エンタープライズ ソフトウェアが AI に適した基盤である 3 つの理由
B2B ソフトウェアが時代遅れに感じられる場合は、AI を導入する最適なタイミングであることを示しています。
Julie Colwell
プリンシパル ストラテジスト
Workday
B2B ソフトウェアが時代遅れに感じられる場合は、AI を導入する最適なタイミングであることを示しています。
Julie Colwell
プリンシパル ストラテジスト
Workday
過去 2 年間、エンタープライズ ソフトウェア企業は厳しい評価を受けてきました。「AI エージェントが業務を処理できるのであれば、なぜソフトウェアに料金を支払い続ける必要があるのか?」という疑問を持たれてきたのです。初期の株価下落は、「SaaS の終焉」の到来を示唆しているように見えました。
しかし、そうはなっていません。それどころか、状況は好転しています。エンタープライズ ソフトウェア企業は、責任ある AI を大規模に活用できるという独自の立場を実証しています。そして、「顧客からの信頼を得る」という最も難しいことも実現しています。
SaaS 企業には、AI の適切な基盤を構築するための 3 つの重要な優位性があります。
運用モデル (IT): システム自体の構成 (ロール、権限、承認フロー、管理ルールなどがプラットフォームに組み込まれている)
価格設定モデル (財務): 業務の測定、帰属、請求を行うための仕組み
人財モデル (人財管理): ワークフォースのオンボーディング、範囲定義、評価、オフボーディングを行うための仕組み
エンタープライズ SaaS が持つこれらの優位性により、AI エージェントを使用して、給与計算、アクセス権の管理、財務業務などを安全に処理することができます。これが、「SaaS の終焉」が現実のものになっていない理由でもあります。SaaS の中で「時代遅れ」と感じられていた部分が、結果的には、重要な事項を AI に任せるための前提条件になったのです。
ガイド
エンタープライズ ソフトウェア企業は当初、トランザクション データが多いこと、各データが整理されていること、継ぎはぎのシステムではなくひとつのシステム上でデータが一元管理されていることなど、自社の優位性をデータに求めようとしました。これは事実ですが、それだけではありません。
データを通じて、現在の状況をモデルに伝えることはできますが、次に何を実行すべきか、どのようなルールに基づいて誰の権限でそれを実行すべきか、問題が発生した場合に誰が責任を負うのかまでは、データで示すことはできません。これらは、業務の処理において絶対に必要な条件です。企業は、ミスを瞬時に拡大させたり、エージェントに誤った学習をさせたり、影響範囲を理解しないままエージェントを導入したりするリスクを冒すことはできません。リスクが大きすぎるのです。
Workday の CEO を務める Aneel Bhusri は、「人事業務と財務業務は決定論的であり、管轄区域にかかわらず完全な正確性と監査可能性が求められる」と指摘しています。人事アナリストの Josh Bersin もこの意見に同意し、「システム オブ レコードにすでに組み込まれている権限、セキュリティ モデル、コンプライアンス ロジックは、エージェントが安全に動作するためのレールとして機能する必要がある」と言います。こうしたレールをゼロから構築するのは、大きなコストとリスクを伴いますが、外部からは過小評価される傾向があります。
そのため、エンタープライズ AI には、単なるデータセットではなく、信頼性の高い運用モデルが必要になります。ビジネスを運営するシステム オブ レコードの内部で、ケースごとに運用モデルを構築する必要があります。
ビジネスを運営するシステム オブ レコードの内部で、ケースごとに運用モデルを構築する必要があります。
例として、Medtronic 社の事例を見てみましょう。このヘルスケア テクノロジー企業は、人事プロセスの 80% を自動化することを目標として、年間約 12,000 人の採用を行う人財獲得業務の効率化に着手しました。同社の AI エージェントには、職務別に異なる設定が定義されています。たとえば、上級医療スペシャリストの場合、一般的な職務よりも細かく設定された選考プロセスが適用されます。このような、ロール ベースでポリシーを考慮した設定は、モデルから提供されるのではなく、プラットフォーム自体に組み込まれている必要があります。
同社のプラットフォームは、フランスとテキサスでは解雇がどのように処理されるのかをすでに把握しているため、汎用的なエージェントに社内のルールを試行錯誤で学習させ、エージェントの誤りによる損失が小さいことを願う必要はありません。権限は学習によって取得されるのではなく、継承されます。
この仕組みは、外部の AI モデルには存在しません。
エンタープライズ ソフトウェア企業が持つ 2 つ目の優位性は、進化する価格設定モデルです。
使用量ベースの価格設定になっているため、社員数に合わせた固定のシート数ではなく、エージェントが処理した業務に対して課金されます。
Gartner 社は、2030 年までにエンタープライズ SaaS への支出の 40% 以上が、使用量ベース、エージェントベース、または成果ベースの価格設定に移行すると予測しています。現在は、多くの業種でこの価格設定モデル (またはハイブリッド モデル) が採用されています。
使用量ベースの価格設定は、ソフトウェアであると同時に労働力でもあるサービスの価値を公平に評価するための唯一の方法です。
使用量ベースの価格設定は、ソフトウェアであると同時に労働力でもあるサービスの価値を公平に評価するための唯一の方法です。運用モデルと同じ権限とデータ管理の仕組みを通じて、エージェントによる処理内容の測定、帰属、監査を行うことができます。
このモデルでは、エージェントによる処理内容のすべての単位とその帰属先が記録されるため、請求書が明確な財務記録になります。
この 2 年間で明らかになったのは、将来のワークフォースは、社員と AI エージェントの両方で構成されるということです。この組み合わせを適切に管理できない企業は、後れを取ることになります。
エンタープライズ SaaS を活用すれば、将来のワークフォースに円滑に移行することができます。 B2B ソフトウェアは、中核的な人事ワークフロー (オンボーディング、役割の定義、パフォーマンスの追跡、アクセス権の変更、オフボーディングなど) にすでに組み込まれています。AI を後付けするのではなく戦略的に統合すれば、プロセスを再構築することなく、人財モデルを通じて、社員と AI エージェントを並行して管理できるようになります。
社員と同様に、AI エージェントを安全にオンボーディングし、その役割と責任を定義して、コストと影響を追跡することができます。
社員と同様に、AI エージェントを安全にオンボーディングし、その役割と責任を定義して、コストと影響を追跡することができます。すでに多くの顧客が、こうした機能をエンタープライズソフトウェア企業に任せているため、エンタープライズ SaaS 企業の AI は、ガバナンスのないソリューションを後付けする場合よりもはるかにリスクが低くなります。
エンタープライズ SaaS を時代遅れだと感じる要素 (ガバナンスに伴うオーバーヘッド、厳格な請求管理、人事に関する煩雑な手続きなど) は、実際には、AI を安全に活用するための基盤であることがわかりました。承認者と承認内容をすでに把握し、業務単位ごとに計測と監査を行い、ワークフォースを適切に管理するプラットフォームは、時代遅れのシステムではありません。組織に代わって AI エージェントが機能するように構築されたプラットフォームなのです。
エンタープライズ SaaS は、組織に代わって AI エージェントが機能するように構築されたプラットフォームです。
こうしたプラットフォーム内では、社員と AI エージェントの境界線があいまいになり、役割と承認フローが増え、ハイブリッドな組織構造が生まれることが予想されます。価格設定についても、エージェントによる処理内容に基づく価格設定へと移行を続け、それを証明する情報が記録されると考えられます。また、ガードレールの検証に伴い、エージェントが担当する業務範囲が徐々に広がっていくことが予想されます。長年にわたって人間のためのソフトウェアを開発してきたベンダーには、すでに「信頼」という基盤が存在するため、その基盤を AI エージェントにまで拡張することができます。
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