インポスター症候群の克服: AI 時代の新任リーダーを支援する
自信のなさを「インポスター症候群」と捉えてしまうと、環境の変化に伴う問題が見えなくなります。新任リーダーが必要としているのは、自信を持たせるための表面的なアドバイスではなく、内面を変えるためのサポートです。
Liz Pavese
職場心理学者
Workday
自信のなさを「インポスター症候群」と捉えてしまうと、環境の変化に伴う問題が見えなくなります。新任リーダーが必要としているのは、自信を持たせるための表面的なアドバイスではなく、内面を変えるためのサポートです。
Liz Pavese
職場心理学者
Workday
LinkedIn には、新しくリーダーになった人や、優れた成果を上げている人 (優秀な女性など) に向けて、同じようなアドバイスが繰り返し投稿されています。それは、「インポスター症候群を克服しましょう」というアドバイスです。
この言葉を繰り返すのはもうやめましょう。
「インポスター症候群」は、企業内でよく使われる恩着せがましい用語になっています。大きなプレッシャーがかかる不慣れな状況で誰もが抱く自信のなさを、環境や組織構造の問題ではなく、個人の心理的な欠陥として捉えてしまうのが、この用語の問題点です。経営幹部が、新任マネージャが抱えている悩みを本人の自信のなさとして捉えると、組織全体の現状が見えなくなる可能性があります。
これは自信の問題ではなく、新しい役割に対する正常な心理的反応です。リーダーという役割は、業務を効率化して戦略立案やリーダー業務に注力することを可能にする AI により、かえって難しくなることがあります。新任リーダーは、自分が提供する価値を十分に理解していない状況で仕事をしなければならないのです。
レポート
初めてマネージャになった人が苦労していると、多くのエグゼクティブは、粘り強さ、マネジメント スキル、自信が欠けていると考えてしまいます。企業は、新任マネージャに対する一般的な支援として、マネジメントの基礎を教えたり (実際には単純なチェックリストにすぎません)、表面的な励ましの言葉をかけたり、単発の EQ 研修を実施したりします。これらは役には立ちますが、最適な方法ではありません。
このアプローチが間違っているのは、技術的なスキルと心理的なアイデンティティの変化を混同している点です。
重大な転機において自信が揺らぐのは、自然な心理的反応であり、性格的な欠陥ではありません。自己評価の低いマネージャが「自分の能力に自信がない」と口にすると、会社は頻繁に、「何を改善すべきか」ではなく、「どういう人間になるべきか」(「もっと強く自己主張すべき」など) を本人に求めます。その結果、本来は状況の変化に対する通常の心理的反応にすぎないものが、本人にとっては「恥ずかしいこと」に感じられてしまいます。
また、チーム メンバーという役割から、状況を整えて成果を上げることが求められるリーダーへと役割が変わることにより、自分の価値を実感するよりどころとなっていた日常業務における具体的な成果を失ってしまったように感じます。
ここで登場するのが AI です。
多くの企業は、「業務を自動化すれば、マネージャはコーチング、戦略的思考、リーダーシップに注力できるようになる」と考えています。AI によって時間が節約されるのは間違いありませんが、だからといって、マネージャが突然、優秀なリーダーになるわけではありません。
意図的なサポートがなければ、マネージャが魔法のように戦略的リーダーに成長することはありません。むしろ、AI が生成した成果物の管理や検証などに追われ、マネジメント業務ではなく、事務作業の振り分けに終始することになります。
意図的なサポートがなければ、マネージャは事務作業の振り分けに追われることになります。
一般社員からリーダーへの移行を、事務的な確認作業として扱うと、組織的な停滞が生じます。ワークフォースに関する複数の調査結果から、複合的な要因が組織的な停滞を引き起こしていることがわかります。
その結果、新任マネージャは取り残されたように感じてしまいます。新任マネージャは、挑戦や失敗、調整の余地がほとんどない状況で、AI を活用した複雑な業務環境に対応しなければならないのです。
57% の企業で社内異動が前年比で減少しているため、マネージャにとって、横方向の異動や新しいスキルを試す機会が少なくなっています。
リーダーとしての役割を果たすには、内面的な変化が必要になります。業務環境が変化した場合、それに応じて心理面でも変わらないと、大きな代償を負うことになります。それがアイデンティティ ドラッグです。
アイデンティティ ドラッグとは、リーダーとして状況を把握してビジョンを示し、メンバーを統率することが求められる一方で、自分の価値を、これまでの成功指標 (具体的な成果物や目前の業務の遂行など) に結び付けたままでいることによって生じる心理的な抵抗感のことを指します。
組織心理学者の William Bridges 氏は、「変化」は状況に関するものであるのに対し、「移行」は人間の内面で起きる心理的な方向転換であると指摘しています。90 日間のチェックリストで、アイデンティティの移行をプロジェクトのように管理することはできません。
これらの移行に対応するには、どの移行について組織的な支援が必要なのかを判断する必要があります。これらの移行は直線的に進むものではなく、役割、専門分野、経験レベルによって課題も異なります。
Herminia Ibarra 氏が「可能自己」に関する調査で指摘しているように、リーダーになるには、一人で成果を上げることから得られる目先の満足感を手放す必要があります。同僚によるコーチングやメンタリング、明確な成長目標、心理的な安心感などの組織的な支援がない場合、新任マネージャは「達成しても喜びを感じられない状態」に陥るリスクがあります。形式的には目標を達成できても、自分が何をしているのか実感できず、管理業務に追われてしまう可能性があります。
アイデンティティ ドラッグとは、リーダーとして状況を把握してビジョンを示し、メンバーを統率することが求められる一方で、自分の価値を従来の成功指標に結び付けたままでいることによって生じる心理的な抵抗感のことを指します。
このギャップを埋めるには、形式的なオンボーディングから脱却し、リーダーの成長を支援する環境を構築する必要があります。
1.業務のオンボーディングではなく、役割の移行に重点を置く
2.リーダーシップに伴うリスクを早期に減らす
3.AI を活用した成果だけでなく、人間としてのリーダーシップも評価する
Workday の調査結果は、Workday が継続的に実施しているワークフォース調査に基づいています。この調査では、実際に稼働している数百万人の従業員を対象とし、5,000 社以上のグローバル企業のお客様から収集されたデータを匿名化し分析しています。この調査では、2024 年から 2026 年上半期までの長期にわたる継続的なデータを追跡しています。また、これらの指標では前回と同じ調査グループと、業界ごとに標準化されたべンチマークを用いて、市場全体の人財動向を抽出しています。ヘッドカウント、定着率、採用障壁において、現時点で確認できる主要な方向性を示しています。調査が進むにつれ、より具体的なトレンドが明らかになる予定です。
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