2026 年の最適な社員定着戦略
AI によって仕事のあり方が変わり、キャリアパスも変化する現状で、社員を維持できるかどうかは、社員が自分の将来について明確な道筋を描けるかどうかにかかっています。
Sara Braun
人事担当編集ストラテジスト
Workday
AI によって仕事のあり方が変わり、キャリアパスも変化する現状で、社員を維持できるかどうかは、社員が自分の将来について明確な道筋を描けるかどうかにかかっています。
Sara Braun
人事担当編集ストラテジスト
Workday
多くの社員定着指標から分かるのは、何が起きているのかということであり、その原因まで分かるわけではありません。離職率、報酬、退職リスクを追跡すれば、どこで問題が発生しているのか特定できますが、何が社員の定着につながっているのかを把握することはできません。
AI によって職場環境が変わり、必要なスキルも急速に変化する現状で、優秀な人財をつなぎ留めるには、発想の転換が必要になります。社員を定着させるには、現在の職務を維持するだけでなく、社内における明確な将来像を描けるように支援することも重要です。
Workday が実施した 2025 年 9 月の調査では、調査対象のほぼすべての業種で昇進が減少し、優秀な人財の自己都合による離職率が増加したという結果になっています。Gallup 社の調査では、自己都合の離職の 42% は防ぐことが可能だったとされています。これは、多くの企業にとって、社員が退職を決意する前に、社員定着に関する課題に取り組むための余地があることを示しています。
最も効果的な社員定着戦略は、この新しい現実を考慮した戦略です。キャリア モビリティ、マネージャの能力、ワークフォース インテリジェンス、エンプロイー エクスペリエンス、信頼関係を組み合わせることにより、社員は別の企業に関心を向けることなく、現在の職務での成長に取り組むようになります。
レポート
社員の自己都合による離職の 42% は、防ぐことができます。
現在の組織内で自分のキャリア形成がどのように進んでいくのかを明確に把握できる場合、社員の定着率が高まる傾向があります。以下に示す 6 つの社員定着戦略により、社員エンゲージメント、適応力、レジリエンスも高めながら、社員のキャリア形成を支援することができます。
2. 社内異動の障壁を取り除く
将来に向けた有意義なキャリア開発の機会を提示すると、社員の定着率が大幅に高くなる傾向があります。
そのためには、従来型のキャリア ラダーを用意するだけでは不十分です。社員の現在のスキル、企業として今後必要になる能力、これら 2 つをつなぐ経験について把握する必要があります。
Workday グローバル ワークフォース レポートでは、ほとんどの業界で昇進が減少し、社内採用も少なくなっているため、社内で成長の機会を見つけるのが難しくなっていることが示唆されています。同時に、Gallup 社の調査では、最高人事責任者の 59% が、最も苦労しているエンプロイー エクスペリエンス分野の 1 つとして社員の育成を挙げています。
これらの調査結果を合わせて考えると、「スキル戦略が社員の定着につながるのは、明確なキャリア開発の機会を提供する場合に限られる」という重要な事実が見えてきます。スキル重視のアプローチにより、以下のことが可能になります。
しかし、スキルに関するインテリジェンスが価値を生み出すのは、そのスキルが明確な機会につながる場合に限られます。社員には、「新しい能力を習得すれば、昇進、重要なプロジェクトへの参加、メンターシップの機会、新しい職務への異動など、新しい可能性が広がる」ということを認識させる必要があります。また、学習によって自分のキャリアがどのように前進するかを理解できれば、社員にとって学習が大きな意味を持つようになります。
社内人財の流動性が高い企業では、優秀な人財の離職率が低くなります。
社員が、高度な責任や新しい課題に挑戦するための道筋を描けない場合、社外の機会がますます魅力的に思えるようになります。社内異動の促進により、組織内に貴重な知識をとどめながら、社員の継続的なキャリアアップを支援することができます。
Workday の調査でも、この関係性が裏付けられています。社内人財の流動性が高い企業では、優秀な人財の離職率が低くなっていますが、これは、社内でのキャリアアップの支援が、重要な人財を維持するための効果的な方法あることを示しています。
正社員のポジションだけではなく、プロジェクト業務、期間限定の業務、メンター制度、ローテーション型業務など、さまざまなキャリア形成の機会を透明化することが重要です。
企業は、人財の囲い込みという障壁にも対処する必要があります。マネージャは、特に変革期において、優秀な社員を自分のチームにとどめておきたいと考えます。自分のチームの業績だけでマネージャが評価される場合、社内異動が非常に難しくなります。
優秀な人財の引き止めについてのみマネージャを評価するのではなく、組織全体で長期的に活躍する人財の育成についてもマネージャを評価することにより、強固な人財パイプラインの構築につながります。
マネージャは常に、社員の定着に影響を与えてきました。2026年 には、その役割の重要性がさらに大きくなっています。
Gallup 社の調査によると、自己都合で退職した社員の多くが、退職前に自分の将来について有意義な話し合いをしていなかったという結果になっています。これは、社員の定着には、単発的な出来事よりも、チーム メンバーとマネージャとの継続的なコミュニケーションの方が重要であることを示しています。
マネージャは、日常業務を管理するだけでなく、社員のパフォーマンスとエンゲージメントを維持しながら、AI の導入、人間と AI の新しい協働モデル、優先事項の変化、スキル要件の変化、組織変革への対応について、社員を支援する必要があります。
企業は、以下の取り組みを行うマネージャを支援する必要があります。
最も重要なのは、社員が「自分は今後どのような役割を担うのか」を適切に理解にできるようにマネージャが支援することです。
自分の将来像が見えないと、社員は不安を感じます。社員は、すべての疑問にリーダーが答えてくれると期待しているわけではありませんが、現在は何が変化しているのか、不確定な要素は何か、それらに対応するにはどうすべきかなどについて、リーダーと率直に話し合いたいと考えています。
Gallup 社の最新のワークフォース調査では、転職を検討している社員は、給与や福利厚生の大幅な改善よりも、ワークライフ バランスやウェルビーイングの向上を重視しているという結果になっています。多くの企業が AI や変化するビジネスニーズに合わせて継続的に業務内容を見直している現在、持続可能なパフォーマンスは、業務環境だけでなく、業務の構造自体に大きく左右されるようになっています。
一部の社員にとって、柔軟な働き方とは、ハイブリッド勤務やリモート ワークのことを意味します。また、予測可能な勤務スケジュール、大きな裁量権、学習時間の確保、部門横断型の取り組みに参加する機会などを柔軟な働き方と考える社員もいます。
目指すべきは、社員が過度な負担を感じることなく、変化に適応できる職場環境を整えることです。そのためには、以下を行う必要があります。
書類上は「柔軟な働き方」が認められていても、増え続ける業務量を処理しなければならない場合、社員の意欲は大きく低下します。社員が求めているのは、場所に関係なく週 60 時間勤務する自由ではなく、持続可能な働き方です。
優れた企業は、燃え尽き症候群への対策を停止しています。代わりに、社員の業務負荷を減らし、高いパフォーマンスを長期的に維持できるように、将来を見据えながら、職務、プロセス、企業文化の設計に取り組んでいます。
退職者面接を行うと、退職の理由が明らかになります。ワークフォース インテリジェンスを活用すると、社員が退職する前に、その社員が退職を検討している理由を把握することができます。
この違いは重要です。それは、全体的な離職率だけに注目すると、ワークフォースに関する重要な課題が見えなくなる可能性があるためです。Workday の調査では、調査対象となったほぼすべての業界で、優秀な人財の自己都合の離職が増加しているという結果になりました。これは、単純な退職者数ではなく、誰が退職しているのかを把握することの重要性を表しています。
1 回限りのエンゲージメント調査や年次評価だけでなく、複数の指標を組み合わせることにより、追加のサポートが必要な箇所を特定することができます。効果的な指標を以下に示します。
これらの指標は、人間の判断を支援するものであり、人間の判断に取って代わるものではありません。
目的は、社員を予測スコアだけで評価することではありません。ワークフォース データを活用して、マネージャや人事部門のリーダーが生産的な対話を行い、成長の障壁を取り除き、早期に課題に対処することが重要です。
Gallup 社の調査によると、高い給与は依然として社員が転職を検討する重要な理由になってますが、多くの社員にとって、健全なワークライフ バランスとウェルビーイングが、給与以上に重要な要素になっています。現在は多くの社員が、企業が提供する総合的な価値提案に基づいてその企業を評価するようになっています。
意義のある仕事について、適切なタイミングで具体的な評価を行うと、社員による重要な貢献を強く認識させることができます。
同様に、信頼関係も重要です。PwC 社のワークフォース調査では、マネージャやシニア リーダーに対する信頼度が高い社員は、業務に対するモチベーションが大幅に高くなるという結果になっています。これは、変革期における透明性の高いリーダーシップの重要性を示しています。
現在は、多くの企業が AI を導入して仕事のあり方を再設計していますが、こうした状況において社員は、ビジネスニーズ、変化する役割、将来の機会について、リーダーと率直に話し合いたいと考えています。社員が、意思決定のプロセスを理解し、そのプロセスを通じて自分が公平に扱われると確信できれば、変化に対して柔軟に対応できるようになります。
リーダーに対する信頼度が高い社員は、業務に対するモチベーションが大幅に高くなります。
2026 年における最も効果的な社員定着戦略は、現在のワークフォースをそのまま維持することを目指す戦略ではありません。社員が意欲を失ったり、社外に目を向けたりする原因となる具体的な障壁 (不明確なキャリアパス、社内での限定的なキャリアアップの機会、一貫性のないマネジメント、業務の変化に対する可視性の欠如など) を取り除くことを重視する戦略が、最も効果的な社員定着戦略です。
スキル インテリジェンス、社内異動、マネージャの能力開発、ワークフォースに関するインサイト、透明性の高いリーダーシップに投資すれば、社員が離職することなく、自分が目指すべきキャリアを思い描き、そのキャリアを実現するための方法を把握できるようになります。
社員の定着とは、同じポジションにとどまるように社員を説得することではありません。成長の機会を可視化して社内異動を促進し、現在の会社にとどまるのは停滞ではなく前進だと感じられるような組織を構築することが、社員の定着につながります。
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