いクラウド基盤により、事業の成長に合わせてモジュールを容易に拡大・変更できるため、ビジネスニーズの変化に柔軟に対応できます。アジリティや分散型チームへの対応が求められる今日、クラウド ERP は主要な戦略的要件であるスピード、透明性、統合性を実現します。
クラウド ERP とオンプレミス ERP の比較
オンプレミス ERP と異なり、高額なサーバーのメンテナンスやアップグレードのスケジューリングといった負担をなくすため、組織はクラウド ERP にメリットを見出しています。オンプレミス ERP では多額の初期投資や長いアップデート サイクルが伴いますが、クラウド ERP ではサブスクリプション モデルを活用してコストを平準化し、新機能を速やかに活用できます。次のアップデートまで待つ必要はありません。企業はクラウド ERP を導入することにより、オンデマンドで規模を拡張し、最新データに瞬時にアクセスし、他の SaaS ツールとの連携をシームレスに実現しています。
両者の具体的な相違点は以下のとおりです。
デプロイ速度
クラウド ERP
ベンダーが環境を整備するため、数週間で本番稼働を開始できる。
オンプレミス ERP
ハードウェアの調達、ソフトウェアのインストール、テストが必要になるため、デプロイに数か月かかる。
コスト構造
クラウド ERP
予測可能な月額料金。
オンプレミス ERP
ライセンスやサーバーに多額の初期投資が必要になる。
アップデート サイクル
クラウド ERP
ほぼダウンタイムなしで自動的にアップデートされる。
オンプレミス ERP
IT チームが大規模なアップグレードを計画的に実行する必要がある。
アクセシビリティ
クラウド ERP
インターネットに接続されていればあらゆるデバイスからアクセスできる。
オンプレミス ERP
通常は社内ネットワークからのアクセスに制限されるか、複雑な VPN 環境が必要になる。
統合の柔軟性
クラウド ERP
SaaS アプリに接続可能な API やコネクタが組み込まれている。
オンプレミス ERP
データを同期するためには通常、カスタム コーディングやバッチ インポートが必要になる。
セキュリティとコンプライアンス
クラウド ERP
ベンダーがパッチ、ファイアウォール、認証 (SOC、ISO など) を管理する。
オンプレミス ERP
社内の IT チームがサーバーのセキュリティやコンプライアンス対応を管理する。
クラウド ERP システムのメリット
クラウド ERP システムのメリットを活用する企業は、ライブ データに瞬時にアクセスし、事業の成長に対応する柔軟性を確保できます。継続的なアップデートやモバイル対応のダッシュボードを活用することで、ハードウェアの管理やバッチ インポートなどの負担を排除できます。新たな業務のあり方を実現するため、今日のビジネスリーダーはクラウド ERP を選択しています。主なメリットを以下にご紹介します。
間接費用の削減
ERP をクラウドに移行することで、IT コストをあらゆる側面から削減できます。たとえば、クラウド ERP の導入は通常数週間で完了するのに対し、オンプレミス システムでは数か月かかります。これはコンサルティングに費やす時間や IT チームの時間外勤務の削減につながります。パッチの適用、バックアップ、アップグレードは、ベンダーがバックグラウンドで行うため、業務時間外のメンテナンスや人員追加の負担を軽減できます。サーバーの購入や電力供給が不要になるため、予算や人材を収益拡大につながるプロジェクトへ振り向けることができます。
さらにクラウド ERP システムは、給与計算処理や財務分析などを自動化することにより、労働時間を節約します。
「Workday を使用すると、従業員の推薦状や住宅ローン申請書類などの作成を自動化できます。以前はこのような処理を管理チームが行っていました。— Centrica 社、英国給与計算コンプライアンス担当マネージャ、Tracey Tomkins 氏
予測可能なサブスクリプション ベースの価格設定
クラウド ERP は、不定期に発生する高額な設備投資を、オールインワンのサブスクリプション料金に置き換えます。毎月のコストが一定に保たれるため、財務チームはキャッシュフローの予測が容易になるほか、予定外のアップデートやハードウェア故障といった不測のコストを回避できます。
支出を資本支出から運用費へと移行することで、税金の計算を簡素化することもできます。資本支出として処理する場合、計算は複雑になります。資産を資本化した上で、IRS の減価償却スケジュールに従い、複数年にわたって控除を分散させなければなりません。サブスクリプション料金は運用費として処理できるため、料金を支払った年度の費用として全額を控除できます。
リアルタイム インサイトでスマートな意思決定を実現
クラウド ERP はデータを単一のリアルタイム ダッシュボードに集約します。これにより、財務チームは売上の急増などをリアルタイムに把握し、予測を数分で更新できます。オペレーション チームはボトルネックを迅速に特定し、ワークフローの調整を行い、業務の流れを維持できます。組み込みの分析機能は潜在的な問題を可視化するため、リーダーは必要に応じて What-If 分析を実行し、あらゆる意思決定を最新のデータに基づいて行えます。
「財務チームは現在、企業の戦略的アドバイザーと位置付けられています。データを異なる視点で捉えることで、見逃しがちな機会や、今後直面する課題についてインサイトを得ることができます」
— ERPA Group 社、財務計画・分析担当バイス プレジデント、Holley Smith 氏
あらゆる SaaS システムとシームレスに連携
クラウド ERP は組織のテクノロジー スタック全体とシームレスに連携するよう設計されています。新しいデータが取り込まれると、オープン API やプリビルド コネクタを通じてツール (CRM、E コマース、給与計算、分析など) との同期がリアルタイムに実行されます。たとえば Web ストアで注文を行った場合、注文内容は財務システムに直接送信され、予算レコードやキャッシュフロー レコードが自動的に更新されます。チームは必要に応じてすべてのデータを一元的に確認できるため、ミスを削減し、あらゆるワークフローを加速できます。
ビジネス需要に応じて瞬時に拡張
クラウド ERP は極めて柔軟性が高く、あらゆる規模の企業にメリットをもたらします。クラウド ERP は、ユーザー アクセス、ストレージ、処理能力、モジュールなど、ニーズに合わせて必要なものだけを初期設定時に選択できます。その後、必要に応じて規模を縮小することも、機能を追加することもできます。現在の設定に影響が及ぶことはありません。
「柔軟性の高いクラウド インフラを確保することは、プラットフォームの負荷に応じて規模を拡大できることを意味します。
— Kainos 社、Workday プラクティス担当最高技術責任者、Damien Taylor 氏
クラウド ERP 導入の成功を阻害する潜在的課題
クラウド ERP はスピードと柔軟性をもたらしますが、レガシー システムからの移行には通常、いくつかの課題が伴います。共通の課題とその対策方法をご紹介します。
企業によってはコストが高額になる
現時点で必要のないモジュールが契約に含まれる場合、クラウド ライセンスはオンプレミス環境と比べて割高に感じられる可能性があります。一部のクラウド ERP システムは大企業向けに設計されているため、予算が限られている小規模なチームには実用的でない場合があります。
要件に合わせてユーザー数や機能を選択できるベンダーを選ぶことで、不要な機能への支払いを回避し、必要に応じて後から機能を追加できます。ソフトウェアを四半期ごとに見直すことで、予算やビジネスニーズに即した環境を維持できます。
インターネット接続への依存度が高い
クラウド ERP はブラウザ上で動作するため、インターネット接続が途切れた場合、受注、承認、給与計算、分析などに影響が及ぶ可能性があります。たとえば倉庫でピッキング リストを印刷できなくなったり、財務チームが四半期途中の決算処理を中断せざるを得なくなったりする場合があります。
システムの稼働率を維持するには、バックアップ用の ISP を確保し、通信遅延を監視するようにします。また、ベンダーのサービス品質保証契約に障害発生時の罰則規定、対応時間、対処手順が明記されていることを確認します。
習得に時間がかかる
長年古いシステムを利用してきたユーザーは、新しいシステムが直感的に操作できるよう設計されていても、慣れるまでに時間がかかる可能性があります。ユーザーが操作に苦慮する場合、新しいシステムに依存するあらゆる業務の効率は低下します。このような課題に対応するには、役割ごとに短時間のトレーニング セッションを実施し、追加のサポートが必要なユーザーには経験豊富なメンターを割り当てます。また、新しい機能やプロセスを導入する場合は、オープンなコミュニケーションや定期的なフィードバックを通じて常にチーム全体と情報を共有するようにします。
ベンダーが機密データにアクセスする
クラウド ERP ではシステム全体の管理をベンダーが行います。これはアップデートや修正面においては便利ですが、組織のデータを第三者に預けることを意味します。データ侵害や不正利用が発生すると、規制上の罰金や評判の低下を招く恐れがあります。
セキュリティ リスクを軽減するには、厳格で検証可能なセキュリティ基準を定めており、透明性の高いコンプライアンス レポートを提示しているベンダーを選択します。たとえば Workday は、毎年 SOC 1 Type II および SOC 2 Type II の監査を受けており、GDPR、ISO 27001 を含め、多数のグローバル セキュリティ基準を遵守しています。さらにセキュリティ レポートやアクセス ログを監視・管理する担当者を社内に割り当てることで、セキュリティを一層強化できます。
クラウド ERP 導入のベストプラクティス
クラウド ERP の導入を成功させるためには、明確なロードマップと規律あるチェンジ マネジメントが欠かせません。ビジネス ケースの策定からチームのトレーニングに至るまで、以下の詳細なステップを実践することにより、スケジュールや予算を遵守しながら本番稼働を開始できます。
1.明確かつ測定可能なビジネス目標を設定する
プロジェクト計画を策定する前に、達成したいビジネス成果を定義します。月末の決算処理時間を 2 日短縮する、IT チームのサポート コストを年間 20 万ドル削減するなど、具体的な指標を設定します。現在のベースラインを記録し、各目標の達成期限を設けることで、進捗を容易に追跡できるようにします。
2.現在のデータ、プロセス、システム連携を可視化する
詳細なワークフロー マップを作成することにより、ERP とデータをやり取りするシステムをすべて可視化し、再設計すべきプロセスと現状のまま移行するプロセスを特定します。財務、人事、サプライチェーン、カスタム アプリのデータ項目、責任者、問題点を文書化することで、ワークフローに潜む複雑さを明らかにし、各プロセスの影響範囲を明確に把握できます。
3.拡張性の高いクラウド ERP を選定し、ベンダーを詳細に評価する
成長への対応力、オープン API、セキュリティ認証、リリース頻度といった観点から複数のプラットフォームを評価します。紹介を通じて同業種の顧客から意見を聞き、具体的なデモを活用してシステムが期待に合致するか確認します。トップクラスのベンダーは実際のワークフローを使って概念実証を実施するため、プラットフォームの機能を事前に検証できます。
4.エグゼクティブの支援を確保し、変革を推進するチームを編成する
導入時の障害を取り除き、あらゆるチームの優先事項を統一できる経営幹部レベルのスポンサーを選定します。この役割は導入プロジェクトを主導し、計画を着実に進め、導入時に発生する問題や変更点を周知させます。スポンサーをサポートするため、財務、人事、IT、オペレーションのリーダーによって構成された部門横断型のチームを編成します。このチームが日々の意思決定を担い、全社的な目標との整合性を維持します。新しいシステムについて何をどう伝えるべきかを明確に理解することで、現場のマネージャは全社会議やチーム ミーティングを通じてビジョンを周知させることができます。
5.データをクレンジングし、システム連携を計画する
予測、給与計算、ベンダーへの支払いは、正確なレコードがなければ成り立たないため、クリーンなデータは欠かせません。データ品質スキャンを実行し、重複、不要なエントリ、命名の不一致、エラーを特定し、クリーンなデータセットのみを新しいシステムに移行します。ソース システムから ERP までのデータの流れを追跡し、安全な API エンドポイントを経由させます。このエンドポイントはすべてのトランザクションを検証・記録した上でデータをクラウドに取り込みます。
6段階的な試験運用と役割ベースのトレーニングを実施する
単一のビジネス ユニットから導入を開始するなど、クラウド ERP を段階的に導入することにより、実際のワークロードに基づいて設定を検証できます。導入フェーズごとにユーザーからフィードバックを収集することで、ワークフローの調整を行い、必要に応じて以降のフェーズに変更内容を適用できます。個々の導入フェーズをスムーズに進めるため、導入指標とエラー率が定義済みの閾値を満たした場合にのみ、次のフェーズへ進むようにします。
7.導入後の KPI を追跡し、継続的に改善する
クラウド ERP システムの導入以降も継続的に進捗状況を測定することで、プラットフォームが組織の期待に応え、市場環境やビジネス目標の変化に適応しているか確認することができます。決算サイクル タイム、システム遅延、普及率、データ品質など、重要な指標を追跡するダッシュボードを設定し、本番稼働プロセス全体を通してチームが週単位で結果を確認するようにします。軽微な修正が必要な場合は直ちに修正し、大規模な改善が必要な場合はリリース計画に組み込んで対処します。
クラウド ERP で未来を見据える
クラウド ERP は基幹システムを柔軟なリアルタイム プラットフォームへと転換し、財務・人事・オペレーション データが常に同期されるようにします。拡張性の高いシステム上でリアルタイム データや自動アップデートを活用することにより、成長企業は硬直的なオンサイト ツールを使用する競合他社に先駆けて行動を起こすことができます。次世代の ERP は戦略を形成します。Workday で企業計画を実践に移しましょう。