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組織のアジリティ:日本企業のデジタル トランスフォーメーションを阻む官僚主義とレガシー テクノロジー

世界的な調査: 変化に対応する用意があると確信している企業はわずか 4%

 

Workday がグローバルに実施した最近の調査によると、日本企業はビジネス モデルの革新とデジタル トランスフォーメーションの推進という点でヨーロッパ企業に後れを取っています。Longitude 社による調査「組織全体におけるアジリティ: デジタルの成長を推進する鍵」では、アジア、ヨーロッパ、北米で約 1,000 人のビジネス リーダーを対象に調査を行いました。半数を超える日本企業で、ビジネス モデルの変革が「かなり進んで」おり、デジタル製品やサービスの充実を図っていることが明らかになりました。

この調査は、組織はどのようにすればデジタル トランスフォーメーションへの投資がそれに見合った成果を生み出せるのか、明らかにすることを優先事項として実施されました。調査により、デジタル分野での収益拡大と組織のアジリティには強い相関関係があることが明らかになりました。ここで言うアジリティとは、「リーダー企業」がデジタル分野での収益を拡大し、デジタル トランスフォーメーションを 1 回限りではなく、常に取り組むようにするさまざまな行動のことです。

 

リーダー企業、遅れている企業、追随する企業: 先頭を走るのは少数の企業

Workday はこの調査を通じて、デジタル分野での収益拡大を目指してビジネスを変革するために、すでに日常業務のレベルでアジリティに取り組んでいるリーダー企業が複数存在することを突き止めました。この「リーダー企業」は、グローバル調査に回答した企業全体の 15% を占めます。

これに対して、アジャイル トランスフォーメーションがなかなか進んでいない、または開始していない「遅れている企業」は、全体の半数以上を占めます。組織全体でまだアジリティを発揮できていないもののその途上である「追随する企業」は、全体の残りの 30% を占めます。

 

日本企業のデジタル分野での収益は 2022 年までに増加が見込まれるが、期待値はヨーロッパ企業を下回る

調査によると、日本企業の 44% は 2022 年までに収益の 50% 以上がデジタル分野から得られると予測しています。この割合を他国と比較すると、フランス (57%)、ドイツ (55%)、英国 (53%) となっています。

組織全体でアジリティを備えたリーダー企業であれば、収益のかなりの部分が新しいデジタル事業から得られる割合がそうでない企業より 2 倍多く、アジリティとスピード感をもって市場の変化に対応できる割合が 10 倍多く、その結果デジタル収益における高い成長が見込まれます。

 

デジタル分野での成長を妨げるもの

「サイバーセキュリティ、コンプライアンス、またはプライバシーに関する問題」は、日本を除くすべての地域で最大の懸念点でした。次の懸念点は、「組織構造が部門で分断されていて、必要なスピードで行動できない」(40%)、そして「リスク回避型の思考」でした。

地域によってアジリティの浸透度や成熟度は異なりますが、この調査結果から、アジャイルな組織の 5 つの特徴が浮き彫りになりました。日本企業の主な回答を分野ごとにまとめました。

 

日本企業は、必要なタイミングでいつでもビジネス プランニングを行えるようにする必要がある

プランニング サイクルが 1 年という長い期間では、今日の不安定かつダイナミックな市場には通用しません。組織はこれまで以上に、どんなタイミングでもプランニングできるようにならなければなりません。組織全体で戦略を立て実行に移せるようにしているので、経済環境の変化などの外的な変化に対応できると回答した企業はわずか 4% でした。これは、世界中で最も低い数値です。

日本のリーダー企業は、「官僚主義的な組織文化」(32%) および「柔軟でないレガシー テクノロジー」(26%) を、いつでもプランニングできるように変革しようとするときの二大障壁として挙げています。

 

組織の構造とプロセスが流動的であれば変化に正面から向き合える

調査では、組織が新しいビジネス チャンスを活かすためリソースをどの程度柔軟に再配置できるかに着目しました。これはリーダー企業に共通して見られるコアな能力です。人財を必要なスキルに応じて配置転換することができるリーダー企業の割合は、遅れている企業より 5 倍多くなっています。同様に、スキルとスキル ギャップを数値化して測定できるシステムがあるリーダー企業の割合は、遅れている企業より 5 倍多くなっています。

回答した日本企業の 31% は、組織構造やプロセスを状況に合わせて変えられる流動性を持たせようとするとき、最大の障壁になるのが官僚的な組織文化だと指摘しました。またこのほかの障壁として、組織全体で巻き込めていないこと (28%)、部門間での意思統一の欠如 (26%) が、挙げられました。

 

日本のリーダー企業が未来のために求めるのはデータ サイエンスと高度な分析スキル

アジリティを現実のものとするために必要な計画、組織構造、プロセスに対応するには、さまざまなスキルが必要です。ハード スキルとソフト スキルを適切に組み合わせても、それだけでは十分ではありません。今後のワークフォースには、絶え間ない変化に対処する認知能力がますます欠かせないものになります。

高度な分析能力とデータ可視化能力 (33 %)、新しいツールやテクノロジーを使いこなす能力 (30 %) も、日本のワークフォースにとってこれから重要なスキルになると考えられています。日本の企業は、絶え間ない変化に対処する認知能力 (29%) と、リスクを特定、予測、そして管理する能力を将来求められるホット スキルとして挙げています。

また、日本のリーダー企業の 42% は、ビジネス環境の進化に対応するべく、今後 5 年以内にワークフォースの半数以上をスキルアップさせなければならないと回答しています。

このような変革を行うには、従業員の意欲を保ち、優秀な人財の流出を防ぐことが企業にとって重要な課題となります。回答した企業の 4 分の 3 は、組織の成功は従業員の意欲を保つことができるかどうかにかかっていると認識しています。そして、67% の企業は、人財の流出防止のために、組織はマネージメントに対してより柔軟な考えを持つ必要があると回答しています。

 

データを民主化して、意思決定の判断材料を増やし、意思決定権の委譲を行う

社員には、適切なタイミングで適切な情報を提供して、ビジネスにとって最良の決定を下せるようにする必要があります。これこそ組織のアジリティの基盤の重要要素であり、回答したリーダー企業ではこのデータの民主化が進んでいます。

IT 部門の手を煩わすことなくデータにすばやくアクセスできるようにすれば、IT 部門はもちろん、他の部門にとってもメリットになります。リーダー企業はこのことを熟知していて、タイムリーに情報を提供しデータにアクセスできるようにすることは、企業のさまざまな部門での意思決定を円滑にする上で非常に重要であるとしています。リーダー企業の 5 社に 4 社が、企業全体でデータに制限なくアクセスできるようにしていて、99% が、データと情報に自由にアクセスを認めることが意思決定の委任の推進力になると回答しています。

72% が、「アクセスが一部制限: データにはアクセスできるが、その多くは部門間で分断されているか古すぎる」と回答しました。それぞれの地域での文化が背景になっているかもしれませんが、世界的に見ると、5 社に 1 社が自社の組織階層が原因で意思決定が効果的に委任できないとしています。

意思決定の判断材料を増やし、決定権を委譲できるようにするには、従業員に適切なタイミングで適切なデータへのアクセス権を与えるだけでは十分ではありません。余計な見張り役を設けず、社員がデータに制限なくアクセスできるようにすること、そしてそのデータを使用して会社の利益を最優先に考えた決定を下せるように権限を与えることも重要です。

 

統制: 評価とガイダンス

イノベーションによって財務業績目標を達成するためには、アジリティとスピードを発揮するとともに、デジタル事業を詳細にモニタリングし、統制する必要があります。調査に参加したリーダー企業はこの点を理解しており、他の企業に比べて新しいデジタル製品やサービスの成果を数値化し測定するツールを導入している割合が 2 倍も高くなっています。

しかしながら、5 社に 1 社は、デジタルが主流になっているこの時代に成果を数値化する KPI を定めていないと回答しています。特にリーダー企業はほとんど、成果の数値化が課題であることを認めています。さらに、デジタル ビジネスにおける増収のパフォーマンスを測定することが進んでいる組織はわずか 4 分の 1 です。デジタル ビジネスでの収益が増加するにつれて、新しい KPI が必要になっています。

また、多くのリーダー企業には「fail fast (早く失敗せよ)」の精神が根付いています。リーダー企業の 90% 以上は、プロジェクトが失敗すると迅速に方向転換していると回答しています。失敗から学ぶことを奨励する文化があると回答したリーダー企業の割合も、それと同じくらい 90 % です。これら 2 つの要素は、アジャイルで成功を収める鍵となります。明日の勝者になり最大限の成功を収めるには、新しいデジタル プロジェクトの影響をすばやく見極め、失敗であると判断したら迅速かつ大胆に方向転換する必要があります。

 

終わりに

デジタルファーストの競合他社と絶え間なく進化する市場に後れを取らないようにするには、日本企業はデジタル トランスフォーメーションを実現し、それによってもたらされる成長機会を活かす必要があります。この調査で明らかになったとおり、デジタル分野での継続的な成長をリードしているのは、組織のアジリティを構成する 5 つの特性のうち、すべてとは言わないまでも、その多くを獲得することに成功した企業です。遅れている企業は、遅れを取り戻すチャンスはまだあるものの、時間が押し迫っていることを認識する必要があります。

アジリティへの移行は連続的なものです。組織はサイロ構造や官僚主義的なプロセス、従来の働き方から、組織のアジリティを構成する 5 つの特性すべてを取り入れている状態にシフトしていくのです。継続的なプランニング、順応性が高く流動性のある組織の構築、ワークフォースのスキルアップ、データの提供と権限の委譲、適切な評価とガイダンスの導入、これらすべてを実現できる企業は、絶え間なくイノベーションを生み出してデジタル分野での収益を拡大し、企業の将来に向けて備えることができます。