最新AI活用データが示す、日本の職場における人と人とのつながり
職場におけるAI活用と人間関係に関する最新調査によると、AIが従業員の業務生産性と自信を高めている一方で、孤独感の兆しも高まっています。
Workday スタッフ ライター
職場におけるAI活用と人間関係に関する最新調査によると、AIが従業員の業務生産性と自信を高めている一方で、孤独感の兆しも高まっています。
Workday スタッフ ライター
Workdayがグローバル企業の従業員を対象に実施した、職場におけるAI活用と人間関係に関する最新の市場調査「Workday Human Connection Workplace Index」から、日本の職場におけるAI活用の特徴が浮き彫りになりました。特に、AI活用による「成果の実感(将来の仕事に対する自信)」や「業務相談・ブレストでの積極的な利用度」において、日本は世界最高水準にあることが分かっています。。。その結果は際立っています。日本の従業員の90%が「AIによって生産性が高まったと感じる」と回答し、76%が「AIによって将来の職務で成功できるという自信が高まった」と答えています。この「自信の高まり」は全対象国の中で最も高い水準であり、グローバル平均の64%を大きく上回るものです。。
AI投資の費用対効果を検討するCHRO、CFO、CIOといった経営陣にとって、これは明確な追い風となります。しかしながら、本調査は同時に、経営陣がそれと同等に注視すべき「職場における孤独感の高まり」という課題も浮き彫りにしています。AIがもたらす「生産性の向上」と「人間関係の希薄化」という相反する事象を正しく理解することこそが、日本において持続可能なAI戦略を描くうえでの出発点となります。
| テーマ | 日本 | グローバル |
|---|---|---|
| AIによって自身の業務生産性が高まったと感じる | 90% | 86% |
| AIによって将来の職務で成功できる自信が高まった | 76% | 64% |
| アドバイスを得るためにAIを利用した | 89% | 76% |
| ブレインストーミングにAIを利用した | 66% | 52% |
| 業務上のやり取りを超えた会話を同僚とほとんど、あるいは全く行わない | 28% | 33% |
| 職場で親しい友人を作ることが容易、またはやや容易である | 52% | 46% |
| 孤独や孤立を理由に休暇を取った | 21% | 14% |
| 話し相手としてAIを利用した | 29% | 37% |
| AIの利用を開始してからストレスやバーンアウトのリスクが低下した | 61% | 62% |
レポート
日本の従業員はAIを幅広く活用し、確かな手応えを感じています。AIは業務スピードの向上や情報検索の効率化、新たな問題解決の糸口となるだけでなく、従業員が将来の仕事に対して自信を持つための後押しにもなっていますす。生産性の向上や業務余力の創出、そして長期的な競争力の強化を経営課題とする日本企業において、これは極めてポジティブな成果だと言えます。
テルモ株式会社は、その具体的な成功例の一つです。同社は、変化の激しい経営環境に即応できる財務計画プロセスの構築を目指すなかで、極めて複雑な製品ポートフォリオの予測業務に柔軟性(アジリティ)を持たせる手段としてWorkday Adaptive Planningを採用しました。
同社CFO兼CIOの萩本 仁氏は、次のように述べています。「キックオフからわずか2か月で、Workday Adaptive Planning を活用したフォーキャスト(見込み)PL の作成を実現できました。さらに、日々変化するマネジメント要件に柔軟に対応できる機動性と拡張性、5万件を超える SKU を対象に毎月のローリングフォーキャストを行えるパフォーマンスが、Workday Adaptive Planning の採用を決めたポイントです」
テルモの事例は、今回の調査が示すマクロな傾向を象徴しています。つまり、AIや最新のプランニングツールを戦略的に活用することで、日本企業は経営判断に求められる厳密さを保ちながら、変化に対応するスピードと自信を同時に獲得できるということです。
「AIに気軽に相談できるようになるなかで、企業は、信頼、帰属意識、そして判断力を築く小さな人と人との交わりを、仕事の進め方の中にどのように残していけるのでしょうか」
一方で、AIによる生産性向上は、組織マネジメントにおける新たな課題も浮き彫りにしています。AIは、仕事上のあらゆる「摩擦」を取り除くことに長けています。疑問点の解消、文書の草案作成、アイデアの検証、さらには困難な対話に向けたシミュレーションなどを、AIは驚くほど手軽にしてくれます。しかし本来、職場で信頼関係が構築される瞬間の多くは、まさにこうした「摩擦」の中に存在しています。同僚への相談、チームでのブレインストーミング、率直なフィードバック、意見の対立とすり合わせ――これらすべてが人間関係を深めるプロセスです。。
日本企業において、効率化と摩擦のバランスをとることは特に重要です。日本の従業員はAIを単なる効率化ツールとしてだけでなく、思考のパートナーとしても活用しています。過去12カ月間に「アドバイスを得るためにAIを利用した」と回答した割合は89%(グローバル平均76%)、「ブレインストーミングにAIを利用した」は66%(同52%)に上ります。こうしたAIの積極的な活用は、業務のスピードアップと手作業の大幅な削減をもたらすでしょう。しかし同時に、経営陣(CHRO、CFO、CIO)は大きな問いに向き合う必要があります。それは、「AIという優秀なアシスタントが身近になる中で、組織の基盤となる『人と人との関わり』を、いかにして日々の業務プロセスに組み込み維持していくか」ということです。。
日本の職場における「つながり」に関するデータを見ると、いくつかの項目でグローバル平均を上回る良い傾向が見られます。「業務上の事務的なやり取り以外で、同僚と会話をほとんど(あるいは全く)しない」と答えた日本の従業員は28%にとどまり、グローバル平均の33%を下回っています。また、「職場で親しい友人を作るのが容易(またはやや容易)」と答えた割合も52%と、グローバル平均の46%を上回っています。
これは、日本の多くの職場が依然として良好なコミュニケーション基盤を保っており、日常的な協力体制やチームワークが仕事の中心にあることを示しています。こうした組織風土の強みは、今後AI導入をさらに推進していくうえで大きなアドバンテージとなります。ただし、職場の「つながり」は、単なる会話の頻度や表面的な関係の円滑さだけで測れるものではありません。経営陣やマネージャー層は、従業員が「気軽に助けを求められるか」「率直に意見を言えるか」「部門を超えた信頼関係があるか」、そして「困難な状況で同僚を頼れるか」といった、より深い心理的安全性の状態を的確に把握することが求められます。
こうした前向きなデータの一方で、見過ごせない課題も存在します。「過去12カ月間に、孤独や孤立を理由に休暇を取った」と答えた日本の従業員が21%に上り、グローバル平均の14%を大きく上回りました。これはオーストラリアや英国と並び、本調査において最も高い割合です。ここで注意すべきは、この結果を「従業員が人間関係をAIで代替しているからだ」と短絡的に解釈すべきではないという点です。「話し相手(コンパニオン)としてAIを利用したことがある」と答えた日本の従業員は29%(グローバル平均37%)にとどまっており、日本がグローバル平均を下回る数少ない指標の一つとなっています。つまり、AIの導入と孤独感の因果関係は、「テクノロジーが人間関係を奪っている」という単純な図式では説明しきれない複雑なものです。ここで注意すべきは、この結果を「従業員が人間関係をAIで代替しているからだ」と短絡的に解釈すべきではないという点です。「話し相手(コンパニオン)としてAIを利用したことがある」と答えた日本の従業員は29%(グローバル平均37%)にとどまっており、日本がグローバル平均を下回る数少ない指標の一つとなっています。つまり、AIの導入と孤独感の因果関係は、「テクノロジーが人間関係を奪っている」という単純な図式では説明しきれない複雑なものです。
日本特有の社会的背景を踏まえると、このデータには一層の注意を払う必要があります。日本政府が「孤独・孤立対策推進法」を施行したことからも分かる通り、社会的孤立はあらゆる世代における重大な社会課題として認識されています。内閣府が令和6年に実施した「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」でも、回答者の約40%が何らかの孤独感を経験していることが明らかになっています。
さらに、厚生労働省の『令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)』によるとによると、労働者の68.3%が自らの仕事や職業生活に関して強い不安、悩み、ストレスを感じていると回答しています。仕事のストレスと孤独は直接的にイコールではありませんが、この数値は日本の労働者が抱える心理的な負荷の大きさを表しています。こうした社会背景を考慮すれば、職場のつながりに関するデータを表面的な数字だけで判断するのは危険です。業務上は周囲と円滑にコミュニケーションをとっているように見える従業員であっても、内面では深い孤立感を抱えている可能性があるからです。
念頭に置くべきは、これらの傾向が「AIが労働者の孤独やストレスを引き起こしている」と結論づけるものではないということです。実際のところ、本調査によれば、AIは従業員がバーンアウト(燃え尽き症候群)を回避する助けになっています。日本の従業員の61%(グローバル平均62%)が「AIを使い始めてから自身のストレスやバーンアウトのリスクが低下した」と回答している事実がそれを示しています。経営陣にとってこの結果は、職場の人間関係が単なる「従業員満足度」の問題ではなく、直結する「経営課題」であることを再認識させるものです。孤独や孤立による休職は、労働力の低下や生産性の悪化を招き、組織の持続可能性に直接的なダメージを与えます。経営陣に求められるのは、AIによる生産性の向上が人間関係を希薄化させるのではなく、むしろ強化するよう、組織のデザインを見直すことです。
「日本のリーダーに求められる次なる課題は、AIが人間の力を強化し、仕事に意味をもたらす関係性を守る形で仕事を設計することです」
日本企業にとっての大きな機会は、AI導入を単なる「ツールの全社展開」で終わらせず、広範な人的資本戦略およびガバナンス戦略の中核に位置づけることにあります。理由は明確です。AIによる生産性の向上が持続可能な成果となるのは、「AIによって生み出された余力(時間とリソース)が何に使われているか」を組織が正確に把握し、信頼や責任感を育む「人と人との接点」を維持し続けた場合に限られるからです。
具体的には、経営陣や人事部門は次のようなアクションをとる必要があります。
特に日本では、「表面的な和」が背後にあるストレスや孤立感を覆い隠してしまうケースが多いため、以下のような指標を組み合わせてバランスよく状況を把握することが重要です。
これらを総合的にモニタリングすることで、経営陣(CHRO、CFO、CIO)は、単なる効率化の成果にとどまらず、AIが企業組織全体に与えるインパクトを評価するための共通指標(ガバナンスの枠組み)を手にすることができます。
日本におけるAI活用の次なるフェーズは、「不要な業務の摩擦を減らすためにAIをどう活用するか」という視点と、「信頼やイノベーションの源泉となる『人と人との関わり』をどう維持するか」という視点の両立にかかっています。先述のテルモの事例は、厳密なガバナンスとアジリティを両立させたAI導入の理想的な形を示しています。一方でWorkdayの調査データは、日本企業がすでに強固なコミュニケーション基盤を有しており、それを土台としてさらなる成長を目指せるという大きなポテンシャルを示しています。
日本の経営陣に課された使命は、AIを活用して従業員のパフォーマンスを最大化しつつ、仕事の意義を支える「人間関係」を保護するような業務プロセスを設計することです。効率化とコミュニケーションの維持は、もはや「成り行き」に任せるべきものではなく、「意図的な組織設計」を通じてともに築き上げていくべきものなのです。
調査方法
本調査は、Workday Foundationの委託により、Hanover Researchが2026年3月から4月にかけてオンライン形式で実施しました。回答者は合計2,150名、うち日本200名で、いずれも従業員3,500名を超える組織にフルタイムで雇用され、自らの業務で少なくとも週1回はAIを積極的に利用しているか、AIを利用する従業員を直接管理している方々を対象としています。
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