「なぜタスク型AIでは、企業変革は進まないのか:分断された業務を、人がつなぎ続ける限界」日本における、より意義ある仕事の実現に向けて
Workday の最新調査では、日本の従業員は AI の活用に前向きな姿勢を示す一方、多くの人が依然として、分断されたシステムやデータ、チームをつなぐために多くの時間を費やしていることが明らかになりました。
Workday スタッフ ライター
Workday の最新調査では、日本の従業員は AI の活用に前向きな姿勢を示す一方、多くの人が依然として、分断されたシステムやデータ、チームをつなぐために多くの時間を費やしていることが明らかになりました。
Workday スタッフ ライター
日本のビジネスリーダーは、人々が専門性を最も発揮できる仕事に集中できるようにしながら、テクノロジーを通じて持続可能な成果をどのように支援できるかを検討しています。
Workday が実施した最新調査は、それを実現するための基盤がどのようなものであるかを示唆しています。日本の従業員は、会社に対して強いコミットメントを感じており、AI の活用についても総じて前向きに捉えています。一方で、多くの従業員は、業務に取り組む上で見えない負担というものを抱えています。たとえば、チーム間での業務を調整や、分断されたシステム間の情報の照合、ワークフローがつながっていない場合には手作業でプロセスを進める必要があるのです。
こうした見えない作業は、意思決定を遅らせ、不要なやり直しを生む原因となり、従業員は業務の進捗が実感できない、という結果につながります。そのため、本調査は、AI 活用の次の段階を検討する企業にとって、統合されたシステムや信頼性の高いデータ、明確なガバナンスを兼ね備えた日々のワークフローにAI が組み込まれるべきであることを示唆しています。
レポート
従業員は仕事に意欲的で、AI 活用にも前向き
本調査では、日本の従業員が高いコミットメントを持って働いていることが明らかとなっています。多くの従業員は、自身の仕事の成果とのつながりを感じ、組織がより大きな目標を達成する上で自分が果たすべき職務を理解しています。これは、テクノロジーや業務モデルの変革を進める上で重要な出発点です。
また、AI がすでに多くの従業員の業務体験向上に貢献していることも明らかとなっています。従業員は、AI がタスク完了までに必要な時間を短縮し、より生産的に仕事を進める助けになっていると回答しています。AI 活用に拒否反応を起こすのではなく、むしろ AI をより有用で実践的な形で活用することを望んでいると考えられます。
経営層にとって、そうした従業員の意欲は、AI 活用へとシフトしていく上での建設的な足掛かりとなります。どの業務が不必要に複雑化しているのか、どのプロセスで手作業が最も多く発生しているのか、そしてテクノロジーによってどの業務体験を改善できるかについて、意欲的な従業員から重要な知見を得られるからです。AIの導入は、そうした日々の業務実態を深く理解することから始めることで、より高い効果を発揮します。
日本の従業員は AI 活用の準備ができている
92% が日々の業務体験を前向きに評価
93% が自分の仕事に対して強い当事者意識を感じている
89% が AI によって日々の業務体験が改善したと回答
74% が AI によってタスク完了までの時間が短縮されたと回答。これは世界平均の 61% を上回る
63% が AI によってより生産的に仕事を進められるようになったと回答
忙しい1日の中に潜む、見えない負担
一方で、従業員は仕事に意欲を持っていても、業務を進める上で障害を感じてしまうことがあります。本調査は、多忙であることと、 1 日の業務を終えた時点で、意義のある進捗を実感することの間にギャップが生じていることを示しています。これは、人事や財務、IT、オペレーションの各部門を率いるリーダーにとって注目すべき点だと言えます。
多くの企業では、円滑な業務進行のために、従業員が部門・システム間のやり取りや承認プロセスに介在し、調整役を担っています。必要な情報を探し、複数のレポートを照合し、同僚のためにデータを解釈し、タスクが次の担当者にわたるよう働きかけるのです。こうしたアクションは必然的に行われますが、プロセスマップや要員計画、生産性指標上には表面化しません。
時間の経過とともに、システムやワークフローが統合されるべき課題として認識されるのではなく、こうした調整業務が職務の一部として認識され、組織の運営方法に組み込まれていきます。しかし、高い能力を持つ人財が、情報の受け渡しや不整合の解消、定型的な引き継ぎのフォローアップに1日の多くの時間を費やすことになれば、その人の判断力や、ネットワーク、経験、創造性を必要とする本来の業務に時間を割くことができなくなります。
これは、分断された業務を機能させるために、人がシステムやプロセスの間に介在してつなぎ続けたことで限界を迎えた結果によるものです。従業員の意欲や能力の問題ではありません。異なるタイミングで、異なる目的で導入・利用されてきたシステムが、必ずしも情報やワークフローの文脈を容易に共有できないという業務環境が招いた結果です。
時間が失われている領域
76% がチーム間、またはシステム間で業務を調整・橋渡ししている
71% がシステム間で情報を受け渡している
65% が事務作業による非効率を感じている
63% が矛盾するデータやレポートを照合している
53% が複数のツールに情報を再入力している
1日の業務を終えた時点で、意義ある進捗を実感できたと回答した人は 73% で、世界平均の 89% を下回る
業務の流れに AI を組み込む
すでに多くの企業でAI の採用が進んでいる一方で、AI が中核となるプロセスに組み込まれていない企業が多いことが本調査で示唆されています。
主に追加ツールとして導入される AI は、初校の作成や文書の要約作業、必要な回答を急ぎで探すといった、個々の作業を即時でサポートすることができます。その場で支援が必要となる従業員にとって、こうした AI 活用は非常に有用です。
しかし、もっと広い範囲の工程を対象にした業務プロセスにおいても同じような手作業が依然として必要になる場合があります。情報を他のシステムに転記し、それを違うチームが確認して、複数の承認を通さなくてはいけないかもしれません。従業員はつなぎ役として、アウトプットが承認されるまで次のワークフローに回っていることを確認し続けなければいけないのです。
一方で、エンドツーエンドの業務プロセスの中で明確に定義されたアクションを AI がサポートする、統合アプローチがあります。たとえば、重大な変更のモニタリングやレビューを受ける資料の準備、適切な承認者の特定や業務フローで必要な関連ガイダンスの提示などがあげられます。システムは定型的な調整作業をこなし、従業員は何らかの判断や管理、臨時対応が必要な時に責任者として介在するというアプローチです。
本調査によると、従業員はそうしたアプローチが実現できつつある領域として、たとえばパフォーマンスデータの把握や、新入社員の支援、承認に必要な部門間連携、財務計画やレポーティング支援を挙げています。これらの領域は、組織を運営するために業務と密接に関わっています。
これこそ、大きなビジネスチャンスです。AI は、組織の一部における個々のタスクを改善するだけでなく、組織全体にわたる業務フローを支援できる可能性を持っているということです。焦点は個々のタスクを完了する時間を短縮することから、従業員や管理職、経営陣がより連携した業務体験を実現していくことへシフトしていくことにあります。
中核システムに AI が組み込まれているユースケース
48% が業務指標をモニタリングし、必要なアクションを提案
43% が新入社員のオンボーディングを支援
41% が部門横断の業務における承認者の特定
35% が予算策定および予測を支援
35% が人事またはポリシーに関する質問に回答
31% が決算または財務報告を支援
39% が自社では AI が中核となるワークフローに直接組み込まれていると回答
統合された基盤が提供する価値
日本を含む、アジア太平洋地域の調査結果によると、どこに AI が組み込まれているかが、従業員が実感する価値に影響を与えていることを示しています。AI が中核システムに統合されている企業は、統合されていない企業と比べて、大幅な時間短縮を報告する傾向が強くなっています。
この傾向について、慎重に検討する価値があります。AI は、それを取り巻くデータやワークフロー、ガバナンスから独立して機能するものではありません。情報が正確で、アクセスが可能か、説明責任が明確になっているか、そして業務プロセスによって得られたインサイトを適切にアクションにつなげられるかによって、AI の本来の価値が決まります。
今回の調査から、AI の価値を阻む可能性のある制約についても明らかになりました。トレーニングやツールへのアクセスのばらつきに加え、利用しにくいガバナンスプロセス、AI を利用する上でのガイダンスのわかりづらさ、硬直的なワークフローや、一貫性のないデータなどが含まれます。これらの制約、どれか一つ当てはまるだけでも、組織規模で有望なテクノロジーを採用するときの致命的なブレーキになりがちです。
今回の文脈では、信頼性が特に重要です。信頼性の高いデータやシステムが AI を支えている場合、AI が支援する意思決定も信頼性の高いものとなります。信頼性の高いソースは、レポートに矛盾がないか照合する作業を減らし、チームが共通認識を築くための明確な基盤となります。
リーダーにとって、これは AI 戦略と業務の運用モデルの改善を一体的に検討すべきことを示唆しています。データ基盤を強化し、重要な業務の引き継ぎを見直し、ガバナンスを明確にすることで、AI が日常業務により確実に貢献できる環境を整えることができます。
AI の価値を支える基盤
中核システムに AI を組み込んでいる組織の APJ 地域の従業員の 65% が、AI によりタスク完了時間を25% 以上削減できたと回答
中核システムで AI を活用していない組織で、同程度の時間短縮を回答した人は わずか36%
日本では、79% が「基盤となるシステムとデータの信頼性が高い場合、AI は意思決定の確度が高い」と回答
日本の従業員の 67% が、自社には広く信頼される単一の情報源があると回答。一方で世界平均は 78%
34% が AI による価値創出を阻む制約として、スキルやトレーニング、AI ツールへのアクセスにばらつきがあると回答
20% がデータ品質の低さ、または一貫性の欠如を制約になると回答
今後に向けた慎重かつ実践的なアプローチ
従業員は、分断された業務環境を乗り切るために工夫を重ねてきました。その努力は、情報を適切な人に提供し、意思決定を支え、部門を横断する業務を推し進めています。こうしたコミットメントは、組織が今後、変革を推進していく上での強みになります。
今回の調査では、リーダーシップチームが、調整業務の負担をどう削減できるかを検討することで、効果を得られるかもしれないことを示唆しています。まずは、チームやシステム、承認段階の間で、業務がどのタイミングで引き継がれているかを洗い出すことから始めるのが効果的だと言えます。これにより、遅延の最大の原因となっている領域や手作業による照合に最も労力を必要とする領域、全体像を把握しにくくしている領域を特定することができます。
そのうえで、企業は、AI がワークフローの中で明確に定義されたステップをどこまでサポートできるかを検討することができます。対象となる領域には、臨時対応、レビューを受ける資料の準備、適切な承認者の特定や新入社員のオンボーディング支援、従業員が正確なポリシーやプロセスのガイダンスにアクセスするための支援などがあげられます。
こうしたアプローチは、AI の導入が組織における既存の優先事項、つまり信頼できる意思決定、適切なガバナンス、優れた従業員体験、持続可能なパフォーマンスを支えることにつながります。また、人事、財務、IT、オペレーションの担当者がこれからの働き方を形成していくための、より実践的なアプローチにもなります。
日本の従業員は、仕事に意欲を持ち、AI の可能性に前向きであることが示されています。組織を取り巻く仕組みやプロセスを強固にすることで、従業員が掲げるコミットメントを日々の具体的な進捗へと結びつけ、前進させることができます。
調査概要: Workdayは、The Harris Pollに委託し、人事、財務、IT、オペレーション部門の世界 6,100 人の業務に従事する実務担当者および管理職を対象に調査を実施しました。このうち日本人回答者は 200人 です。回答者は、従業員数 500 名以上、年商 1 億米ドル以上の企業にフルタイムで勤務し、組織および自身の業務において、日常的に AI を活用しています。調査は 2026 年 3 月 2 日から 24 日にかけて実施されました。
生データには重み付けを行っておらず、調査結果は回答者の回答のみを対象としています。
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