AI で職務刷新は進むが人事部門の対応は後追い
職務記述書は、組織とワークフォース間において信頼性の低い契約となりつつあります。業務内容は作業ごとに変化しているものの、人事システムは依然として役割を年単位で更新しています。
Sara Braun
人事担当編集ストラテジスト
Workday
職務記述書は、組織とワークフォース間において信頼性の低い契約となりつつあります。業務内容は作業ごとに変化しているものの、人事システムは依然として役割を年単位で更新しています。
Sara Braun
人事担当編集ストラテジスト
Workday
かつて、職務記述書は約束事でした。組織に対しては、その役割が何をもたらすのかを伝え、社員本人に対しては、何を期待されているのかを伝え、そして人事部門に対しては、その業務を担う人財をどのように採用し、給与を支払い、育成すべきかを伝えるものでした。つまり人事部門にとっては、企業とワークフォースの間で結ぶ契約に最も近いものでした。
しかし、AI はその契約のあり方を変えつつあります。職務内容が完全に変化する可能性があるにもかかわらず、業界の対応はいまだに追いつけていません。
現在、業務分担の在り方は役割単位ではなく、作業単位へと移行しつつあります。たとえば採用担当者の選考業務は、AI エージェントが担うようになります。現在は財務アナリストが担当している、差異分析に関する解説は、モデルが下書きを作成するようになります。顧客サービス担当者においては、質問に回答する時間が減る一方で、質問に回答するシステムを監視する時間が増えていきます。これらの社員はいずれも、この四半期中に新しい職務を与えられたわけではありません。しかし、社員の実際の業務内容は、誰かが最後に職務記述書を確認した時から、変化 (時には劇的に) しているのです。
一方、大半の人事システムにおいて、役割はいまだに、年に 1 度のサイクルで見直せば十分な、安定したものと考えられています。職務アーキテクチャの更新は、現実の変化から 12 か月~ 18 か月もの後れをとっています。さらにコンピテンシー モデルに至っては、数年に 1 度しか更新されていません。多くのキャリア フレームワークは、日々の業務が時間の経過とともに変化しないという前提に基づいて職務をいくつかのグループに分類しています。
業務が変化する速さと、役割が更新される遅さとの間に生じているギャップは、企業における最も重大な盲点の 1 つとなっています。
レポート
生成 AI が登場するよりずっと前から、業務はいつの間にか、その役割の既定の枠を超えたものに変化していました。これまで社員は、職務の求人情報に決して記載されることのなかった、関係者や他部門との調整業務やとりまとめ業務をこなしてきました。
Workday の最新調査では、この現実が浮き彫りになっています。
これらの数字を合わせて読むと、業務のあり方について、これまでとは異なる実態が浮かび上がってきます。正式な役割は「財務アナリスト」や「オペレーション マネージャ」、あるいは「コミュニケーション責任者」などとなるでしょう。実際の役割は「人間による仲介システム」に近いものです。つまり、週の多くの時間を費やして、そもそも相互作用するように構築されていないシステム、チーム、データ間のギャップを埋めているのです。
役割の構造そのものを再設計することなく、この環境に AI を直接導入したとしても、問題はさらに悪化するだけです。Gallup 社の調査は厳しい現実を浮き彫りにしています。業務で自分が何を期待されているかを明確に把握していると回答した米国の社員は 46% にとどまりました。これは、2015 年の最高値である 61% から 15 ポイントも低下しています。
Gallup 社のリーダーシップ開発担当グローバル リーダーである Vibhas Ratanjee 氏は次のように述べています。「AI を古いシステムに導入しても、システム自体が変革されることはありません。単に古いシステムを模倣するだけです。旧態依然としたシステムの大きな特徴のひとつは、職務記述書です。多くの場合、完全に固定化されており、何年も見直されていません」
年に 1 度のサイクルで職務を見直すというペースは、仕事の変化が緩やかだった時代には理にかなっていました。以前はチームが半日かけて行っていたワークフローを、1 度のモデル更新で自動化できる場合、このサイクルはもはや通用しません。そのため、企業は適応するのに苦慮しています。10 社のうち約 9 社が、AI 関連のスキルを反映させるために更新した役割は、半分に満たないと報告しています。
10 社のうち約 9 社が、AI 関連のスキルを反映させるために更新した役割は、半分に満たないと報告しています。
人事部門のリーダーは、すでに 3 つの主要な領域においてミスマッチを感じ始めています。
過去の役割を基準にした採用: 多くの採用担当者は、現在の AI ツールが登場する前に作成された求人情報を、そのまま使い回しています。その結果、リアルタイムで自動化されつつある業務を担う候補者を選考する場面で、重要な意思決定、システム監視、プロンプト エンジニアリング、出力検証といったスキルが、いつの間にか必須となっていることに目を向けられないのです。
委任 (または吸収) された業務範囲に対する報酬: 報酬バンドは通常、定義された役割範囲に基づいて設定されます。AI が定型的な作業を引き継ぐと、社員はより重要な業務を担う機会が増えるでしょう。しかし、給与体系は 1 年以上遅れて反映される場合があり、社員は創出した高い価値に見合う報酬を得られないままとなります。
時代遅れとなった能力開発: ラーニング計画は「優れたパフォーマンス」の明確な定義を前提としています。社員は、フレームワークが目標に追いついていないことに気づいています。AI の活用に苦労している社員のうち、54% が職務に必要なスキルを習得できていないと回答しており、正式なキャリアパスと現実世界の要求との間に乖離があることが示されています。
この変化に対応するには、職務記述書を再定義する必要があります。つまり、固定された作業リストから脱却し、その役割において解決すべきコア ビジネスの問題を明確に定義していく必要があります。AI の導入により、職務を「どのように進めるか」は流動的になる一方で、「何を達成するか」は常に変わらない基盤として残ることになります。
Ratanjee 氏は、常に変化する目標を追うのではなく、「将来の成功プロファイル」を採用することを提案しています。これは、現在の役割を機能させるのに何が必要で、それがどこに向かっているのかを、将来を見据えて定期的に見直すためのフレームワークです。この新しい職務モデルを検討する上で重要なポイントは、どの業務が変化したのか、どの業務を自動化すべきか、そしてどの業務を人間が主導し続ける必要があるのかを見極めることです。
従来の職務記述書における大きな特徴は、社員がその役割で成功するためにどのような能力を必要とするのか、という点にあります。これは今後も変わることはないと Ratanjee 氏は述べています。しかし、能力は、個人の成長と成果の達成という理念によって強化される必要があります。Ratanjee 氏は次のように述べています。「エンプロイー エクスペリエンスは、何らかの形でつながっている必要があります。そして、ビジネスとの連携も必要です」
AI の導入により、職務を「どのように進めるか」は流動的になる一方で、「何を達成するか」は常に変わらない基盤として残ることになります。
Ratanjee 氏は次のように述べています。「多くのリーダーが、明確さを創出する方法を再定義しています。それは、社員に何を期待しているかをただ伝えるだけでなく、どのように成長できるかを示すことです。「テクノロジーが進歩する速さに追いつくためには、職務記述書や成功プロファイルを四半期ごとに評価する必要があります」
職務の進化をリアルタイムで反映するモデルへと移行するために、人事部門チームは次の 3 つの戦術的な転換に焦点を当てるのが良いでしょう。
今日の業務ペースに合わせて意図的に変更を加えることで、職務記述書は、形式的なものではなく、業務の実態を大づかみに捉えた要約となります。
今日の業務ペースに合わせることで、職務記述書は、形式的なものではなく、業務の実態を大づかみに捉えた要約になります。
人事部門は、業務、従業員、スキル、報酬、倫理といった全体像を監督できる唯一の部門です。しかし AI の可能性を実現するには、従来の年間サイクルを継続的に実行する必要があり、1 つの PDF を通じて最新の業務を処理できるという考え方が求められます。
硬直した契約としての職務記述書はもはや過去の遺物です。AI は、テクノロジーと並行して人間の可能性も進化する、より流動的な未来を切り拓きつつあります。従来の職務記述書に代わるものは、進化し続ける業務、スキル、そして人間の意思決定からなる動的なエコシステムです。
Ratanjee 氏は次のように述べています。「人事部門は、こうした過去のものを捉え直し、AI を活用して再構築する必要があります。それが目指すべき方向であり、リーダーが期待していることだと思います」
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