AI の時代に求められる高いインクルージョン
AI を導入すれば、自動的にインクルーシブな職場環境になるわけではありません。人事部門のリーダーは、業務を見直してすべての社員に機会を提供する上で、重要な役割を担っています。
Sara Braun
人事担当編集ストラテジスト
Workday
AI を導入すれば、自動的にインクルーシブな職場環境になるわけではありません。人事部門のリーダーは、業務を見直してすべての社員に機会を提供する上で、重要な役割を担っています。
Sara Braun
人事担当編集ストラテジスト
Workday
AI は通常、生産性向上という観点から議論されます (どれだけ業務を効率化できるのか、どの程度業務を自動化できるのか、どれだけの作業時間を短縮できるのか、など)。しかし多くの場合、こうした生産性向上のメリットは、高度なツールと明確なワークフローを活用して、キャリア形成につながる業務を担当している社員に集中します。
AI を導入すれば、自動的にインクルーシブな職場が実現するわけではありませんが、人事部門のリーダーが明確な意図を持って業務内容を見直すことにより、社員は、自分の成長につながる戦略的な業務や創造的な業務に注力できるようになります。
Workday の VIBE (全員のインクルージョンとビロンギングの尊重) プログラム担当ディレクターを務める Stacey Romero が指摘するように、リーダーが目指すべきなのは、すべての社員に対して一貫した公平な機会を提供することです。Romero の仕事の中心は、テクノロジーの導入ではなく、「誰が取り残される可能性があるのか」という問いに答えることです。
明確な意図を持って AI を導入しなければ、戦略的な業務や創造的な業務を担当する社員と、細分化された業務、常に監視される業務、自動化された業務を担当する社員に分かれてしまいます。
レポート
人事部門のリーダーが明確な意図を持って AI の導入を設計することにより、社員は、自分の成長につながる戦略的な業務や創造的な業務に注力できるようになります。
多くの企業が AI 活用の取り組みを急速に進めていますが、すべての社員が、各種のツール、トレーニング、ガイダンスに均等にアクセスできるわけではありません。組織における AI の価値を制限する要因について尋ねたところ、スキル、トレーニング、ツールへのアクセスの不均一性に回答が集中しました。
これにより、ワークフォースが二層化する可能性があります。ある企業は AI を活用して業務の無駄を削減し、戦略的業務に取り組んでいます。別の社員グループは、連携していないシステムや主体性の低い業務の調整業務に追われたり、周囲の同僚がイノベーションを進めているのを横目に、必要な権限が与えられるか、必要なスキルが身につくまで待ったりすることになります。
これは、単なるテクノロジー導入の問題ではなく、インクルージョンの問題です。Romero が指摘しているように、テクノロジーを効果的に活用できるかどうかは、それを使用する社員の能力次第です。インクルーシブなアプローチで AI を導入しなければ、AI によって既存の問題がさらに大きなものになります。
しかし、問題はインクルージョンだけではありません。Romero は、信頼感と安心感も関係していると言います。「AI を活用できる社員と活用できない社員との間に分断が生じるだけでなく、AI を試してみようという意欲がある社員と、自分の役割が不要になるのではないかという不安から、AI の活用をためらう社員との間にも分断が生じる可能性があります」
グローバルな社員の 27% が、不均一なスキル、トレーニング、AI ツールへのアクセスが、組織における AI の価値を制限していると回答しています。
社員が AI ツールにアクセスできるようにすることは重要ですが、それだけでエクスペリエンスが改善されたり、AI ツールを効果的に活用できるようになるわけではありません。Romero は、「社員が学習に取り組むには、そのための時間と空間だけでなく、安心感も必要になります」と指摘します。多くの場合、学習の許可を与えるのはマネージャです。Romero は、AI を使用すべきだと理解していながら、AI について学習するための時間を確保できなかった同僚の事例を挙げました。しかし、リーダーが「積極的に活用すれば、最終的には業務時間の短縮につながる」と後押ししたため、初期の投資にはそれなりの価値があったと感じられるようになりました。
十分な準備期間や明確な許可がなければ、AI の活用から取り残される社員が出てくる可能性があります (特に、技術職ではない社員)。人事部門は AI の活用を、さまざまな機会創出要因 (学習、社内異動、能力開発など) と同様に捉える必要があります。
多くの社員が AI ツールを活用するには、そのツールがユニバーサル デザインの原則に基づいて設計されている必要があります。Workday の障害者インクルージョン プログラムも主導している Romero は、スクリーン リーダーなどの支援技術を使用する社員が取り残されるリスクを指摘し、アクセシビリティの問題に早期に対処する必要があると言います。これは、アクセシビリティに関する問題を後から解決するのが難しいためです。
神経多様性のある社員も、取り残される可能性があります。ADHD の社員にとっては、タスクに着手すること自体が障壁になることがあり、すでに大きな負担を抱えている場合は、新しいツールの習得に積極的に取り組むことがさらに難しくなります。
ひとつの視点だけに基づいて AI 戦略を策定すると、多くの社員が除外される可能性があります。Romero は、米国や本社を中心としたアプローチに警鐘を鳴らしています。こうしたアプローチでは、直接的なコミュニケーション スタイルが好まれますが、それがすべての地域で支持されるとは限りません。タイムゾーンも重要です。特定のオフィスの勤務時間に合わせてライブ セッションを実施すると、別の地域の社員はそのセッションに参加できず、録画を視聴しなければならなくなります。Romero は、非同期型のラーニング プログラムを実施するか、複数のタイムゾーンにまたがる同期型のラーニング プログラムを実施することを推奨しています。
ひとつの視点だけに基づいて AI 戦略を策定すると、多くの社員が除外される可能性があります。
人事業務、財務業務、IT 業務、運用業務を担当する 6,100 人を対象とした調査では、82% がチーム間やシステム間での業務調整や情報変換に多くの時間を費やし、81% がツール間での情報移動に時間を費やし、77% が矛盾するデータの照合作業に時間を費やし、70% が業務上の摩擦を生む事務作業に多くの時間を費やしているという結果になっています (詳細はこちらを参照)。
効果的に機能していないワークフローに AI を導入すると、不均衡な状態がさらに悪化する可能性があります。そのため人事部門は、社員が負担に感じている業務から着手し、仕事そのもののあり方を再設計する必要があります。Romero は、各社員の現状に合わせて、複雑なエンジニアリング業務ではなく、定期的な進捗報告などの単純な日常業務から着手することを提案しています。
責任ある AI に関する議論では、多くの場合、プライバシー、セキュリティ、バイアスが重視されます。Romero は、これにインクルージョンの視点も加えて、次のような問いを行うべきだと指摘します。そのツールは、アクセシビリティが確保された設計になっているか?各地域の環境などが考慮されているか?AI を使用して、すべての人財が成長できる環境を構築しているか、それとも既存の障壁が強化されているか?すでに多くの社員が AI を活用して業務を効率化しており、グローバルな社員の 54% が、AI によって業務の生産性が向上したと回答しています。しかし、業務の効率化だけで、機会が保証されるわけではありません。
ここでのより大きな機会は、AI を基幹業務システムに組み込むことです。「人財、資金、計画を管理する基幹業務システムに AI が深く組み込まれている」と回答した社員は わずか 27% ですが、これらの社員は、基幹業務システムに AI が組み込まれていない企業の社員と比べて、「業務時間が大幅に短縮された」という回答が 1.7 倍高くなっています。AI 戦略とワークフォース戦略は、相互に連携させる必要があります。目標はツールを増やすことではなく、業務環境を改善することです。
「潜在的な影響を最小限に抑える最善の方法は、ツールを積極的に活用してスキルを習得することです。AI に関するスキルだけでなく、人間関係上の難しい問題に対する判断力など、AI では再現が難しいシステム思考などのスキルも重要です。これにより、社員が能力を発揮できる環境が実現します」(Romero)
人事部門のリーダーが今すぐできることを以下に示します。
職務や地域ごとに、実際に誰が AI ツールやトレーニングを利用できるのかを確認する
社員自身の裁量で処理することが難しい細分化された業務を見直す
AI によって短縮された業務時間を、ラーニング、メンタリング、ストレッチ アサインメントに割り当てる
生産性と合わせて、インクルージョンの成果を測定する
特定の社員にとって効果的なアプローチが、すべての社員にとっても効果的であるとは限らないため、画一的なアプローチは避ける必要があります。Romero は、組織が明確な意図を持って取り組まなければ、社員が負担を感じたり、取り残されたりするリスクが生じると指摘します。
二層化したワークフォースを回避するには、リーダーが AI 導入の成功を、「AI によって何ができるのか」という視点だけでなく、「誰が AI の活用に意欲があるのか、誰が AI の活用を通じて成長できるのか」という視点に基づいて定義する必要があります。
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