CIO と CLO の連携がワークフォースの AI 導入を形成する
AI の価値を引き出すためには、最高情報責任者 (CIO) と最高学習責任者 (CLO) が一体となって 2 つの重要な責務を担うことが欠かせません。テクノロジーの基盤構築と、導入の原動力となる人財の育成を融合させる必要があります。
Chris Ernst
最高学習責任者
Workday
AI の価値を引き出すためには、最高情報責任者 (CIO) と最高学習責任者 (CLO) が一体となって 2 つの重要な責務を担うことが欠かせません。テクノロジーの基盤構築と、導入の原動力となる人財の育成を融合させる必要があります。
Chris Ernst
最高学習責任者
Workday
AI の台頭は、私がこれまでのキャリアの中で目撃した中で、最大、最速、そして最も広範なワークフォースの変革です。これは最高学習責任者 (CLO) にとって極めて重要な転換点となります。
この 1 年、AI をめぐる議論は同じように速いペースで進化しています。初めは人間がこのような変化に対応するために必要なスキルについて議論していましたが、次第に論点は AI の導入へと移行していきました。現在は AI の価値を証明し、概念的な理解の段階から、具体的な成果を生み出す段階へと移行させることが求められています。
私たちは AI の難しい課題に取り組み、新しいツールをデプロイし、効果を検証しています。これらはすべて極めて重要ですが、価値創造という面では、何よりも導入が進むかどうかが鍵を握ります。導入が進まなければ、AI への投資は休眠状態になってしまいます。
私たち自身が Workday で AI 導入の拡大を目指して取り組みを始めた当初、チームも私自身もすべてを見通していたわけではありません。個人的には、導入を推進する上で、見落とされがちでありながら極めて重要なのが、CIO と CLO の連携であるとすぐに気づかされました。
当社の CIO である Rani Johnson のチームが策定した明確なテクノロジー ロードマップは、部門間で緊密に連携するクロスファンクショナルな戦略へとすぐに発展しました。この連携は、AI を野心的なパイロット運用の段階から、全社規模で人財の能力を高める段階へと移行させるための、不可欠な推進力 (そして 2 大責務) となりました。
現在の月次指標をみると、当社の AI 導入率は 85% に達しています。この割合はパートナーシップを構築した当初と比べて 45% 高くなっています。私たちはこの取り組みを通じて導入フレームワークを速やかに策定し、エグゼクティブ間の強力なパートナーシップを構築して、人財、ビジネス、AI の価値に至るまで協働で対処できる体制を整備しました。
レポート
最近の調査によると、CIO の 72% は AI の最大課題としてデータを挙げており、その大半が、複数のレガシー システムに分散されたデータ プラットフォームの統合に苦慮していると述べています。
AI が過去の革新的技術と異なるのは、供給されたデータに基づいて絶えず学習する点にあります。新しい指示や推論用のデータはいつでも AI に供給できるため、毎月のソフトウェア更新を待つ必要はありません。その反面、AI は鵜呑みにしやすい特性を持ち、データのハルシネーション (幻覚) によって自ら誤った判断を下し、不適切な回答や結果を導き出す場合があります。
「CIO/CLO のパートナーシップは、AI を単にデプロイするだけでなく、社員が自信を持って AI を導入できるようにするために必要な推進力となります」
—Workday、CIO、Rani Johnson
バイアスを含むデータや古いデータ、または不正確なデータを使用して学習した場合、AI は同じように信頼性の低い出力を生成します。これは AI が真のイノベーションをもたらすかどうかが、既存のデータとその質に左右されることを意味します。
Workday にとって幸運だったことは、ラーニング チームが正式に関与するずっと前から、Rani と彼女のチームがすでに AI ロードマップの策定に精力的に取り組んでいたことです。そのようにして確立された基盤は必要不可欠なものであり、新たに構築されたパートナーシップを一気に加速させる強力な推進力となりました。
しかし、データの整合性を確保することは、クリアすべき課題の半分にすぎません。今日の CIO は、リスクに対する安全策として、また導入を加速させる手段として、責任ある AI (RAI) ガバナンスを確立することで、単なるデプロイメントの枠をはるかに超えた取り組みを進めています。
AI をいつどのように使用すべきか明確な指示がなければ、社員は AI の誤用を恐れてツールを試用・学習する意欲を失い、導入に向けた動きが完全にストップしてしまう可能性があります。
CIO の役割は、膨大なリスクと複雑さを管理することでこのような恐れを取り除くことであり、一方、CLO はその上に、導入を推進する人的基盤を構築します。これら 2 つの責務を統合して初めて、野心的なパイロット運用の段階から全社的な AI 戦略へと移行することが可能になるのです。
テクノロジー基盤と RAI ガバナンスを確立した後は、AI の活用と価値の最大化へと焦点を完全に移しました。
AI 導入がパイロット運用の段階で停滞するケースは業界全体をとおして広く見られます。また、AI を全社規模で導入していると回答する CIO は 11% にとどまっています。このパイロット運用から本番稼働に移行するまでの隔たりが、数十億ドル規模の潜在的価値を失う要因となっています。
Rani は私たちの勢いを衰えさせない環境を整備してくれました。彼女は最近の会話の中でこのアプローチについて的確に説明しています。「AI 導入を成功させるためには、テクノロジーだけでなく人財に配慮する必要があります。データの整合性、ガバナンス、セキュリティを重視したことで、私たちは信頼性の高いインフラを構築できましたが、これは目的地の半分まで辿り着いたにすぎません。「CIO/CLO のパートナーシップは、AI を単にデプロイするだけでなく、社員が自信を持って AI を導入できるようにするために必要な推進力となります」
CIO と CLO が共同で責任を担う意義はまさにここにあります。これにより、テクノロジーを使える段階から、全社規模で導入が定着する段階へと移行が促進されます。
私はこれまでのキャリアを通じて、人や組織がどのように変化に適応するのかを組織心理学者の視点で研究してきました。他の大規模な変革と同様、AI の導入を阻む最大の障壁は不確実性に対する恐れです。ツールを誤って使用することに対する恐れ、データ ハルシネーションに対する恐れ、そして役割が置き換えられることに対する根強い恐れです。
このような不確実性は導入の停滞を引き起こし、安全性と実績が確保されている従来のプロセスへと社員が後退する要因となります。その結果、AI への投資から得られる価値は確実に低減します。
このような状況を克服するには、CIO が確立したガバナンス体制の下、CLO が心理的安全性の高い学習環境を構築する必要があります。心理的安全性が高いチームは、より積極的に実験を行います。AI 時代においては、実験の数がそのまま学習速度につながるため、数多く実験することが導入や価値実現の加速化に直結します。
当社の社内プログラム EverydayAI は、これが正しいことを証明しています。このプログラムでは、立ち上げ後 6 か月以内に 1 つ以上の AI ツールを利用し始めた社員は 85% に上りました。AI を導入している社員は明確なキャリアパスを確保している可能性が 13% 高いだけでなく、企業戦略と足並みがそろっていると感じる可能性が 15% 高くなっています。
Workday のエンタープライズ イネーブルメント担当ディレクターを務める Garrett Gatlin は先頃、成功を導いたアプローチについて次のように述べています。「EverydayAI の目標は、AI を分かりやすく身近なものにし、誰もが利用しやすい実用的なツールにすることでした。単にツールをロールアウトするだけでなく、AI に対する自信と好奇心を高めたかったのです」
ワークフォースに対して AI を継続的に分かりやすく身近なものにするため、私たちはトップダウンのアプローチから離れ、社内クラウドソーシングに注力しました。また、社員同士で共有できるチャネルを創設し、社員が自身の低リスクな成功事例を紹介できるようにしました。このように社員同士で有機的に導入を広げていくアプローチは、どの正式なトレーニング モジュールよりもはるかに大きな効果をもたらしました。
ツールを安全に学習・活用できると感じる社員は、組織に定着して成長し、価値を創出します。これこそ真のビジネス価値です。
「EverydayAI の目標は、AI を分かりやすく身近なものにし、誰もが利用しやすい実用的なツールにすることでした。単にツールをロールアウトするだけでなく、AI に対する自信と好奇心を高めたかったのです」
—Workday、エンタープライズ イネーブルメント担当ディレクター、Garrett Gatlin
CLO の役割は、AI による自動化によって節約された時間を、意欲の高い社員が担う高価値かつ高度な業務に再投資されるようにすることです。AI の価値を実現するうえで指針とすべき 3 つの柱を以下にご紹介します。
1.テスト/実験を許可する: リーダーは、新しい AI ツールを使うことが、能力の優劣を判定するテストではないことを積極的かつ継続的に伝える必要があります。私たちは実験を行うことを日常化して支持する必要があります。当社で最も効果的だった試みは、AI トレーニングを社内クラウドソーシングへと言いかえたことです。社員同士が小さな成功事例を共有することで、私たちは AI 導入を仕事に対する誇りとレコグニションにつなげました。
2.AI 活用を人間味のあるものにする: AI を社員にとって魅力的なものにして、各自のユースケースに焦点を当てることで、同僚とのコラボレーションが活発化し、社員のメリットとなります。
3.導入を人財の流動性と結びつける: 人事担当者にとって価値創造を見極める最も明確な指標となるのは、人財の定着率と成長です。AI の活用がキャリアパスにどう直結するかを CLO が学習プログラムを通じて社員に示すことにより、導入を妨げる障壁を解消できます。
AI 時代においては、実験の数がそのまま学習速度につながるため、数多く実験することが導入や価値実現の加速化に直結します。
今こそ CLO はテクノロジーと人財の可能性を結びつけ、リーダーシップを発揮するときです。CIO と CLO のパートナーシップを戦略的必須条件として推進し、ワークフォースに求める部門横断的なアジリティを自ら体現する必要があります。
現代の CLO は、データ ガバナンス、セキュリティ、技術的ロードマップに精通していなければなりません。一方 CIO は、テクノロジーをデプロイした時点で自身の任務が完了したと考えてはなりません。両者はパートナーとして協力し、導入を確実にするための文化と学習の仕組みを推進する必要があります。
技術的基盤と安全・迅速な実験を促進する文化を結びつけることで、リーダーは AI を導入するだけでなく、AI がもたらすイノベーションの可能性を組織が活用できるよう支援できます。その結果、投資から最大限のリターンを引き出すことができます。
最高経営責任者 (CEO) の 98% は、AI の導入がビジネスに即時的なメリットをもたらすと予測しています。このレポートをダウンロードして、2,355 人のグローバル リーダーから得たインサイトをご確認ください。AI が組織にもたらす潜在的なメリットを理解いただけます。
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