職場の AI がもたらす Z 世代の孤立
AI を最も使いこなしている世代は、職場で最も孤立している世代でもあります。これが今後 10 年にどのような影響をもたらすのかを解説します。
Sara Braun
Editorial Strategist, HR
Workday
AI を最も使いこなしている世代は、職場で最も孤立している世代でもあります。これが今後 10 年にどのような影響をもたらすのかを解説します。
Sara Braun
Editorial Strategist, HR
Workday
2035 年の働き方がどうなっているかを知りたい場合は、Z 世代に注目する必要があります。
Pew Research Center の定義によると、1997 年から 2012 年に生まれた人がこの世代に属します。AI が浸透した職場でキャリアをスタートさせた最初の世代です。彼らは最も AI を活用しているユーザーとして群を抜いています。Workday の『職場における人とのつながり指数』によると、彼らは他者とのつながりが最も希薄であり、同僚を最も信頼しておらず、職場で最も孤独なグループに分類されます。
高い AI 活用率と希薄な人間関係という組み合わせは偶然ではありません。1 つのシグナルです。
レポート
キャリア初期の数年間はどの世代にも大きな影響を与えます。Z 世代の環境は前例のないものでした。彼らの多くはパンデミックの最中に社会人生活をスタートさせています。リモートワークを余儀なくされ、寝室やキッチン テーブルが彼らの職場となりました。上の世代と比べて対面での交流がはるかに少ないため、人間関係を構築し、信頼できるメンターを見つける機会は限られていました。
広報担当者として働く 27 歳の Rachel Aquino 氏は次のように述べています。「COVID-19 の発生直後に社会人となった人間として、同僚と対面で交流することは極めて重要でした。特に業界に足を踏み入れたばかりの頃は、対面で学んだ方が身に付きます」
Z 世代はまた、AI ツールが必要不可欠な存在となったタイミングでキャリアを開始させました。Workday の調査によると、日常的に AI を活用している X 世代は 55% であるのに対し、Z 世代ではこの割合が 81% に上ります。彼らは AI を生活に組み込む方法を学ぶ必要はありませんでした。彼らの多くは最初から AI を日常的に使用していたからです。
Aquino 氏は AI を「新しい Google のような存在」と述べています。
AI を本格導入する初期段階で直面する課題は数多く確認されており、その深刻さは多岐にわたります。たとえば、大量解雇の脅威、AI が生成する「ワークスロップ」の出現、エムダッシュの使用は AI 文章を特徴付けるかどうかをめぐる激しい議論などです。
Z 世代は職場で最も若いグループというだけではありません。彼らは人間側の受け入れ体制が整う前に AI 活用が進むと何が起きるかをリアルタイムに体現しています。
日常的に AI を活用している X 世代は 55% であるのに対し、Z 世代ではこの割合は 81% に上ります。
『職場における人とのつながり指数』が示す Z 世代のデータは衝撃的です。「若者はいつもスマホばかり見ている」というお決まりの固定観念を裏付けるのではなく、最も若い世代の日常業務のあり方が上の世代とは驚くほど違うことを明らかにしています。
Aquino 氏は次のように述べています。「誰もが自分の仕事だけを考えているように感じます。本当に重要な場合を除き、アイデアを出し合うために同僚と対話したり接触したりすることはありません。しかしそのような場合は、皆 AI から得たアイデアを持ち寄るのです」
Z 世代は AI 活用を早期に進めた場合にどのような代償が生じるかを私たちに示しています。人との対話よりチャットボットとのやり取りが多くなると、人とのつながりは希薄になります。回答が瞬時に得られる場合、協働しながら試行錯誤する機会はなくなり、議論は生まれなくなります。チームが連携して問題を解決しなくなると、お互いを信頼することもなくなります。当社の調査はこの問題の深刻さを浮き彫りにしています。
これらはソフトな指標ではありません。信頼や友情は優れた成果を実現するチームの重要な基盤であり、メンバーが支援を求め、不適切な考えに異議を示し、厳しい四半期を乗り切るための原動力となります。信頼や友情が失われた場合、パフォーマンスの低下は避けられません。
Z 世代は、テクノロジーが生産性を高めると同時に孤立化をもたらすことを明確かつ広範に示した最初の世代です。
Aquino 氏は次のように述べています。「[以前は] 誰かが私の隣に座って仕事の内容を説明し、その人がどのように考えているか、どのように作業方法を教わったかを詳しく話してくれました。現在、若手社員の多くは AI を自身で活用することを自認しています」
IBM 社でソリューション アーキテクトとして働いている Karthik Karunanithi 氏は同様の見解を示しています。同氏は多様な若手エンジニアのマネージャとして Z 世代と AI の関係を間近で見てきました。「AI が奪ったのは雑談ではありません。初歩的な質問をする機会です。しかしこのような質問は極めて重要です」と彼は述べています。
一見して「初歩的な質問」に思えても、より大きなプロジェクトや全体的な目標に関わる対話のきっかけになることが少なくないと Karunanithi 氏は語ります。「現在は AI が質問への回答を瞬時に提供するため、そのような対話が生まれる余地はありません」と彼は述べています。
Karunanithi 氏は、AI がもたらす不安が職場での孤立化をさらに深める可能性があると指摘します。「AI が回答できる質問を人に訊くということは、自身の解決能力の低さを示すことになると感じる人が増えているのです」
Z 世代の 5 人に 1 人は、職場に AI ツールが導入されて以降、孤独感が増したと回答しています。
ここで安易に語られがちなのが、Z 世代に対するここ数年の風評です。Z 世代は非社交的で、スマートフォンに依存し、オフィスを毛嫌いしているというものです。しかしそのよう風評は間違っているか、少なくとも実態を十分に捉えていません。
Z 世代は対面で働くことを拒んだわけではありません。そのような機会に恵まれなかったのです。彼らの多くはバーチャル環境でキャリアをスタートさせました。廊下で立ち話することも、コーヒーの列に並びながら何気ない会話をすることも、仕事帰りに同僚と飲みに行くこともありませんでした。前の世代はこのような触れ合いを通じて人間関係を構築していましたが、彼らは単純にそのような機会がなかったのです。
さらに Z 世代は親世代が解雇や景気後退、組織再編を経験し、そのたびに社員と企業の暗黙の社会的契約がいつの間にか書き換えられていく様子を目の当たりにしてきました。多くの Z 世代が学んだのは、忠誠心は必ずしも報われるわけではなく、組織への帰属意識よりも自律性や独立性を大切にする方が安全であるということです。
つまり Z 世代が職場で人との距離を一定に保つのは、無関心だからではなく、環境に適応してきた結果の表れなのです。
そして「非社交的な世代」という風評が見落としている点があります。Z 世代は人とのつながりを積極的に求めており、職場の外にそれを求めているのです。Z 世代の間では、ランニング クラブ、読書会、対面で集まる趣味のコミュニティ、アナログな集まりが人気となっています。これは職場がかつてのような環境、つまり人とのつながりを通じて最高の成果を生み出す場ではなくなっているからです。
Z 世代が職場で人と一定の距離を保つのは、無関心だからではなく、環境に適応してきた結果の表れなのです。
Z 世代が AI ファースト ワークフォースの最前線にいるのであれば、彼らの経験は今後誰もが経験することを占う鏡となります。AI 活用の拡大、障壁の軽減、有機的な交流機会の減少など、すでに同様の変化はあらゆる世代で生じています。Z 世代はそのような変化に最も早く直面し、その影響を最も強く感じているにすぎません。
これはリーダーにとって重要な意味を持ちます。企業はもはや AI 導入と企業文化を個別の部門が監督する独立した取り組みと捉えることはできません。AI 導入方法を決定するということは、社員がいつ・どのようにつながりをもてるようにするか、そもそもつながりをもてるようにするのかどうかを決めることにほかなりません。
変化の激しい時代では、経営幹部であるか新社会人であるかに関わらず、変化への対応に苦慮します。しかし職場のつながりに意識的に投資することで、リーダーは AI がもたらす孤立化を軽減し、Z 世代が働きやすい職場を構築できます。
Z 世代そのものに問題はありません。彼らは、人間側の受け入れ体制が整う前に AI 活用が進むと何が起きるかをリアルタイムに体現しています。
「以前は職場でごく内々に使われていましたが、今ではオフィスの誰もが少なくとも 1 日に 1、2 回は使うようになっています」と Aquino 氏は述べています。
変化のサインに耳を傾け、適切に職場を設計する組織は、今後 10 年の働き方を成功へと導くことができます。そうしない組織は、生産性を向上させる一方で、人とのつながりが希薄なワークフォースを抱え、企業文化の修復がますます難しくなります。
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