不確実な時期にビジネス アジリティを獲得する方法

COVID-19 パンデミックがビジネスと経済にいつまで影響を与えるかはまだはっきりとわかっていません。このような不確実な時期でも企業を成功に導くために財務チームが導入すべき 3 つの重要なプランニング プロセスをご紹介します。

COVID-19 は人類に未曽有の脅威をもたらすとともに、世界中のビジネスに前例のない影響を及ぼしています。Workday では、お客様がこの危機を乗り越えるために今どのようなことを実践しているか聞くことが多くなってきました。その中でも特に多いのが、アジリティとレジリエンスの重要性についてです。

平常時であっても、アジリティは企業にとって将来を予測し、変化に対してすばやく行動して、顧客の需要、市場の変化、競争の脅威に不安なく対応できるかどうかを左右する要因です。そして今日、アジリティはこの危機に対応してレジリエンスの高い、つまり変化に対してしなやかに対応できる組織に生まれ変わるために欠かせない属性として注目されています。言い換えれば、ビジネス アジリティの高い組織ほど、現在のパンデミックとそれがもたらす影響をうまく乗り切れることになります。

この歴史的に見ても非常に厳しい状況下で、世界中の企業が最善を尽くしています。しかし、現在直面しているような問題を想定した対策を立てていた企業は多くありません。その後を見据えた計画については言うまでもありません。事実、4 人に 3 人の財務担当幹部が、現在のプランニング プロセスについて、経済的あるいは地政学的な壊滅状態を想定したものではなかった、ましてや世界的なパンデミックによる経済衰退など考えてもみなかったと認めています。

Workday のお客様の間では、アジリティを強化しようとする動きが見え始めています。3 月 23 日から 27 日までの間、Workday のクラウド プランニング プラットフォームでは、お客様が実行した予測と軌道修正のシナリオの数は通常の 1 週間の 30 倍になりました。また、COVID-19 パンデミックの発生以来、この世界的脅威が自社のビジネスに及ぼす影響を見極めようと世界中の企業がモデリングと再調整を行い、その量は全体で平均 15 倍増加しています。

危機的状況で鍵を握る財務部門

対応に乗り出した財務部門のリーダーが悟ったのは、アジリティはプランニングから始まるということです。これは平常時にも当てはまりますが、今日のように世界が危機的状況にあり、企業が安定を取り戻そうとしているときには一層意味を持ちます。また、デジタル化とグローバル化が急速に進む今日のビジネス環境において、年に 1 回プランニングし途中で何があっても変更しないという今までの方法では競争力が壊滅的に低下する可能性があることが明らかになりつつあります。

しかし、これは悪いことばかりではありません。今日の危機的状況にあって、財務部門は、組織全体のアジリティ向上の鍵を握るのが自分たちであることに気付き始めています。

なぜでしょうか。

当然のことですが、財務部門にはすべての財務データと業務データが集まります。財務部門は、ビジネスのあらゆる面に関与しているため、企業のロードマップの基礎になる予算編成や収益予測を中心となって進めることになります。この役割の中で、財務部門はプランニング プロセスを決定し、アジリティ強化のためのツールであるシナリオ プランニング、継続的なプランニング、ローリング フォーキャストを管理することになります。

では、この不確実な時期にビジネス アジリティを強化するために財務部門が導入すべき 3 つの重要なプランニング プロセスについて詳しく見ていきましょう。

シナリオ プランニング

シナリオ プランニングは、What-If 分析を強化したようなものと考えてください。プランニング プラットフォームを使用して、競争上の脅威から、サプライチェーンの寸断、自然災害、戦争、パンデミックまで、あらゆる要因に基づく複数のシナリオをモデリングできます。

この強力な機能を使えば、現在の危機が 30 日、60 日、90 日、あるいはそれ以上続いた場合のビジネスへの影響を予測することができます。たとえば、部品を 60 日間調達できなかったらどうなるか、90% の社員が在宅勤務を余儀なくされたらどうなるか、製造工場の 1 つが停止したらどうなるか、などを予測できます。

将来起こり得るさまざまな状況をモデリングすることには意義があります。国際宇宙ステーションの元船長である Chris Hadfield 氏は、宇宙空間で長期間安全に過ごすために、ミッション チームが多大な時間を費やしてさまざまなシナリオを検討してモデリングしたと述べています。そのため、宇宙ステーションの酸素発生装置が故障したときにも、乗組員は慌てることなく対処できました。

すべてのシナリオが喫緊というわけではありません。しかし企業にとって、世界的なパンデミックとまではいかないにしても、サプライチェーンの崩壊や労働環境の変化が収益や事業運営に及ぼす影響など、起こりそうもないシナリオについて計画を立てられるかどうかが組織の存亡につながることもあるのです。

継続的なプランニング

変動の激しい市場でビジネス アジリティを発揮するには、今起きていることに対応する計画が立てられることが非常に重要です。年に 1 回のプランニングで次の年まで変更しないような計画では、四半期が過ぎるごとに有用性が下がることが多いうえ、市場や日常生活に突然壊滅的な被害をもたらす「ブラック スワン」事象に直面したときにはほとんど役に立ちません。

こうした突発的な事象に対応するためのプランニング アプローチが、継続的なプランニングです。従来の年 1 回のプランニングでは予算編成に平均 77 日かかっていましたが、継続的なプランニングでは、その原因となっていた手動による雑多なプロセスを自動化します。さらに、ERP や HCM などの社内システムをシームレスに連携させてデータが自動的に統合されるようにします。これにより、財務担当者もビジネス ユーザーもデータをシステムごとに入力し直す必要がなくなるため、貴重な時間を無駄にせず、重大なミスを回避できます。

また、プランニング サイクルが短縮されるため、ビジネスや市場の変化に応じた柔軟な予算編成が可能になります。継続的かつ変化に応じて内容を更新するプランニング環境では、予算は状況に応じて調整され、古くなることもありません。

実際、継続的なプランニングを実践している企業では、予測を 1 週間以内に修正できる割合が 1.5 倍、市場の変化に迅速に対応できる割合が 4 倍にのぼります。

ローリング フォーキャスト

ローリング フォーキャストのビジネス ケースをわかりやすく言うなら「物事は変化する」ということでしょう。 

調整が必要になったとき、次回の予算編成時期までのんびり待つ余裕はまずありません。ローリング フォーキャストは、迅速な軌道修正に有効な方法で、十分なインサイトに基づき自信を持って期限内に重要な意思決定を行うことを可能にします。ローリング フォーキャストには以下の特長があります。

  • 詳細ではなく要因 (ドライバー) に基づいてモデリングする。変化が起きたとき、具体的な詳細は変化しても、要因が大きく変わることはありません。その点で、これは予測のアプローチとしてより戦略的な方法と言えます。

  • 通常は今後 4 ~ 8 四半期について予測する。特定のタイム フレームを対象に、各月の実績を順次組み込みながら継続的に予測を立てます。これにより、意思決定者は現状をリアルタイムで把握できます。

  • 対象期間の長さが変わらない。年度の終わりに近付くにつれて対象期間が短くなる四半期単位の予測とは異なり、ローリング フォーキャストでは対象期間が常に一定です。

  • より的確な意思決定ができる。特に、財務以外のデータ (労務費、人材配置パイプライン、営業担当者の離職率など) を組み入れると精度が向上します。実際、FSN による調査では、財務以外のデータを活用するエグゼクティブは、12 か月間以上の長期にわたって予測できる確率が 2 倍以上高いことが明らかになっています。

あらゆる状況に備える

ほとんどの問題は、最大と思われる危機でさえ、他の問題とまったく別なものではありません。過去に似たような問題を見たこともあるかもしれません。先を見越すことができる企業であれば変化に直面した時点で、競争力を維持するための対策を立てることができるでしょう。

しかし、ビジネス アジリティの高い組織になるには、ときには可能性がごくわずかであるか、まったくないようなシナリオであっても、起こり得るシナリオを幅広くタイムリーかつ徹底的に検討しておく必要があります。不確実性が増す時期にあって、企業が継続的に計画を見直し、常に予測を立て、あらゆる状況についてシステム上でモデリングできるようにするソリューションの重要性はますます高まっていくでしょう。

なぜなら今日、企業にとってアジリティはかつてないほど大きな頼みの綱となっているからです。

併せて、4 月 22 日開催の Web セミナー「Reforecasting in Uncertain Times (不確実な時期に予測を見直す)」もぜひご覧ください。

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