ヤンマーホールディングスは、時代をリードするテクノロジーを軸に、大地・海・都市のあらゆる分野でエネルギーの有効活用に取り組んでいます。2016 年からは、持続可能な資源循環型社会の実現を目指し、ブランドステートメントとして「A SUSTAINABLE FUTURE -テクノロジーで、新しい豊かさへ。-」を掲げています。
2024 年 3 月期の売上高は 1 兆 814 億円に達し、そのうち 61.2% が海外売上です。従業員数は国内約 1 万 4,000 人、海外約 7,000 人にのぼり、世界各地に生産・販売拠点を設け、地域の特性やニーズに合わせた最適地生産・最適地調達を推進しています。
創業者の精神に基づいた「HANASAKA」の価値観は、人事戦略「Yanmar 3 Circle」に引き継がれています。これは「Challenge (挑戦) 」「Character (個性) 」「Contribution (貢献) 」の 3 つの C を軸とし、社員の挑戦を支えるキャリア制度、多様な働き方や個性を尊重する仕組み、成果に応える報酬・福利厚生制度を整備するものです。
さらに 2024 年 7 月には、従来の従業員管理から一歩進め、従業員をサポートし成功へ導くことを目的に「エンプロイーサクセス本部」を新設しました。
導入の背景(課題と選定の理由)
従来の人事システムは人事担当者のみが利用できる仕組みで、情報の共有に制約がありました。2018 年には、グローバル人財情報の可視化を目的に他社のタレントマネジメントシステムを導入しましたが、各社の異なる人事システムからデータを集約するため、情報の品質にばらつきが生じ、十分に活用できませんでした。
この課題を解決するため、オープンで透明性の高い人事システムとして Workday HCM を導入することを決定しました。Workday HCM は「社員の目線」「会社の目線」「グローバル展開」「運用の容易さ」という点で同社の要件と合致していました。
社員の目線からは、現状のスキルや目指すポジションに必要なスキルを客観的に把握し、キャリアプランを設計できること、またスキルギャップを埋める教育プログラムの推奨を受けられることから、キャリア自律の基盤となります。
会社の目線からは、社員のスキルに応じた人財配置や、中期戦略を踏まえた人財ポートフォリオの把握・構築、さらには経営後継者の選抜・育成が可能となり、グローバルでの組織力強化につながります。
同社は Workday HCM を活用することで、社員一人ひとりの自己実現やエンゲージメントの向上、さらには事業の成長・発展につなげていく考えです。
海外売上比率が 60% を超え、グルーバルでプロジェクトを進めるには、グローバルを含めたすべての人財やスキルを把握でき、「OneYanmar」でチーム編成ができる Workday HCM が必要でした。
浜口 憲路 氏 ヤンマーホールディングス株式会社 取締役 CHRO エンプロイーサクセス本部 本部長
徹底した準備と段階的導入の実践
導入にあたっては、前述した社員目線と会社目線で目的を設定したうえで、システム選定から契約、プロジェクト準備まで約 1 年をかけて進めました。準備段階では、グローバルグレードの導入、グローバル規模で社員・スキルを横断的に把握できる仕組みの整備、キャリアディベロップメントプログラムを通じたスキルマップ作成などを実施しました。その上で Workday HCM を導入し、経営後継者育成やグローバルでの人財配置に対応しました。これらを一元的に実現できるのが Workday HCM の強みです。
導入は 4 つのフェーズで進められています。フェーズ 1 (2024年秋) では、GDPR により個人情報管理が厳格な欧州の子会社 3〜4 社を対象に試験導入を実施しました。欧州での運用が成功すれば、北米や東南アジアなど他地域への展開もスムーズに進められると判断したからです。フェーズ 2 では国内 3 社と一部海外子会社へ、フェーズ 3 (2025 年 4 月)で国内連結会社すべてへ導入を完了しました。そしてフェーズ 4 でグローバル全体への展開を予定しています。
試験導入の段階ではステークホルダーから多様な要望が寄せられましたが、社員目線と会社目線の両面から優先順位を整理し、必要最小限の機能から導入を開始しました。
HANASAKAの精神を基盤にした人事戦略をグローバルへ
導入過程では、ジョブディスクリプションの整備やレポートラインの明確化など、多くの課題に直面しました。しかし、それらを乗り越えることで、グローバルスタンダードに近づけたと評価しています。
Workday の導入にあたっても、創業者の精神である「HANASAKA」をベースに人事戦略を考えていきました。社員の目線、会社の目線の双方を考慮して、社員と会社の成長を両輪で進めることを目指しています。2025 年は中期経営計画の最終年度にあたり、人財マネジメント基盤の再構築という大きな目標を達成しました。今後はグローバル展開をさらに加速させ、追加機能の導入を進めながら、HR モダナイゼーションを一層推進していく方針です。
人への投資を通じて社員のスキルを伸ばし、戦力化を進めていきたいと考えています。その際には経営とも連携しながら、生産性を高め、より戦略的な仕事へシフトできる体制をつくっていきたいと思います。
浜口 憲路 氏 ヤンマーホールディングス株式会社 取締役 CHRO エンプロイーサクセス本部 本部長
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